国連がまとめた幸福度ランキングで日本が昨年から4つ順位を下げて58位になったというニュースが流れた。上位は常連の北欧の国々である。
だが、このニュースでは内容がよくわからないので、情報の大元である2019年WHR(ワールド・ハピネス・レポート)をダウンロードして読んでみた。統計の専門家ではないので計算方法などはよくわからないが、このレポートは日本と日本人の幸福感について重要なことをいくつか指摘してくれていると感じた。
日本人の幸福度はなぜ低いのか?
WHRの幸福度ランキングはギャラップの世論調査(World Poll Questions)を元にしており、質問は、ビジネス経済、社会関与、コミュニケーションとテクノロジー、多様性(社会問題)、教育と家族、感情(幸福感)、環境とエネルギー、食と住居、政府と政治、法と秩序(治安)、健康、宗教と倫理、交通、仕事の14の分野である。回答者が「はしご(ラダー)」を想像し、想像できる最悪の状態を0、最高の状態を10として主観的な評価をする「カントリルラダー」という指標を使っている。
WHRでは、その結果の幸福度を説明する重要なファクターとして「一人あたりの国内総生産」、「社会的支援」、「出生時の平均健康寿命」、「人生の選択をする自由」、「他者への寛大さ」、「公職者が汚職/堕落しているという国民の認識」の6つを挙げている。
幸福度ランキングのグラフを見ると、トップからフィンランド、デンマーク、ノルウェー、アイスランドと北欧の国々が並んでいる。銃による大量殺人があり、深刻なヘロイン依存症が蔓延しているアメリカですら19位に入っているのに、日本は58位なのだ。
(Helliwell, J., Layard, R., & Sachs, J. (2019). World Happiness Report 2019, New York: Sustainable Development Solutions Network.より抜粋)
だが、グラフをよく見れば、日本は「一人あたりの国内総生産(濃い紫)」、「社会的支援(ピンク)」、「出生時の平均健康寿命(オレンジ)」という左から3つのファクターでは上位の国々とほとんど変わらないことがわかる。
上位の国々と日本との大きな違いは、「他者への寛大さ(水色)」と最後の「ディストピア+レジデュアル(薄い紫)」である。日本は「出生時の平均健康寿命」では156カ国中2位なのに、「他者への寛大さ」においては92位(1位はミャンマーで2位はインドネシア。アメリカは12位)というありがたくない値だ。
繰り返すが幸福度のスコアはそれぞれの国の回答者の主観的な評価の平均であり、6つのファクターはその因果関係を説明しようとしているだけである。例えば「他者への寛大さ」が高いからといってその国がスコアを上げてもらっているわけではない。
まずはこの「他者への寛大さ(generosity)」と幸福感について語ろう。
幸せになる条件は揃っているのに、幸せを感じていない日本人
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