もしもあのとき整形していたら

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回のテーマは、整形です。誰でも理想の容姿に変身した自分を妄想したことはあるはず。かつて美容整形外科を訪ねたことのある森さんは、その時の光景が忘れられないそうで……。

整形はうしろめたいこと?

芸能人が整形をカミングアウトするのが、めずらしくない時代となった。それどころか、「勇気がある」とか「よく言った」など、称賛されたりする。これは裏を返せば未だ、整形=うしろめたいこと、という図式がうっすらと残っているからではないだろうか。

比較的簡単な整形がプチ整形と称され、メイクの延長線上みたいに扱われている昨今、「プチ整形だよ、整形じゃないよ」と施術した本人がわざわざいいわけしてみたり(いいわけするのだから、本人だって立派な整形だと承知している)。堂々としているわりには、どこかまだ罪の匂いが消えていない。決して罪ではないのに、だ。

整形。それは秘密裏に行われる自慰行為みたいなものだと、私は思っていた(自慰行為も罪ではないけれど、なんとなくうしろめたい香りがするから)。技術が良ければ成功して欲求が満たされ、技術がイマイチ、または目的とするポイントから外れていたら、さらなる手法を模索する、みたいな感じだろうか。

誰だって憧れの顔を夢見たことがあるはず

一昔前は「整形したい」なんて言おうものなら、「親からもらった身体に傷をつけるなんて!」とけちょんけちょんにけなされたものだが、こちらとて欲しくてもらった容姿ではない。親だってそりゃあ、できるかぎり見目麗しく製造し、生んであげたいと切望するだろうけれど、材料を考慮すれば完成品にもだいたい想像がつくし、いかに上質な材料だとしてもバランスを欠いてしまう場合だってある。

いやしかし、その後の調理の仕方で容姿の味など変わってくるので、生まれた時点ではまだ何とも言えない。とはいえ生まれてこのかた100%自分に酔いしれている人はいないだろう。誰だって、ここをどうにかしたい、あそこがもっとこうだったら、と憧れの顔や身体を夢見たことがあるはずだ。

実は私も、美容整形外科の診察を受けたことがある。もうかれこれ25~30年程前だろうか。目をもっと大きくしたい、鼻をもっと高くしたい、丸顔をなんとかしたいetc。身体はもとより顔には不満たっぷりだった。

特に目のコンプレックスは根深かった。切れ長で細くて小さくてつり上がった目……、今でこそ昔の写真を見て「美人とは到底言い難いが色白の和風な顔だし、メイクでどうにでもなったんじゃないか」と前向きにとらえられるのだが、当時はメイクの腕もないし「すっぴんでも可愛い、美人」というのが理想だった(まぁ、誰しもがそうだろうよ)。

私はすでに就職していて、そこそこの給料をいただいていたので、金銭面では問題はない。お金というものは人に自信と勇気を与える。私はひとりで某有名美容整形外科を訪ねた。

まるでお化け屋敷のようだった

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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