エシキとオトシキの兄弟
【主な登場人物】
十一月七日、皇軍は大挙してシキツヒコ(磯城彦)※1を攻めようとしました。まず、使者を遣わしてエシキ(兄磯城)を召しました。ところがエシキは、その命に従いませんでした。それで重ねてヤタカラス(頭八咫烏)を遣わして召しました。ヤタカラスは、エシキの陣営に着くと、
「天つ神の御子がお前を呼んでおられる。さあ、さあ」
と鳴きました。するとエシキは怒って、
「天の威圧的な神がやって来たと憤慨しているときに、どうして烏がこんなに悪い声で鳴くのか」
と言うと、弓を引き絞って矢を射ました。ヤタカラスはさっと逃げ去りました。
ヤタカラスは次にオトシキ(弟磯城)の家に行って、
「天つ神の御子がお前を呼んでおられる。さあ、さあ」
と鳴きました。すると弟は恐れ敬って、
「天の偉大な神が来られると伺い、朝夕に恐れ畏(かしこ)まっておりました。ヤタカラスよ、鳴いて知らせてくれて良かった」
と言うと、柏の葉で作った八枚の平皿に料理を盛ってもてなしました。
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