引きこもりはけっして悪い選択ではない
私には、引きこもりの知り合いもたくさんいます。
「引きこもることはいけない」とみんな言いますよね。
でも私は、引きこもってもいいと思うのです。自分のエネルギーが枯れてしまったと感じたときにそれで生きていけるなら、意味のある選択です。
ただ、正しい引きこもり方を覚える必要はあると思います。
先日も、私のところに来た人が「引きこもり歴〇〇年」と言うので、「引きこもるならプロフェッショナルな引きこもりにならないとダメだよ」という話をしました。
プロの引きこもりなら、光熱費も使うしネットで買い物もして、経済を回していける。自分しだいで在宅の仕事もできたりする。孤独死するような引きこもりになってはいけないと言ったのです。
それと、寝る時間や歯磨きなどの生活習慣も大切です。
引きこもりからなんとか脱出したいというので、「生きていられるなら脱出はしなくてもいいと思う」と私の考えを話した上で、質問してみました。
「ただ、24時間以上寝床にいると気分が悪くならない?」
「なるなる。気が重くなって起きたときに頭が痛い」
「そうなのよ」
ということで、毎日、少なくともお昼前には布団を上げて、1回体を動かすこと。次に布団に入るまでは布団を敷かないようにすすめました。
まずは正しい引きこもりをして、最終的に体の調子が悪いということになれば福祉の援助を頼ることになりますが、それでも生きていられるということは人生が進んでいるということなので、それを目指してもいいのではないかと思います。
そこから自立の方向へ歩きたくなったら、そのときに一緒に考えればいいと思います。
引きこもっても、健康を守るために必要なことはちゃんとやる
ちなみに、ここで言う「正しい」は、自分にとってマイナスにならないという意味です。「他人にイヤな思いをさせないために歯を磨いて清潔にしよう」ではなく、「自分の健康のためにやるべきことをやろう。歯が痛くなったり、頭痛がしたりするのはイヤだよね」ということなのです。
日中は少し起きて歩く、そして寝る。これだけで頭の痛みは全然違います。
それが言えるのは、私自身がうつでずっと寝込んでいるときがあったからです。
心の中では「これではダメだ」と思いながらも、ゴロゴロして、服もどうでもいいしお風呂も面倒だから入らない、虫歯になっても歯医者に行くのも億劫。寝すぎると頭が痛くなって、今度こそ早く寝て早く起きようと思うのですが、ずっと寝ているから普通の時間に眠れない。そんなことを繰り返していた時期がありました。
自分だけかと思ったら、ほかの引きこもりの人や、うつ真っ只中の人と話をすると、やはり同じような感じでした。
そこから、こんなアドバイスをするようになりました。
・無理に早く寝ようとしなくていいが、時間がずれていることは認識する
・寝すぎて調子が悪いなら、まず布団を上げることから始める
・24時間以内に1回は歯磨きをする
経験者だけに、非常に具体的なアドバイスができるわけです。
私にとって引きこもりの人は自分の仲間という感覚です。空気が読めない人の気持ちも、自分がそうなのでよくわかります。
余談ですが、最近こんな失敗がありました。
空気が読めない人との関係で悩んでいる、人の気持ちに敏感なタイプの人の相談を受けたのですが、カウンセリングの最中に、「先生は自分の気持ちをわかってくれないので、これ以上話せません」とクレームを受けたのです。
そこではっと気づきました。私は、「相手は空気が読めない人なのだから、もっとこうしてあげればいいのに」と思いながら話を聞いていて、相談してきた人自身のつらさを思いやることを忘れていたのです。
「ごめんなさい!あなたの立場に立っていなかった」と平謝りして、あらためてじっくりと話を聞き直しました。相談が始まってから解決策が見えてくるまで3時間、へとへとになりましたが、大切なことに気づかされた経験でした。
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