会社でやれば、チャレンジし続けられる。
monomをはじめるとき、「3年で10のモノをつくる」という目標を立てました。実際には2014年の4月から2017年4月までの3年間で、コンサルティング型の案件も含めると、10以上のプロジェクトを行いました。
もし、僕が自分のやりたいことをやるために、起業していたとしたら、その会社を軌道に乗せるためにひとつのことに集中しないといけなくなります。
メンバーや資金、クライアントも簡単に集まるわけではなく、10ものプロジェクトを進めることはできなかったと思います。
そういう意味でも、monomを会社の中でできたことは、僕にとって幸運でした。
monomでは、「Pechat」以外にも、さまざまなモノづくりを推し進めています。
「Write More」(ライト・モア)は、紙を置いて書くとカリカリとスピーカーから音がするボードです。
これは、勉強するとき、自分が書くカリカリという音を聞くと集中力が上がる、というmonomのメンバーの一人が大学院時代にやっていた研究から生まれたものです。
自分がやっている行為への集中が、その行為に不随する音を聞くことで増す。まだはっきりとした実証結果は出ていなかったのですが、それに準ずるものがあるという研究をもとにつくられたプロダクトで、monomではそのデザインやネーミングを担当しました。
博報堂と神戸市が立ち上げた、社会課題をデザインで解決しようという「issue+design」という団体があるのですが、「Write More」は、そこのクライアントである高知県の佐川町で、地元の木を使った商品づくりというテーマのもと、プロトタイプとして販売されました。
また、「Lyric Speaker」(リリック・スピーカー)は、歌詞が美しいモーショングラフィックとして表示されるスピーカーです。博報堂のグループ会社SIXが企画開発をし、そのハードウェアのデザインを依頼されました。
コンセプトは明快です。昔は歌詞カードを見ながら音楽を聴いていましたが、最近ではダウンロードやストリーミングが主流なので、歌詞カードという物理的なものが存在しない。しかし、歌は本来、歌詞と音楽が合わさって楽しむものです。
そこで、この時代にもう一度、歌詞を見ながら音楽を楽しむ文化をつくることができないか、というところから発想されたものでした。
すでにあったプロトタイプをもとに、透明ディスプレイを使い、ディスプレイとスピーカーを重ねることで、歌詞というビジュアルと音をレイヤーにして、シンボリックに見せるデザインにしました。
「Lyric Speaker」は商品化されて、実際にSIXから発売になりました。
上「Write More」(2015)/下「Lyric Speaker」(2016)
いずれもmonomでデザインを手掛けた製品。
「Lyric Speaker」に関しては、YOYデザインによる最新モデルも2018年11月に発売。
しっぽのついた癒し系ロボット。
さらにもうひとつ、2018年11月に発売されたのが「Qoobo」(クーボ)です。
ペットを飼いたいけどマンションなので飼えない、アレルギーだから触れない、忙しくて面倒が見られない、とさまざまな理由でペットを飼えない人たちに、動物による癒やしを体験してもらおうというのがコンセプトのロボットで、丸いクッションに動くしっぽがついていて、撫でるとそのしっぽがいろんな動きをします。
「Qoobo」(2018)
撫で方によって反応が変化するしっぽのついたクッション型セラピーロボット。
monomは、デザインディレクション、ブランディングなどを担当している。
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