ずっとほどほどに酔っていたい 【スズキナオ】

人はなぜお酒を飲むのだろう。そしてお酒を飲んだときの気持ちよさは、なぜ長くは続かないのだろう。飲みすぎた次の日にやってくる後悔。それでも人はお酒を飲み続けるのだろう。「のんのん」記念すべき第10回はスズキナオさんによる「酔い」まつわるお話。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

ただ、飲みたいから飲む

尊敬するマンガ家のラズウェル細木先生が「お酒を手段にするのはよくないと思うんです」と言っていた。「めちゃくちゃ飲んでストレス発散したい!」とか、「今まで言えなかったことを酒の勢いで言ってやれ!」とか、最初に目的があって、そこに近づくために酒を利用するとロクなことにならない。酒が旨いから、あるいは酒と一緒に味わう料理が美味しいから酒を飲む。ただ、飲みたいから飲む。「そうでなきゃね」、とラズウェル細木先生は言うのだ。

それでいうと私は全然ダメで、とにかくほろ酔い気分を少しでも長く続けて生きていたいという目的が先に立っていて、それゆえに酒を飲む。だから例えば、多少無味乾燥な酒であっても、なんとなくほろ酔いになれるならそれで目的達成なのである。ふわーっと酔いのベールに包まれている状態が理想。それ越しにちゃんと周りの状況も把握できるぐらいの、うっすら透けているぐらいのベールでいい。

荒い波の上でサーフィン

外で飲んでいても自分を失うような状態にはならず、「そろそろ家に帰った方がいい頃合いだな」と思えばしっかりした足取りで帰ることができる。電車で寝過ごすこともない。家に帰ったらすぐパジャマに着替えてあったかくして布団に入る。翌朝の寝ざめはもちろん快適。今日も元気に行ってきまーす!と、それが私の理想のほろ酔い度合いである。しかし、もちろんそれを維持するのは難しく、ほとんど失敗する。

「今日は軽めにしてすぐ帰ろう」と思っていたのに飲み続けて終電を逃しているし、遠い駅から家までふらふら歩いてたどり着き、そのまま床で寝て、起きたら風邪をひいている。二日酔いのダメージが大きく、最短でも半日は使い物にならない。

酒を飲むのって荒い波の上でサーフィンしているようなもの。一瞬でもバランスを失えば容赦なく海面に叩きつけられるのである。死ぬこともある。だから、酒を飲む人は酒飲みに優しい。自分も何度も波にのまれ、その強烈な力に翻弄された経験があるのだから当然だ。

酔いつぶれた老紳士

以前、東大阪にある布施という町の居酒屋で友人とお酒を飲んでいた時、カウンターに一人で座っていた老紳士が酔いつぶれて動けなくなってしまったのに居合わせた。そんなにジロジロとは視線を向けなかったけど、ブランドものらしき綺麗なシルエットのコートを着て、白い髪をキリッと整えたヘアスタイルで、歳の頃は60代半ばぐらいに見えた。夕方から何かの会合があって、そこに集まった人たちと会食を楽しんだ後、すでに結構酔っているのに気分的には飲み足りなくてこの店にふらっと入ってきた、と、そんな風な印象。あくまで勝手な推測だが。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード