整形で人生が変わったという女性に会ってきました

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、森さんの整形にまつわるエッセイをきっかけに、整形によって人生が変わったという女性に会った時のお話です。手術で伴った痛みの代償とは何だったのでしょうか?

先日、私のエッセイ『もしもあのとき整形していたら』を読んだ友人から連絡があった。

「私の知り合いで、整形後に人生が変わっちゃった子がいるのよ」

気のせいか、LINEの文字が高揚している。私はさっそく友人に頼み込んで、その知り合いに会わせてもらった。

ブレもズレもない美しさ

ゆったりできるという理由から、私はホテルのランチに招待した。39階からの眺めもよく、きっと口が滑らかになるに違いない。仲介してくれた友人は仕事で来られなかったため、私は友人の知り合いF美とふたりきりになった。

高級だけれどランチタイムはリーズナブルというレストランには、平日だからか、年配の奥様方でにぎわっていた。傍から見れば、F美と私も優雅な奥様ふたり組に違いない。

窓際のテーブルに案内され、お互い斜めになる位置に座った。私はメニューを吟味するふりをしながら、F美をこっそり観察した。私は整形前のF美を知らないので、事前に何も伝えられていなければ整形などとはわからなかっただろう。それほど、F美の美しさはブレもズレもなく、見事にマッチしていた。私の視線と真意を察したのか、

「私、目と鼻と顎とフェイスラインを整形してるんです。あと胸も」

メイン料理を選ぶ気安さで、F美は私に言った。

「そうなんですね。あ、私はイベリコ豚で」

慌てて目をそらし、ウエイトレスにオーダーする。なるほど、ほぼ顔は全とっかえなんだ。整形に対する私みたいな反応にはすでに慣れているのか、F美はワインをすいすい飲み、おもむろに話し出す。

「最初は目ですね。目を二重にして、涙袋をつくって」

「何年前ですか」

「3年前です」

「ということは、結婚されていて、お子様もいらしたんですよね」

「ええ。でも主人にはバレませんでした」

普段からメイクが濃かったのだろうか。アイプチで二重瞼を入念に作成していたとか。

「失礼ですが、ご主人の前ではすっぴんにならないんですか」

「なりますよ」

F美のご主人様はド近眼なのか? 私はF美のくっきり二重を凝視した。ふしめがちになると、二重の幅が異様に広くなる。F美はセンターパートで分けた長い黒髪を耳にかけ、あっけらかんと続けた。

「目をやったら、鼻が気になりだして。でも鼻は入院しなきゃいけないから、親が具合悪いって嘘ついて、実家に帰るふりして入院したんです」

整形については私も調べた経験がある。入院といっても鼻だったら1泊程度で、腫れがひかないうちに帰されるはずだ。ダウンタイムも1ヶ月~3ヶ月、人によってはもっと長期にわたるかもしれない。それを問い質してみると、

「看病疲れで具合が悪いって言って、ずっとマスクをしてごまかしました」

「ご主人にはまったくバレずに? 重ね重ね失礼ですが、費用もけっこうかかりますよね」

「ええ。目を手術してからキャバクラに、鼻を手術してから吉原でバイトしました」

私が恐れていた整形に対する加速
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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コメント

wakabow これくらい突き抜けてたら清々しいな(フィクションかもしれないけど 7ヶ月前 replyretweetfavorite