パンツもおもちゃも企画の原点は「欲しい」と思ったものにある!

年間10万枚も売り上げ、ロバート・デ・ニーロやビリー・ジョエルも愛する「包帯パンツ」の生みの親・野木志郎さんと、累計335万個以上売り上げたおもちゃ「∞(むげん)プチプチ」の生みの親・高橋晋平さんの特別対談。一見、真逆に見える二人の共通点と違いを紐解く中で、企画やアイデアを形にするうえで大切なことが見えてきました。cakesにて連載も公開中です!

迷ったらやる? 迷わないからやれる?

高橋晋平(以下高橋) 日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由』を読んで、ほぼほぼ共感しかなかったです。もうなんというか、「そうそう」と思わずうなずくことばかりで。

野木志郎(以下野木) 俺も『企画のメモ技』読んだときに「そうそう」って思った。ほんまに。


左)高橋晋平さん、右)野木志郎さん

高橋:僕は「90%言っていることは一緒で思っていることも一緒だけど、決定的に真逆な部分が10%ある人」との出会いがときどきあるんです。恐れ多くも野木さんにそんなイメージを抱きました。

— 90%一緒だけど決定的に違う部分が10%ある。面白いですね。まずはそのテーマで掘り下げてみても良いでしょうか。高橋さんが野木さんの本を読んでいて違うなと思ったり、気になった部分はどの部分だったんでしょうか?

高橋 しょっぱなの「ペンと箸の持ち方」*のところですね。自分はそういうマナーみたいなのがまったくできない、たぶん無礼なやつなんです。今日もすごく気に入っている服で来たのですが、そもそもこの服じゃダメだったかもしれないし、とか。
*ペンや箸の持ち方が違うなど小さな違和感で、人は相手に心を許さなかったり、距離を置いたり、もう1歩のところで懐に入ってきてくれなかったりするという話。

野木 俺がそもそも非常識野郎なんですよ。
サラリーマン時代は、諸先輩方から「お前は生意気や」とよう言われてました。たとえば、大きな会議で部長を吊し上げたりするんです。「部長、何考えてるんですか! こうやったほうがいいじゃないですか!」とかガーッと言うたりして。

そしたら部長が「俺がこう判断したのは、お前らのせいや。上司を育てるのは部下のお前らの役目や。社長が俺のことを育ててくれるか? そんなもんやれへんやろう。俺がおかしい判断をするのはお前らの教育が足らんからや!」と返してきて、「ううん……」といたく納得してしまって。
それからその部長と仲良くなって可愛がってもらったので良かったけど、それくらいほんまに非常識野郎やった。箸とペンの持ち方もぐちゃぐちゃで。見るに見かねた上司が、相手に嫌な気をさせない最低限のマナーとして教えてくれたんです。

高橋 野木さんが凄いのは、結果的に仲良くなっているところ。本の中にもそういったエピソードがいくつかありますが、僕はそこが真似できないと思いました。人間力の部分というか。僕が若手のときは今の100倍くらい人見知りだったので、大先輩に声をかけることなんてなかったですし。

そう思うと、決定的に違うのはエネルギーを使う方向かもしれないですね。

野木 どういうことですか?

高橋 野木さんは「迷ったらやる」と本に書かれていましたが、僕は迷ったらやらない。迷わないからこそできる、というか。

会社員時代の話になりますが、企画を上司に見せるときに、上司がめっちゃ怖くて、おまけに否定されるので、いつも逃げるように企画を取り下げていました。でも、迷いがない企画だけは否定されても逃げずに立ち向かえる。迷わないからこそ行けるんです。

野木 なるほど。俺は、たぶん人間の持っているエネルギー量は一緒やと思っていて、ただ、それを外に向けるのか、自分の中に向けるか、ということだけの違い。そういう意味で高橋さんと俺は真逆のタイプやと思う。だから、めっちゃ興味あるわ。

俺の場合は、継続できひんタイプやから「ああ、もう飽きた」って次から次へ、どんどん変えていく。でも、高橋さんは継続するタイプでしょ? メモも同じメモ帳でずーっと書いてるでしょう?

高橋 そうですね。

野木 でしょう? 俺、コロコロと手帳が変わるんです。ほんまに。持った瞬間に心が震える手帳に出会ったらどんどん買って、どんどん書き始めてしまうので、最後まで手帳を使い切っ試しがあらへんねん。

10年間1日も欠かさずラーメンズのDVDを見続ける

野木 ほかにも何か継続してることってあります?

高橋 小学生の頃の話になりますが、アラビックヤマトというオレンジ色の水糊、知ってますか?

野木 ああ、あのオレンジ色の。

高橋 あれって、使っていくと気泡ができるじゃないですか。上下をひっくり返すと気泡が上に登ってくるんですが、その気泡を上下させて、うまくひねって割るという遊びを小学生の時3年間一日も欠かさずやっていたことがありました。
あと、音楽もチャゲアス(チャゲ&飛鳥)ばかり聞いているとか、昔からそういうクセみたいなものがあります。

本でいうと、僕は小説家の奥田英朗さんが大好きで彼の作品ばかり読んでいます。社会人になりたての時はビジネス書をいろいろ読んでいたのですが、「同じものを何回も読んだほうが発見があるのではないか」と思って以来、奥田英朗の小説を隅から隅まで吸収し尽くしたいという思いで、ずっと読んでいる感じです。

最近だと、『にゃんこ大戦争』というスマホゲームを6年間一日も欠かさずやっていて、他のゲームは一切やらないとか、Amazonプライム・ビデオの『孤独のグルメ』を毎晩見ていたりしますね。

野木 『孤独のグルメ』って、あれシリーズですよね?

