有名人に渡すというモチベーションは強い
高橋晋平(以下高橋) 野木さんの本の中で「夢を1000回唱える」という話がありますよね。僕は1000回も唱えてないかもしれないですが、似た話があります。
「ラーメンズが大好きだ」とずっと色んな人に言っていたら、知り合いが一緒に飲むからって呼んでくれたんです。
野木志郎(以下野木) まさにそれです。
高橋 何かが好きなことを色んな人に言いまくったり、夢を1000回唱えるのはすごく強さがありますよね。
野木 俺が言うてたのは、包帯パンツをつくったときから「ロバート・デ・ニーロとビリー・ジョエルに穿いてもらうのが夢。これを目標にする」ってこと。誰彼かまわず語っていたら本当に二人に穿いてもらうことができた。
高橋 そこです。そこが僕は一番勉強になりました。有名人に渡すというモチベーションってすごい純粋ですよね。
僕自身は有名人に会いたいとか、渡したいというのがこれまでなかったので、僕にとっては、もう、すごい発見で。有名人ではなくても、大好きな人がいるんだったら、その人に渡すのを目標にするといい商品をつくれるんじゃないかと思いました。
野木 それはそうかも。
高橋 「娘にモテたい」とか「嫌われたくない」みたいなのもありますよね。僕の娘は今5歳なんですけど、女子感が若干ですが出てきて、前みたいにいくらでもベタベタさせてくれる感じではなくなってきました。このままいくと、あと10年もすれば「キモい」みたいに言われる流れになるじゃないですか。
だからその前に、娘が大喜びするものをいっぱいつくろうと思っていて。それは工作だったり、絵だったり、歌だったりするんですが、それらを作るときの僕自身のモチベーションがすごく高いんです。娘が生まれる前は、そのモチベーションは奥さんに対してだったと思うんですが、そんなふうに、自分の人生のタイミングに合わせてモチベーションってきっと変わる。だからモチベーションになるものが、有名人に渡したいでも、モテたいでもいいと思うんです。
ただ、「ネットでモテたい」としてしまうと、いわゆるバズることが第一目的になってしまって、モノでいうとバズったけど売れないみたいなことが起きて失敗してしまう。僕自身がそういう経験をしたことが何度もあります。だから、おすすめなのは対人。対人だと、人でスベるわけにはいかないので感覚がもっと研ぎすまされるんです。
野木 「モテたい」が原動力になるのはあるよね。
高橋 人間、つくり手もモテたいし、買う人だってモテたいからモノを買っているんだという話を僕はよくするんです。持っている文具を、例えばかわいい上司が「それ、かっこいいね」とツッコんでくれたら、嬉しいじゃないですか。
野木 高橋さんもそうなんですか?
高橋 はい、そうです。でもそれは異性にモテたいという意味だけじゃないです。モテたいって他人を意識しているということ。自分だけが嬉しければいいということではないわけです。僕が本を読むのだって、それで知識を得てレベルアップをして、最終的にモテたいから読んでいる節があります。
野木 すごいピュアな人やな。いやでも本当にそうやと思う。音楽とかスポーツとかなんでも「キャーキャー」言われたいのよ。何歳になったってそれが究極やねん。
名刺を持つよりネタを持て
高橋 先ほどの有名人に包帯パンツを渡す話もそうですが、本を読んで「包帯パンツを通して出会いがすごく起きているな」と思ったんです。
そこが勉強になったというか、真似しようと思ったというか、僕もそうやって「人に出会ったら渡したくなる商品をつくりたい」と思いました。
僕の場合は、つくった商品を、わかってくれる人に喜んでほしいと思っているところもあります。ただ、それはそれでいいのかもしれないのですが、そう言っている時点で負けているような気もしていて。渡したいという思いが爆発するようなものを僕もつくりたいなと改めて思いました。
野木 今高橋さんが言ってくれたんは、本の中の「名刺を持つよりネタを持て」という内容で、「自分が何もしなくても独り歩きをはじめてしまうほどの強烈なコンテンツを持て」という話をしてるところやと思うけど、ここは(本を読んで)持って帰ってもらいたかったというか、一番感じてもらいたかった部分。若い子たちが今後戦っていく武器の一つになったらええなと。
高橋 今の時代って、自分に自信がない人が多いと思うんです。それはネットやSNSの影響だと思っていて・・・・・・。ネットやSNSってみんな虚勢を張り合うから、あれを見てきっと落ち込んじゃうんだと思うんです。
ツイッターに行けば、フォロワーが誰々より少ないからということで落ち込んだり、「私、駄目だ」と思っていたりする子は、自分の商品というか、自分が本当に好きでお客さんとしてでも欲しいものをつくって人に渡してみるのが良いと思います。
それがどう評価されようとも、自分が好きなら必ず同じものを好きな人がいるから、出会いにもなるし、自信がつくと思うんです。
野木 モノがあれば伝播しやすいけど、モノにこだわらなくてもいいとは思います。今日の出会いもそうやけど、俺は今日から(人に会ったら)「高橋さんっていうおもろいおもちゃ開発者がおって。この人、ラーメンズのDVD10年見続けてんねん。10年間見続けるか? 俺、ラーメンズ好きやけど絶対無理やわ」なんて、いろんなところで話すと思うんです。こういうのもネタで、きっと独り歩きしてくれると思う。
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