エウカシとオトウカシの兄弟②
(前回のおはなし)
そこで、シイネツヒコは祈誓(うけい)をして、
「我が君がこの国を平定できるなら、行く道は自然に開けよう。もし平定することができないなら、賊兵が必ず阻むだろう」
と言い終わると、まっすぐ敵陣に向かって歩いて行きました。すると敵兵たちは二人を見て、
「あはは、これはなんとも見苦しいじいさんとばあさんだなあ」
と大笑いして道を開けて通らせました。
二人は無事に天香山に着いて、土を取って帰ってきました。カムヤマトイワレビコはたいそう喜んで、その土で、八十平瓮(やそひらか)と天手抉(あまのたくじり※呪詛の祭祀用の真ん中のくぼんだ小さい土器の皿)※1八十枚、厳瓮(いつへ※儀礼用の器)を作り丹生川(にうがわ)※2の川上に上って行って、天地の神々を祭りました。菟田川(うだがわ)の朝原※3で水の泡のように浮かんで消えるようにと、八十梟帥(やそたける)の命を天手抉(あまのたくじり)八十枚に呪いつけて浮かばせ沈ませたのです。
カムヤマトイワレビコはまた祈誓をして言いました。
「今、八十平瓮を使って水なしで飴を作ろう。飴ができたら、必ず武器の力を借りずに居ながらにして天下を平定できる」
飴は自然にできました。また祈誓をして、
「今、厳瓮(いつへ)を丹生川に沈めよう。もし大小の魚が一斉に酔って流れる様子が柀葉(まきのは)※4が浮き流れるようであったら、私は必ずこの国を平定するだろう。そうでなければ全ては失敗に終わるだ ろう」
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