田中章義
歌人・伊達政宗の最期
歴史を動かすその瞬間、彼らはどんな歌を詠んだのか。歌を通して、偉人たちの素顔を明らかにする新感覚短歌論『日本史を動かした歌』(田中章義・著)。本書の刊行を記念して、よりすぐりの人物たちのよりすぐりの歌を、特別公開します。第3回は、「独眼竜」として知られる伊達政宗が登場。
曇なき心の月を先だてて浮世の闇を照らしてぞゆく
多くの人々が伊達政宗は戦国時代の武将として認識している。けれども、誰が何と言おうと、伊達政宗は歌人だ。一五六七(永禄十)年に米沢城主伊達輝宗の長男として生まれた政宗にもし歌の才能がなかったら、歴史はどう変わっていただろうか。
織田信長が稲葉山城を岐阜城とあらため、本格的に天下統一に乗り出した年に生まれた政宗。 伊達氏十六世輝宗の嫡子としての誕生だった。
五歳の時に疱瘡(天然痘)を患い、右目を失明した。当初はあまり人前に出たがらない時期もあった。それでも、父は息子が秘める才能を感じ取っていた。武道はもちろん、伊達家でそれまで大事にされてきた和歌や茶道などを学ばせ、漢詩も三顧の礼を尽くして著名な師を招き入れた。
「自分の片目が見えないのはなぜか」と問われた漢詩の師は、「梵天丸様(政宗の幼名)の目は龍が持っていったのです。龍は若殿が強い大将となるために天の上から見守っているのです」と答えたと語り継がれている。
秀吉が認めた「鄙の華人」
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偉人の本音は歌にあり! 日本史の裏側がわかる、英傑百人一首物語。
この連載について
田中章義
独眼竜政宗は歌の天才? 高杉晋作は隠れ西行ファン? 夏目漱石がこの世にたった8首残した歌とは?
歴史を動かすその瞬間、彼らはどんな歌を詠んだのか。
歌を通して、偉人たちの素顔を明らかにする新感覚短歌論『日本史を動かした歌』(田中...もっと読む
著者プロフィール
歌人・作家/元国連WAFUNIF親善大使。1970年、静岡市生まれ。大学1年生のときに第36回角川短歌賞を受賞。在学中から多くの雑誌に執筆・連載を開始。卒業後は、世界各地を旅しながら、ルポルタージュ、紀行文、絵本などを執筆。また、世界各地で詠んだ短歌が英訳され、2001年、世界で8人の国連WAFUNIF親善大使にアジアでただ1人選出。その後、国連環境計画「地球の森プロジェクト」推進委員長、ワールドユースピースサミット平和大使などを務めた。大学で短歌を教えているほか、テレビやラジオの情報番組のコメンテーターとしても活躍中。