タモリ論』はじめに【後編】 喜んでタモリを語る馬鹿になる

タモリの本当の“凄さ”って何だろう。なぜ30年以上も毎日、生放送の司会を超然と続けられるのか。サングラスの奥に隠された孤独や絶望とはーー。
発売後早くも版を重ね、巷で話題となっているのが、異才の小説家・樋口毅宏さんによる革命的芸人論『タモリ論』です。その刊行を記念して、まえがき全文をcakesに公開! 後編は、笑いについて語る野暮、そしてタモリを語る困難について、敢えてその愚を犯す心意気が綴られます。

 タモリを語る困難

 金寿煥氏はこの原稿を読んで声をかけてくれたのですが、僕には正直戸惑いがありました。
 タモリについて書くということは、お笑いについて書くことになります。

 僕は拙著の中で、映画や音楽についてはやたらと書き散らしてきましたが、お笑いについて書くことを避けてきました。
 何と言えばいいのでしょうか。「あそこの鮨屋、いい職人がいるよね」みたいな、美味い店について語るというか、気恥ずかしさが付きまとう感じに似ています。

 うーん、ここまで来たらはっきり言いましょう。僕は、お笑いについて、いかにも一家言あるとばかりに語っている人が、あまり好きではありません。

 なぜか。簡単な話です。人類が誕生してからというもの、この世界には七つの芸術があると言われています。
 建築、彫刻、絵画、音楽、詩、演劇、そして映画—。
 しかし私はそうしたジャンルの枠組みを超越して、いちばん難しいのは、人を笑わせることだと思っています。先ほど引用したものと一部重複しますが、人を泣かせることは本当に容易です。それに比べて、人を笑わせることの困難さといったら、他に並ぶものがありません。

 そんな、「人類最困難のジャンル」に日々挑んでいる芸人を、「俺はお笑いにうるさいよ」とばかり、エラそうに語っている人たちが、僕にはカッコ悪く見えて仕方がないのです。

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初回を読む
サングラスの奥に隠された狂気とその神髄—『タモリ論』序論

樋口毅宏

タモリは、生放送の司会を毎日30年も続けてなぜ気が狂わないのか? タモリは、果たして正当な評価を受けているのだろうか。 タモリは、ビートたけしや明石家さんまと何が違うのだろうか。 タモリは、己に宿る狂気やその神髄に気づいているの...もっと読む

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コメント

t_take_uchi そうそう、サングラスじゃなくアイパッチしてな。 約5年前 replyretweetfavorite