鹿児島から沖縄まで、飛行機なら1.5時間。
それをフェリーで向かうとなると、丸1日かかる。
「ねぇ、ユウカってずっとこんな感じで生きてきたから未だに独身なんだろうね」
フェリー乗り場で晶がユウカに対してぶぅ垂れる。
「どういう意味よ?」
「だってさ、その場しのぎでお金使ってるから飛行機代がなくなっちゃうわけでしょ。結婚だって、逆算で考えたらできるでしょ。普通の人はきっと、26歳で結婚して、28歳で出産して、子どもが手が離れるのが48歳。そこからまた第二の自分の人生、フラダンスをしようかベリーダンスをしようか考えるワケ。そんなおばさん達がよく沖縄のホテルにバカンスにきてたよ」
「そんな先のこと考えていまの行動を決めるなんてなんか変。晶ちゃんだって、今女優になりたいから大阪に出たんでしょう?」
「今なりたいというか、将来なりたいから、中学卒業したあのタイミングで大阪に行ったのよ。私はいつだって逆算して誰よりも早く行動を起こしてきた。同級生なんかより何千歩も前にでてたわよ」
「今の晶ちゃん、妊娠して故郷に帰ろうとしている晶ちゃんは、その将来から逆算した姿なの?」
「父親がいなくて、女優諦めて故郷に帰る私が、逆算してたと本気で思う? そんなわけないじゃない。世の中計算通りいかないこともあるのよ……でも正解ね。私を黙らせるにはいい質問だったと思うよ」
ユウカは15歳も離れた子にちょっぴり意地悪な質問をした自分を大人気ないと恥じた。
「沖縄帰ったらどうするの?」
「母の仕事手伝いながらその時がきたら産むんだろうね。そのあと落ち着いたら母に子どもを預けて私は東京に行く。幸いまだ若いから、ぜんぜんやり直しはきくし。むしろ、この年齢くらいから女優目指して上京する子の方が多いだろうし。下積みがある分、そこでも私の方がリードしてるってわけ」
両手を挙げて前に倒すしぐさをして、そんなことは何でもないことのように言う晶。
ユウカは、15年前の自分と重ねて、はるかに大人びたことを言う彼女をみていた。