書籍化しました!
“よむ”お酒(イースト・プレス)
本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
好評発売中!
ひとり飲みや、晩酌のお伴にぜひどうぞ
みんなが酔っている様子を冷静に見る
私の父は酒が強い。
強いし酒が大好きだ。グラス半分のビールで顔が真っ赤になる母に対し、父方の家系はみんなアルコール分解能力の発達しているようで、父の出身地である山形に帰省した時など、宴会の酒量がすごい。
山形には私と歳の近いいとこたちが何人かいるのだが、みんなとにかく長時間に渡って飲んでいる。どれだけ飲んでも平然としている、というわけじゃなく、結構酔っている様子なのだがそう見えてからが長いのだ。
そんな強豪たちを前にして私はいつもすぐ酔いつぶれてしまう方で、せっかくの機会にあまり早くダウンするのも寂しいから、できるだけ少しずつマイペースに飲むようにしている。そうやってゆっくり飲むようにしてみるとどうでしょう。みんなが酔っている様子が冷静に見えてくるのだ。
同じ話を繰り返しながら、時おり「お前さっきから飲みが足らねえんだず!」と私のコップにドボドボ酒を注いでくるいとこ。屁で返事をしてくる父の兄。いつしかすっかり呂律がまわらなくなって、トイレのドアが見つけられずにうろうろしている父。
家族や親戚の前で酩酊
こうして酒に酔った状態を親戚同士で見せ合っているのって一体なんなのかと思う。アルコールは身体に変容をもたらすわけで、ドラッグの仲間だ。むしろ違法とされているあれこれのドラッグよりも依存度や身体への悪影響はアルコールの方が大きいとされるデータも何度か目にしたことがある。
私はドラッグに全然知識がないけど、海外の映画なんかでそういう描写を見たり、ハードコアなラップの歌詞でそれらしきものに出会ったりしている範囲では、家族や親戚の前で酩酊しているってあんまりないんじゃないかと思う。むしろどんなにハマっているやつでも家族にだけはマトモな自分を見せていたい、というような印象。それがアルコールだけはなんでなのかOKになっている。ある宴会の途中で酔って記憶がなくなり、朝、畳の上に自分と自分の父だけが横になっているのに気づいたことがある。誰もいなくなった場所に父と息子がぶっ倒れているというこの状況、なんなんだ!映画で見たことねえぞ!
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。