ピュア

最終回】そして母になる

SFマガジン6月号に掲載された小野美由紀さんの「ピュア」を特別公開します。タイトルの通り、ある純粋な性と生を描く遠い未来の物語です。
「私」ことユミは学園星ユングに暮らす「普通の」女の子。女性はこの時代、国を守るために子供を産むことを使命づけられている。ただしそのためには、地球に暮らしている男たちを狩り、文字通り「食べる」ことが求められていた。
何もかも失った私に、最後に残されたものとは?

 私はいてもたってもいられず、マミちゃんを思いっきり突き飛ばしてエイジくんの元に駆け出していた。

「エイジくん!」

 ちょっとぉ、と叫びながらマミちゃんが私の肩を鷲掴む。めり、と肉が裂け、鱗が剥がれ落ちる。

「人のもの、横取りしないでよ」

 私たちは揉みくちゃになりながら地面に転がった。感じたことのない痛みと、怒りと、自分でも抑えきれない衝動が体の中に渦巻いて、私は自分でもどうなっているのか分からないまま、四肢をめちゃくちゃに振り回す。

「あんただって」

 私を羽交い締めしながら彼女が叫んだ。

「あんただって、ほんとは食べたいくせに!」

「食べたいよ!」私は叫んだ。

「けどそれ以上に、手に入れたいものがあるんだよ!」

 マミちゃんの鋭い爪が視界いっぱいで光った。私は咄嗟に目を閉じ、ありったけの力で目の前のものを薙ぎ払う。ぐと、と重たい感触が手首に残った。目を開けると、首のないマミちゃんの体が地面に転がっていた。

 エイジくんは慌てて駆け寄った私の顔を目を開けてはっきりと見つめた。

「あー、俺、αとβ、守ってやれそうにないわ」

 どうしたらいいか分からなかった。エイジくん、と私は名前を呼んで彼の頬に手を当てる。鱗に覆われていない手のひらが、エイジくんの熱を吸収して発火しそうなほど熱くなる。同時に彼の体からはこの上なく官能的な匂いがして、私は思わずぎゅうっと身を固くした。

 粘っこい血の塊を吐き出し、彼は続けた。

「お前さ、俺を食ってよ」

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SFマガジン6月号に掲載された小野美由紀氏の「ピュア」を特別公開します。タイトルの通り、ある純粋な性と生を描く遠い未来の物語です。

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Miyki_Ono 終わりです。 そして母になる|小野美由紀 @Miyki_Ono /SFマガジン @Hayakawashobo | 4ヶ月前 replyretweetfavorite