第1回の記事で、そもそも"わかる"とはどういうことなのか、また「"わかる"の3段階」などをお伝えしました。わかるには3つの種類があります。
①話の内容を把握する
②話の内容を納得する
③話の内容を再現する
まず、相手が言っている内容を把握しなければ、「わかった」ことにはなりません。次に、相手の話を納得しなければ「わかった」とはなりません。言っていることは理解できても、納得できなければ「なるほど、そうだね」とは思いません。そして最後に、せっかく話を聞いても、次の日に忘れてしまったら「わかった」とはいえません。つまり話を自分一人で再現できなければ「わかった」とならないのです。
これが"わかる"の3段階です。
続いて第2回では、話をわかりやすく伝える絶対ルール"テンプレップの法則"をお伝えしましましたね。どんな話でも、テンプレップの法則に従えば、わかりやすくなってしまう、という魔法のような法則です。
1.これから伝える内容のテーマ(Thema)
2.伝えたいことの数(Number)
3.伝えたい内容のポイント/結論(Point)
4.どうしてそう言えるかという理由(Reason)
5.実際にどういうことがあるのかという具体例(Example)
6.最後に結論を念押し(Point)
「テンプレップ」とは、この6要素の頭文字をとって、順番に並べたものです。この順番で伝えると、どんな内容でもわかりやすくなってしまうのです。
伝え手の大きな勘違い
今回は、説明する側の「大きな勘違い」についてお話ししておこうと思います。この「勘違い」のせいで、説明が分かりづらくなっているケースが多くあります。非常にもったいない話です。でも、その勘違いがなくなれば、すぐに状況は改善されます。
それでは、多くの方が勘違いしているポイントを紹介していきます。
◆勘違い1: 一度言えばわかる
「説明は一度だけすればいい」
「一度『聞き手』が納得したら、もうその説明は不要」
そう考えている人もいます。「同じ事を2度言わせるな」というセリフを聞いたことがある方も多いでしょう。
たしかに、誰だって、何度も同じ事を伝えたくないと思うかもしれませんね。しかし、どんな場合でも「一度言えばわかる」というわけではないんです。
人間は忘れる動物です。ドイツの心理学者エビングハウスによると、新しく覚えたことでも20分後に42%、1時間後に56%、1日後には74%も忘れてしまうといいます。つまり、一度納得しても、「あれ、それって何だっけ? どういうことだっけ?」となることが往々にしてあるわけです。
そのため、時間が空いたり、いったん別の話題に進んだ時は、再び前に戻って確認する必要があります。その時理解できたからと言って、その知識が100%定着して、その後も記憶に残り続けると考えてはいけません。
"わかる"ためには、「再現」できることが不可欠です。一旦話を聞いて理解し、納得しても、それを覚えていられなければ、相手は"わかった"とはなりません。
ですから伝え手は、相手が「再現」できるように、工夫しなければいけないのです。忘れやすいポイントを繰り返して何度も念を押したり、語呂合わせで覚えやすくしたり、ポイントをまとめて整理したり・・・。
それを怠ると、相手は忘れてしまいます。そして忘れてしまうということは、その人たちにとっては、「最初から聞いていない」のと同じなわけです。
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