猛毒なのに美味しい!? 脳みそみたいなキノコを採って食べてみた

海外では重宝されるのに、日本ではあまり見向きもされない食材があります。今日、ご紹介するシャグマアミガサタケというキノコもそのひとつ。といってもこのキノコ、強い毒成分を含んでおり、調理中のガスを吸っただけでも死に至ることもあるのだとか。。


食べられないのに、食べられる……?

昨年、流通が禁止されているフグの肝臓を販売したかどで、愛知県のスーパーマーケットが行政処分を受けるという事件がありました。
この事件はヨーロッパにおいてもちょっとした注目を浴びていたようで、各国のメディアが興味深そうにフグという食材について言及していたのを記憶しています。

実はフグはEU圏内では食用としての流通が一切禁じられており、イギリスの新聞など「なぜフグなどという危険な食べ物を食べるのか?」というような視点で取り上げる記事も目立ちました。
英国紳士の皆様にあたっては、人の国の料理にケチをつける暇があったら黙ってウナギのゼリー寄せ *1でも食べてろと申し上げたい気持ちですが、フグ毒の強さを考えれば気持ちはわからなくもない。

しかしそのEU圏内には、フグ同様、生の状態では人が死ぬレベルの猛毒を持っているにもかかわらず、食用にされる食材が存在します。
しかも恐ろしいことに、その食材はフグとは異なり、調理にあたって許可を必要としません。つまりその気になれば子供でも調理して食べることが可能ということです。

そして実はその食材、日本でも比較的容易に見つかるものだったりします。
一体全体そいつはどんな味がするのか、そしてそれを食べても本当に大丈夫なのか、自分の体で実験をしてみることにしました。

*1:泥抜きしていないウナギをぶつ切りにして茹で、冷やして固めて酢と塩をかけて食べるという、英国料理のエッセンスが詰まった料理。食べるといろんな意味で涙が出る。


脳みそみたいなキノコ「シャグマアミガサタケ」

その食材は、ちょうど今ぐらいの時期に、針葉樹林の林床に発生します。
わが国においても、高山地帯を中心に、発生に適した針葉樹林帯が広がっており、その中のひとつに向かってみました。

林道をえっちらおっちら登っていき、標高1200~1300mほどの、コメツガやウラジロモミが広がる林で、ミズゴケの広がる地面を丁寧にみていくと……


ものすごく目立つ

あった!
ミズゴケのマットの上に転がる何とも奇妙な物体。
赤黒くいかにも毒々しい見た目(実際に毒があるのですが)。そして脳みそのように波打つシルエット。
これこそが今回のテーマである食材「シャグマアミガサタケ」です。

見た目は完全に何かの脳みそで、思わずマモー*2 的なものを想像しますが、これは実はキノコの一種。前回の記事でご紹介したアミガサタケと同様「子のう菌類」に含まれます。


アミガサタケの一種・トガリアミガサタケ

とはいえアミガサタケとは近縁ではなく、見た目も全く異なります。
アミガサタケ同様に春に発生することや、この気持ち悪い見た目も手伝い、わが国では食材としてはおろか、キノコとしても顧みられることはありませんでした。

さらには前記の通りこのシャグマアミガサタケ、とんでもない猛毒を含みます。
生のキノコにはギロミトリンという成分が含まれているのですが、これを摂取してしまうと嘔吐や下痢等の症状を引き起こします。

さらにこれが加水分解されると「モノメチルヒドラジン」という物質になるのですが、これを摂取すると内臓の障害などの重篤な症状が引き起こされ、死に至ることもあります。
このモノメチルヒドラジン、ロケット燃料の原料にも使われており、不時着したロケットから漏出したものによって死者が出ることもあるというほどの危険物質。揮発性も高く、危険度という意味ではフグ毒のテトロドトキシンより上と言ってよいかもしれません。

一体どうやったらこれが食べられるようになるのか不思議に思えますが、このキノコ、フィンランドを中心に北欧の国では伝統的に食されており、市場でも流通しています。
そもそも学名にも「食用になる」という意味の単語が用いられており、当該地域ではポピュラーな食用キノコと言えるのです。


いや、でもさ……

とりあえず採取して持ち帰ってみることにします。
発生適地であれば一か所でたくさん採ることも可能で、この時も連れと2人で採取し、あっという間に袋一杯分が採れました。楽しいは楽しいけど、採取しているのが猛毒キノコということを考えると実にニュートラルな気分になります。

ふつうキノコを採ったときは、キノコから出る水分によって蒸れてしまうことを防ぐために袋の口は開いた状態にしておくのですが、シャグマアミガサタケについては口を開けておくと毒成分が揮発して車内に充満する気がして怖かったので、口を縛っておきました。
こんな気分になるキノコ狩り、初めて……!

*2:ルパン三世映画第一弾「ルパンVS複製人間」に出てくるラスボス。本体は脳みそだけ。


シャグマアミガサタケを毒抜きして食べてみた


およそ食べ物的な見た目ではない

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野食ハンターの七転八倒日記

茸本朗

「野食」とは、野外で採取してきた食材を普段の食卓に活用する活動のこと。 野食ハンターの茸本朗さんは、おいしい食材を求めて日々東奔西走。時にはウツボに噛まれ、時には毒きのこに中毒し、、、 それでも「おいしいものが食べたい!」という強い思...もっと読む

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コメント

megamurara 「インパクトがある」とはこのような物を言うのです。と言われたような気が致しました。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

mori_kananan |茸本朗 @tetsuto_w |野食ハンターの七転八倒日記 これ…食べる…の…? って言いたくなっちゃう見た目。先人はいつもすごい…。 https://t.co/EwGQBEF7tD 約1ヶ月前 replyretweetfavorite