酒の席の話【パリッコ】

酒の席での会話って、その人の人となりが出ますよね。「のんのん」第7回はそんな酒の席でのトークについてパリッコさんが書いてくれています。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。



酒の席で何を話すか

「酒の席で政治、宗教、野球の話はするな」なんて定説がありますが、これは、それぞれの信念が強すぎて意見がぶつかったときにヒートアップし、喧嘩にも発展しかねないからでしょう。お酒が入っていればなおさら。他にも、延々と仕事や恋人の愚痴を言っていたり、下世話な自慢話をしているというのも、あんまり好ましくありませんね。 ではどんな話をすればいいか? 周囲の先輩や良い酒飲みを眺めてみると、「誰も傷つけず、正解も出ない話題」が最も向いているようです。

不毛なようで熱い先輩酒飲みたちの会話

漫画『酒のほそ道』の作者、ラズウェル細木先生をはじめとする先輩酒飲み軍団が何人かいて、ありがたいことに、僕やナオさんも飲み会に参加させてもらうことがよくあります。
この方々がもう10数年、毎年欠かさずやっているのが「駅弁大会チラシ飲み」。 どういうものかというと、毎年年始に新宿の京王百貨店で、全国各地から名駅弁が集まる即売会、「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」通称「駅弁大会」が開催されます。約2週間、連日催事フロアに人が溢れる人気で、もちろんみなさんもこのイベントの大ファン。ただし、一般的なお客さんとは視点がちょっと違う。告知が始まり、チラシの配布が始まると早々にゲットして、夜な夜な酒場に集合し、そのチラシを見ながら、あーだこーだと議論を繰り広げる。「今年の一面はインパクトがある」「あの名駅弁にこんな限定品が!」「この弁当とあの弁当の名前をくっつけて、一番いやらしい名前の駅弁を作り上げた奴の勝ち」などなど……。
もちろん実際毎日のように会場に足を運び、きちんと売り上げに貢献する真っ当なファンではあるんですが、それはそれとして、夜は酒場でそのチラシを肴に好き勝手言って、大笑いしながら飲んでいる。実際に駅弁を食べながら飲むわけじゃなし、何がおもしろいのかわからないという方もいるかもしれません。が、僕はこれこそが、酒の席の話の理想形だと思います。
誰も傷つけず(その場に駅弁業者さんがいたら傷ついてしまう可能性がなくもないほど好き勝手言ってるんですが、いないので)、正解が出るはずもなく、そして本人たちは心底楽しんでいる。こういう平和な酒、ありそうでなかなかないんですよね。

以前、そんな先輩酒飲みたちのうちの4人が、昼間っから新宿で飲んでいるという情報を聞きつけ、ちょうど近くを通る予定があったので、小一時間ばかり寄らせてもらったことがありました。 僕が到着すると、すでにだいぶできあがったように見える面々が、いつになくヒートアップして何やら議論をしています。これはまずいタイミングだったかなと思いつつご挨拶をすると、全員がちらりとこちらを見て、さっとグラスをかかげ「はいおつかれ」って感じで小さく挨拶すると、またすぐ話に戻る。一瞬その熱気に呑まれそうになるも、ひとまずお酒を頼み、よくよく話を聞いてみます。

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パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

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