高橋 そうです。シリーズなので、毎回違うエピソードを見てリピートする感じです。あと、学生時代から社会人、独身までの10年間、家で晩ごはんを食べるときに必ずお笑いグループの「ラーメンズ」のDVDを見ていました。10年間、一日も欠かさずラーメンズです。ラーメンズのDVDを全巻持っていて、それをリピートで10年間見続けるという、ちょっと異常な性格なんですよ(笑)。

野木 いやもう、高橋さん大好きです(笑)。続けると何でも大体10年くらいはやっちゃう?

高橋 そうですね。でも、それでいうと10年で飽きる人間なのかもしれないとも思っています。最初の会社も勤続10年でしたし、10年以上続いていることって何かあるかなと。

野木 10年経ったら途端に嫌になる感じですか?

高橋 アイデア出しは15年以上やっているので、それだけは続いているのかもしれないですね。

野木 今までいろいろやってきた中で、すぐ止めたやつって何かあります?

高橋 ありますよ。例えばゲームでいえば、職業柄パズドラ(パズル&ドラゴンズ)とかモンスト(モンスターストライク)とかも遊びます。そのときはハマるんです。でも1カ月ももたずに止めてしまう・・・・・・。そういうのは多々あります。にゃんこ大戦争みたいにやり続けてしまうものはなかなかないですね。

野木 そんなに面白いの?

高橋 面白いですよ。ただ、人に言っても共感は・・・・・・(笑)。だから、この話をすると理解されないことが多いんです。

本に関しても、僕の知り合いは最初にあとがきを読んで、その後目次を読んで、バーッとページをめくって、数分間で読み終えます。本人は「効率よく勉強するにはスキャンするように読むのが一番」と言っているんですが、僕は奥田英朗を何度も読んだり、にゃんこ大戦争を6年やったほうが、何冊もバーっと本を読んだり、100個ゲームをやるより勉強になると思っています。

企画の原点は「欲しい」

野木 俺も高橋さんに質問したいことがあって。高橋さんは、思いついたアイデアとか、自分の思い描いたものをどうやって形に残すのが一番残しやすいと思っていますか?

俺はそのときどきで違って、絵に残す場合とiPhoneに文字でメモを残す場合とあんねんけど、大体酔っ払ってるときにそういうのが浮かぶから、次にパっと見たときに完全な形で復元できひんのよ。


高橋 そこでいうと、僕は絵が描けないおもちゃ開発者なんです。先輩方が設計とかデザインをさらさらっと鉛筆で描き上げるのをかっこいいなと思いながら見ていたのですが、僕にはそれができなくて。ほんと、(おもちゃ開発者としては)もぐりみたいなやつですよ。

だから結論をいうと、僕の場合はアイデアを言葉で残しています。

野木 それでたどり着いたのが1行メモ*
*1行メモ(詳しくは『企画のメモ技』参照)
・Evernoteにネタ帳をつくる。
・欲しいと思うものごとを1ネタ1行でメモするアイデアを生みだすメモ術(新しいとか、変わっているではなく、「買いたい」「使いたい」「やりたい」など行動したいと思うこと)。
・「考えたいお題」×「ネタ帳」でアイデアを量産する。

高橋 そうです。1行メモは「これは欲しい」「これはいらない」を見分けていくだけのメモ術です。でも、この「これは欲しい」「これはいらない」はわりと正確だと思っています。これを積み重ねていくと自分の芯がわかってくるので、なんとなくパッケージだけがオシャレな商品みたいなものをつくることはなくなってきます。

野木 企画の原点って「欲しいものじゃないとあかん」と思うので俺も一緒です。『企画のメモ技』は、企画に対するハードルを「欲しいものをつくっていったらいいんや」ってすごく低く設定してくれているからわかりやすい。色んな企画術とかアイデア術の本が出てるけど、読んだ人は一番わかりやすい企画術やと思うよ。

高橋 恐縮です。今話をしていて改めて思ったんですが、この本は「弱いやつのメモ術」なんです。1行メモは、別に毎日やる必要もなければ、ただただ「欲しい、欲しくない」という自分の気づきを分量少なくメモしていけばいい最弱のメモ術。だから、企画を考えたい、世に出したいという人は、最初に試してみて欲しいなと思います。

遅い歩みの成長に感じるかもしれませんが、ただただ見分けつづけることさえできれば、作り手として間違いなく進歩していますから。元気な人のメモ術は世の中にたくさんあるので、僕のは、バイタリティのない人でもできるメモ術として、そのくらいでいいと思っています。

後編へつづく

文・砂流恵介



GWにおすすめな二冊!!!

●モノやコトの出会いが多いGWは
高橋晋平の一行メモでネタ集め!




●GW後半は野木志郎が学んだ
ビジネスをひろげる30のしかけ
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アイデアがポンポン出てくる驚きのメモ術

この連載について

ビジネスもアイデアもネタでひろがる—野木志郎×高橋晋平

野木志郎 /高橋晋平

ロバート・デ・ニーロやビリー・ジョエルも愛する「包帯パンツ」。年間10万枚も売り上げる人気商品の生みの親・野木志郎と、累計335万個以上売り上げたおもちゃ「∞(むげん)プチプチ」の生みの親であり、おもちゃクリエイターとして活躍している...もっと読む

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