私はいてもたってもいられず、マミちゃんを思いっきり突き飛ばしてエイジくんの元に駆け出していた。
「エイジくん!」
ちょっとぉ、と叫びながらマミちゃんが私の肩を鷲掴む。めり、と肉が裂け、鱗が剥がれ落ちる。
「人のもの、横取りしないでよ」
私たちは揉みくちゃになりながら地面に転がった。感じたことのない痛みと、怒りと、自分でも抑えきれない衝動が体の中に渦巻いて、私は自分でもどうなっているのか分からないまま、四肢をめちゃくちゃに振り回す。
「あんただって」
私を羽交い締めしながら彼女が叫んだ。
「あんただって、ほんとは食べたいくせに!」
「食べたいよ!」私は叫んだ。
「けどそれ以上に、手に入れたいものがあるんだよ!」
マミちゃんの鋭い爪が視界いっぱいで光った。私は咄嗟に目を閉じ、ありったけの力で目の前のものを薙ぎ払う。ぐと、と重たい感触が手首に残った。目を開けると、首のないマミちゃんの体が地面に転がっていた。
エイジくんは慌てて駆け寄った私の顔を目を開けてはっきりと見つめた。
「あー、俺、αとβ、守ってやれそうにないわ」
どうしたらいいか分からなかった。エイジくん、と私は名前を呼んで彼の頬に手を当てる。鱗に覆われていない手のひらが、エイジくんの熱を吸収して発火しそうなほど熱くなる。同時に彼の体からはこの上なく官能的な匂いがして、私は思わずぎゅうっと身を固くした。
粘っこい血の塊を吐き出し、彼は続けた。
「お前さ、俺を食ってよ」