歌でわかる、西郷隆盛がすごい理由

歴史を動かすその瞬間、彼らはどんな歌を詠んだのか。歌を通して、偉人たちの素顔を明らかにする新感覚短歌論『日本史を動かした歌』(田中章義・著)。本書の刊行を記念して、よりすぐりの人物たちのよりすぐりの歌を、特別公開します。第5回は、明治維新の立役者・西郷隆盛が登場。

上衣はさもあらばあれ敷島のやまと錦は心にぞ着る

一八二八(文政十一)年に現在の鹿児島市加治屋町に生まれた西郷隆盛。「維新三傑」と称された隆盛は、薩長同盟を結び、江戸無血開城を成し遂げた男だ。

けれども、本当に後世に語り継がれるべきものは、彼の残した言葉なのではないかと思っている。

たとえば、「人を相手にせず、天を相手にして、己を尽くして人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし」という言葉。これは、「狭い人間世界だけに生きるのではなく、天と対話をしながら誠を尽くし、他者を咎めることをせずに己に真心が足りないことを省みていくべきだ」という内容だ。

「人が歩むべき道は天地自然の道であるから、学問の道は天を敬い、人を愛することを 目的として常に己に克つことに努めなければならない」とも語った。「他者に打ち勝つ」のではなく「己に打ち克つ」ことの尊さを知っている男の生きかたは、野太くて逞しい。

沖永良部島に流され、一年六カ月もの間、牢獄に閉じ込められていた時にも、この島が自然災害の多いことを知ると、「社倉趣意書」を書き、飢饉等に備えて村民が穀物や金を備蓄する相互扶助の制度を提案した。

この基金は飢饉のみならず、貧困者援助や病院建設、学資援助にも役立てられている。「我を愛する心を以て人を愛するなり」という言葉も残した隆盛らしい行動だ。

「捨て小舟」として生きる

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偉人の本音は歌にあり! 日本史の裏側がわかる、英傑百人一首物語。

日本史を動かした歌

田中 章義
毎日新聞出版
2019-03-23

この連載について

初回を読む
日本史を動かした歌

田中章義

独眼竜政宗は歌の天才? 高杉晋作は隠れ西行ファン?  夏目漱石がこの世にたった8首残した歌とは? 歴史を動かすその瞬間、彼らはどんな歌を詠んだのか。 歌を通して、偉人たちの素顔を明らかにする新感覚短歌論『日本史を動かした歌』(田中...もっと読む

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