2031年 Vtuberが全国の学校で性教育の授業を行う

「セクサロイドは誕生するのか」「VRでのセックス体験はどこまでリアルか」人口減少とテクノロジーをキーワードに日本人の性の未来予想図を描き出す! 性教育のありかたが変わる!? 3月6日発売の『未来のセックス年表』を特別公開!

Vtuberは「性教育の限界」を突破できるか?

 2017年以降、YouTuberとして動画配信・投稿を行うバーチャルアイドル「Vtuber(ブイチューバー)」の存在がネットを賑わすようになった。キズナアイ、電脳少女シロ、輝夜月(かぐや・るな)など、次々と個性的なVtuberが誕生する中、「女の子と男の子の性欲やエロを全力肯定する」と称するVtuberが彗星のように現れた。

彼女の名前は、バーチャル花魁・由宇霧(ゆうぎり)。バーチャル遊郭で新人花魁として働きながら、「建前と本音を超えた、男女の相互理解」を目標に掲げ、性に関する知識や情報を楽しく・分かりやすく解説した動画を投稿している。ライブ配信ではリスナー=おゆかり様たちから寄せられる性や恋愛に関するお悩みに対して、NGなしで真摯に答えている。

これまでの性教育は、主に学校の教員や産婦人科医、民間のNPOによって担われてきた。彼らの発信は医学的にも政治的にも完全に正しい内容だが、それゆえに面白みや拡散力が乏しく、情報を必要としている子どもたちにまで届かないというジレンマを抱えていた。

性の世界において、情報の正確さと拡散力は反比例する。デマや誤情報だけが拡散されてしまう現状に対して、既存の性教育は有効な打開策を取ることができなかった。

そんな中、全国の小中学生たちが最も閲覧している(それゆえに性的な内容の動画は規制・凍結されがちな)YouTubeという舞台で、男性器を「御子息」、女性器を「花園」、自慰行為を「ご自愛」といったウィットに溢れた造語に言い換えながら、風俗やキャバクラでの勤務経験を活かし、ラジオパーソナリティ顔負けのトークスキルを駆使して性愛についての情報発信・お悩み相談を行う彼女の登場は、衝撃以外の何物でもなかった。

彼女のようなVtuberであれば、これまでの性教育が越えられなかった壁を越えられるかもしれない。一方通行の授業や啓発に終始するだけでなく、「みんなで悩んで・考えて・調べて出した答えを、みんなで共有・発信していく」というインタラクティブな学びの場=「広場」を創り出すこと。

そうしたアップデートを実現できれば、性教育はこれまでの限界を突破できるのではないだろうか。この問いの答えを探るために、由宇霧さんご本人にお話を伺った。

「バーチャル花魁 由宇霧」誕生のきっかけ

由宇霧さんは、どのようなきっかけでVtuberの活動を始めようと思ったのだろうか。

「わっちは、物心ついたときからエロは好きでした。でも、性について正しい知識は無かった。そして、正しい知識を持っていないという自覚も無かった。

ある時、助産師の友人から『オーラルセックスでも性病には感染するんだよ』と聞いて驚きました。『挿入する時はコンドームを着けましょう』ということは学校でも習っていたので、そこだけは人生をかけて気をつけていたんです。でも、実際はガバガバだった(笑)。

思い当たる節があり過ぎて、怖くなって性病検査に行きました。結果は陰性だったのですが、知らないって怖いな・・・と痛感しました。そうした経験から、もっとみんなに性について知ってもらう活動がしたいと思うようになりました。

そんな時に、男性からのセクハラや性被害を告発する#MeToo運動が起こった。私の周りでも顔出しで告発をした女性がいたのですが、勇気を出して告発したのに、『ふ~ん、そういうことされたんだ』という好奇の目に晒されただけで終わってしまった。

『自分には襲われるだけの魅力があるって思われたいんでしょ?』みたいなセカンドレイプにも遭ってしまって。悔しかった。なんでこうなってしまうんだろう、って思いました。

日本では、エロのことを自然に話す習慣がない。他人の性的な面を受け入れるのが苦手なんじゃないかなと思います。リアルで顔出しをしている人の場合は特に。

『性暴力被害に遭ったんです!』と言われた場合、どうしてもその人が被害を受けている絵を想像してしまうじゃないですか。そこをうまく消化できない、受け入れられないために、攻撃的な言葉が生まれてしまうんじゃないのかなと。

そういうこともあって、リアルな世界で発信するのは、わっちには向かないなと思っていたんです。そんな時にVtuberというものがあることを知った。

バーチャルであれば見た目も発信も自由にできるし、生っぽさがなくなる。わっちの中で抱えていた『リアルの人が性を語ることは、多くの人にとって受け入れづらい』という壁を壊せるんじゃないか。そう思って、Vtuberの活動を始めました」

生身の人間が顔出しで性についてしゃべればしゃべるほど、性被害やセクハラについて告発すればするほど、受け手からは敬遠されてしまう。これは非常に悩ましい問題だ。

「ただ認めてほしいと連呼するだけじゃなくて、どういう表現にしたら認めてもらえるのかを考えないといけない。相手に伝わるように伝えないと、誰も動かない。そう思って、Vtuberという表現方法を使っています」

正しさの存在しない世界で

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
未来のセックス年表

坂爪真吾

新しい「性の公共」をつくるNPOという立場から、障害者・高齢者の性・不倫・性教育・性風俗・売買春・JKビジネス・パパ活など性にまつわるあらゆる社会課題の現場に足を踏み入れ、問題解決に取り組んできた著者のこれまでの知見をいかした集大成。...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

whitehands_jp 由宇霧さん@oiran_yugiriのインタビュー、前編です! 後編は来週アップ予定です。 8ヶ月前 replyretweetfavorite