こちら、幸福安心委員会です。

第8回 シンジツ・ブロードキャスティング 【緑川初音】そして、今

テロリスト・デモステネスの捜査のため、シンジツ・ブロードキャスティング・センターという放送局へ向かう漣と初音。そこで目撃するものは…?
人気ボカロ楽曲「こちら、幸福安心委員会です。」のノベライズ第2弾の発売を記念して、第1弾ノベル『こちら、幸福安心委員会です。』の一部を公開します。


「…………芽衣子お姉さん、私も一緒に行っていい!?」
「えっ、初音が? 漣と? なんで」
「ああ、もう姉さんは鈍いなあ。ま、大学行って、いまだカレシのひとりも出来ない姉さんじゃあ当然か。女の子の微妙なき—おうふっ」
 言葉の途中で、解お兄さんは蹴り飛ばされる。床をごろごろ転がったところを、追いかけられて、容赦なく踏まれる。
 がつんがつん。痛そう。
 漣くんが、私のほうを見ていた。私はちろり、と横目で様子をうかがう。
 顔が火照ってしまいそう。どうしよう。漣くんに聞かずに、勝手に芽衣子お姉さんに頼んでしまった。じっと見てくる顔が、恐くて見返せない。こんなの絶対、不機嫌に思ってしまって当然だ。

「……いいよ。行こうか」
「えっ」
「2度は言わせるな。出かけるからな。来るなら早く」
「う、うんっ。行く」
 私は慌てて、漣くんのあとを追う。背中を向けて歩き出してはいたが、なんとか追いつける程度の速さだった。
 どうしてだろう。漣くんは、もの言いはキツイのだけれど、微妙に私に合わせてくれている気もする。そういうことは、ずっと昔にもあった気がして、もちろん記憶喪失の私がハッキリ覚えているはずもなく、自意識過剰だったらすごく恥ずかしい。

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こちら、幸福安心委員会です。

wogura /うたたP /鳥居羊

巨大ウォーターフロントにある「みずべの公園市国」。そこは完全で完璧な女王サイレンと呼ばれるAI(人工知能)が統べる国家だ。サイレンは自らの分身である“オンディーヌ”と、市国民のなかから選ばれたエリート集団“幸福安心委員会”を使って市国...もっと読む

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