タモリを語る困難
金寿煥氏はこの原稿を読んで声をかけてくれたのですが、僕には正直戸惑いがありました。
タモリについて書くということは、お笑いについて書くことになります。
僕は拙著の中で、映画や音楽についてはやたらと書き散らしてきましたが、お笑いについて書くことを避けてきました。
何と言えばいいのでしょうか。「あそこの鮨屋、いい職人がいるよね」みたいな、美味い店について語るというか、気恥ずかしさが付き
うーん、ここまで来たらはっきり言いましょう。僕は、お笑いについて、いかにも一家言あるとばかりに語っている人が、あまり好きではありません。
なぜか。簡単な話です。人類が誕生してからというもの、この世界には七つの芸術があると言われています。
建築、彫刻、絵画、音楽、詩、演劇、そして映画——。
しかし私はそうしたジャンルの枠組みを超越して、いちばん難しいのは、人を笑わせることだと思っています。先ほど引用したものと一部重複しますが、人を泣かせることは本当に容易です。それに比べて、人を笑わせることの困難さといったら、他に並ぶものがありません。
そんな、「人類最困難のジャンル」に日々挑んでいる芸人を、「俺はお笑いにうるさいよ」とばかり、エラそうに語っている人たちが、僕にはカッコ悪く見えて仕方がないのです。
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