13 領土 のはなし── 国と国との「ささくれ」
ある中国人が教えてくれたこと
領土の話。正直にいうと、このトピックを扱うかどうしようか悩みました。領土問題はすごくデリケートで、人の心に突き刺さるからです。そんなとき、スペイン留学時代のある出来事を思い出しました。 スペインの外交官学校に留学していたときのこと。世界各国の外交官がいましたが、その中に中国人の女性外交官がいました。同年代の女性だったこともあり、わたしたちは意気投合。一緒に日本食や中華料理を食べに行ったり、お互いの家を行き来し合ったり、悩み事も相談し合える仲でした。
そんなある日、わたしは学校で、日本についてのプレゼンテーションをして欲しいと頼まれました。テーマは自由。 「うーん、何を話そうか」、わたしは悩みました。アニメとかポップカルチャーなどソフトな話題でもよかったのですが、プレゼンの聴衆は外交官。悩んだ結果、せっかくの機会なので、ちょっとデリケートな話題にも切り込んでいこうと決め、日本の領土についても取り上げることにしました。でも、そのとき思い浮かんだのは、中国人の彼女の顔。彼女に真っ向から反論されるかもしれないし、ケンカになるかもしれない、友情にひびが入るかもしれないとも思い、一瞬おじけづきました。
でも、だからって逃げちゃいけない、みんなの前で反論されても、仮にケンカになったとしても、日本の意見をきちんと外国に伝えなければいけない。日本の立場を世界に向けて説明して、理解してもらう、これこそが外交官の仕事。日本の外交官として、そして一人の日本人として、きちんと主張することはしなくちゃいけない、と思い直しました。
プレゼンテーション当日。わたしは尖閣諸島が日本固有の領土であることや、尖閣諸島近辺に中国船が頻繁に出没していることなどにもふれました。彼女は黙ってじーっと私のほうを見ていましたが、その視線はいつもニコニコしている彼女からは想像できないくらい鋭く、その時の表情はいまでも忘れられません。
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