あなたの苦しさはあなたにしかわからない

今回の相談者は子宮体がんの患者。夫のことや子供のことで治療法を悩む相談者に、幡野広志さんはどう答えるのでしょうか。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

私の悩みは、人生最大の決断をしなければならないときに、家族との信頼関係も壊れかけて、身動きがとれなくなっているということです。

人生最大の決断とは、治療法の選択です。私は、先月ガン患者になりました。若年性の子宮体がんです。体がんというのは、2種類の子宮がんのうちマイナーな方のガンで、子宮を全摘出する以外に標準治療がありません。

しかし、子宮を失うと、現在の日本では基本的にこどもを産むことはできないので、オプションとして、子宮温存のためのホルモン療法というものがあります。要は、摘出までの時間稼ぎをしてこどもを産むというものです。一定期間ホルモンを投与し、ガン細胞が消失すれば妊活にトライし、こどもを産んだら(勿論産めるとは限りませんが)すぐに子宮を摘出します。希望のようであり、その分再発等リスクも高い治療法です。

どちらの治療法をとるか、もうあと1,2週間のうちに決めなければなりません。悩みに悩んでいます。しかし、このようなところにきて、夫とのかねてからのいさかいが増え、信頼関係が壊れかけてしまいました。

夫は、目の前で私がフラついて水を求めていても、自分のことでいっぱいいっぱいな気もちの時は、水を渡さず悩みにひきこもってしまいます。また、言葉もへたくそなので、言葉通りの意図がないのにひどいことを言ってしまい、言ってしまった自分にへこんであせって、目の前で泣いている相手が見えなくなります。そういうことが何度か繰り返されました。

私の夫への愛は消えていないのですが、「ここだけは間違えんでくれ」というときに限って間違え、その後まともに話し合いができず自分の殻に引きこもる夫に対し、信頼はかなり消えています。対する夫は、反省しているようなのですが、反省の方法もひとりよがりで、ピントが私とはずれたまま。問題さえ共有できれば、どんなにうまくいかなくても一緒に頑張りたいのですが...まだ別れたいとまでは思えないものの、この繰り返しを引き受けるぞという覚悟まではできずにいます。

治療法の選択だけでも、とても決められない「神の問」で、必死であるところ、夫との問題が加わり、そんなに一気に問題解決できないよ~とパンク気味です。元気でいるだけでも精一杯という感じです。急務である治療法の選択をしてから夫婦関係の問題を考えたいところですが、治療法の片方は妊娠を目的とすることから、父親が必要であり、夫婦関係を抜きにして考えるのは難しいのです。父親がだれであっても子供がほしいか、と無理やりわけて考えてみたりしますが、つい先日まで夫婦関係を前提にこどもを考えていたので、そんな風に考えるのも難しいです。

勿論、治療法選択について彼の意見とのすりあわせも必要なのですが、まずは本人である私が、決断をしなければと思っています。

こんなとき、どこを糸口にしたらよいと思いますか。やはり、とにかく私が信頼できなくても別れられないなら一緒にいる、と一旦腹をくくるしかないのでしょうか。

(くり 29歳 女性)


ガンになって子宮を摘出しなければならない。摘出前に妊娠と出産の可能性に期待したい、そのぶん再発や進行のリスクがある。そして、ここにきて夫のダメなところが見えてきて信頼関係が薄れている。どうしよう?

無理やり3行でまとめてみましたが、自分の身に置き換えて考えてみると大変な状況ですよね。妊娠適齢期の女性がガンになったとき、子どものことを考えない人っていないとおもいます。

「生きていればいいじゃないか党」の党員が世の中にはたくさんいます。この党員からすると、あなたの悩みってどうでもよくて、はやく子宮を摘出したほうがいいんじゃない?なんて言っちゃうわけです。はっきりいうけどこの党員、医師に多いよね。

どんなしあわせが待っているかわからない、だから生きるんだ。という党員規則もわかるのですが、世の中と人の心はもうちょっと複雑で、死んだほうがマシなことだって、命よりも大切なことだって存在します。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

はじめてで最高の「写真集」

写真集

幡野広志
ほぼ日
2019-03-01

この連載について

初回を読む
幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

gran90a なんだか心に響く 3ヶ月前 replyretweetfavorite

Shel4869 幡野さんが毎週出してるコラムがめちゃくちゃ面白いので一回読んでみることをおすすめします。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

sent0212 病気に限らず、そういうことだと思います。 https://t.co/xFPIZz5smG 3ヶ月前 replyretweetfavorite

megamurara 「第二の患者」「デリカシーフリー」 3ヶ月前 replyretweetfavorite