なぜ広告会社がモノづくりをするのか。

博報堂はじまって以来の異色のプロジェクトを実現した注目のクリエイティブディレクター小野直紀さん。たくさんの紆余曲折を経て、「博報堂でモノづくりをする」という、本当に自分がやりたいことを見つけた小野さんは、どのようにして自分のやりたいことを会社のなかで実現させていったのでしょうか? 話題の書籍『会社を使い倒せ!』から〈STAGE2 会社を使って、やりたいことを実現する。〉編の第1回をお届けします。

会社を使って、やりたいことを実現するには?

 大学で建築を学び、僕は縁あって博報堂という広告会社に入社しました。

 クリエイティブなことがしたい、という思いはずっとありましたが、それがどんなものなのか僕自身もわからず、僕のやりたいことは、とてもぼんやりしていました。

 そこから、社外の広告賞に応募したり、コピーライターに転属したり、社外活動でデザインスタジオを立ち上げて作品を発表したり……。たくさんの紆余曲折を経て、ようやく自分のめざすものを見つけたのです。


 「博報堂でモノづくりをする」


 これが僕のやりたいことでした。

 ただ、言うまでもありませんが、博報堂はモノづくりの会社ではなく、広告会社です。やりたいです、と言って、すんなり受け入れられるものではありません。


 しかし、最終的に「monom」(モノム)というチームが生まれ、僕は博報堂でモノづくりをすることを実現させることになります。

 そして、実際に商品を「発売元:(株)博報堂」として世に送り出すこともできました。


 普通に考えたらありえない、広告会社がモノづくりをするという試みが、どうして実現できたのか。

 ポイントは大きく3つあると思っています。


      〇 会社に徹底的に向き合う。

      〇 リスクをとる覚悟を決める。

      〇 世の中を味方につける。


 では、僕がどのようにして、自分のやりたいことを会社のなかで実現させていったのか、紹介していきたいと思います。


半歩先の、未来の風景をつくる。

 会社でやりたいことを実現するために、僕が何をしたのか。

 それを具体的にお話しする前に、ここで、僕が現在プロジェクトリーダーを務めているプロダクト・イノベーション・チーム「monom」(モノム)について、説明したいと思います。

 広告会社の博報堂がモノづくりをする。それを担うのがmonomです。

 モノづくりをしたいといっても、どんなものでもいいわけではない、と僕は考えていました。

 モノづくりをしている会社は、世の中にたくさんあります。他の会社と、同じようなものをつくっても仕方がありません。

 では、どんなものをつくるべきなのか。

 そのひとつのキーワードとして掲げたのが、「半歩先の、未来の風景をつくる」でした。「一歩先」ではなく「半歩先」というのがポイントです。

 例えば、漫画家の手塚治虫さんが『鉄腕アトム』で、藤子・F・不二雄さんが『ドラえもん』で描いたような未来は、一足飛びにやってくるわけではありません。

 一歩ずつ一歩ずつ、それこそ何歩も歩みを重ねながら、少しずつ近づいていくものだと僕は思っています。

 しかし、その一歩すら簡単じゃない。

 だから、最先端の領域で研究をしたり、新しい技術開発をしたりと、その「一歩」にしのぎを削っているモノづくりの会社がたくさんあります。

 ですが、僕たちはモノづくりの会社ではなく、広告会社なので、そうした新しい技術を生み出すノウハウもリソースもありません。

 そこで決めたのが、「一歩先」ではなく「半歩先」という考え方でした。

 「半歩先」というのは、簡単に言うと、まだ世にない技術や普及していない技術は使わないという意思表示です。

一方で、世の中には、まだ誰も気づいていないアイデアの種がたくさん眠っています。

 日々、広告の仕事をするなかでそう感じていた僕は、そうしたアイデアの種と、すでに一般化している技術を掛け合わせて、まだ世にない新しい機能や体験を生み出せるのではないかと考えました。

 ただ、いくら一般に普及している技術を使っていたとしても、人はまったく新しい機能や体験を受け入れるのには時間がかかるものです。

 新しいもの好きの人であれば飛びつくかもしれませんが、世の中の大半の人はそうではありません。機能や体験が新しすぎると簡単には受け入れられない。

 そこで、新しすぎる「一歩先」のアイデアではなく、新しいけど受け入れやすい「半歩先」のアイデアを提示することが重要だと考えたのです。

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会社を使い倒せ! (ShoPro Books)

小野 直紀
小学館集英社プロダクション
2018-12-20

この連載について

初回を読む
会社を使い倒せ!

小野直紀

会社で「自分のやりたいことができない」と感じたら、どうしますか? 広告会社の博報堂に勤めながら「モノづくりをしたい」と考えた小野直紀さんは、辞めて転職するのでも、起業するのでもなく、あえて会社に残ることで、人・資金・ネットワークなど、...もっと読む

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コメント

harukifujii Pechatいいよねー どの分野でもUX考えられる人がモノ作れるのが一番強いから、この流れは増えるねー https://t.co/e3gQmkgX6u 2ヶ月前 replyretweetfavorite

shigekey "新しすぎる「一歩先」のアイデアではなく、新しいけど受け入れやすい「半歩先」のアイデアを提示することが重要だ" |小野直紀 @ononaoki | 2ヶ月前 replyretweetfavorite

megamurara 一歩前は無意識的に見れますが半歩前は意識しないと見れないので良いのかなと思いました(しかも一歩前と一歩出る前を意識した上での半歩ですし)。 2ヶ月前 replyretweetfavorite