これが「防災の達人」のバッグの中!!

国民の半数が被災者になる可能性がある南海トラフ大地震。それは「来るかもしれない」のではなくて、「必ず来る」。関東大震災の火災、阪神・淡路大震災の家屋倒壊、東日本大震災の津波。その三つを同時に経験する可能性がある。首都圏を襲う大地震も懸念される。
ホンネがホンキの対策を生む! 話題の書籍『次の震災について本当のことを話してみよう。』のcakes連載版!

※これまでのお話は<こちら>から。

バッグの中の防災グッズいろいろ

 さんざん「防災していない人」のことをダメだダメだと言ってきましたから、私自身の防災対策もご紹介しないといけませんね。まずは普段から持ち歩いているバッグの中身をご覧ください。

 一番大事なものは、お守りです。

 前章でも書きましたが冗談ではなく、私は出張などで行く先々の神社を訪れ、「地震の神様」にお参りをしてお守りをいただいてきます。
 茨城県鹿島市の鹿島神宮と千葉県香取市の香取神宮には、大ナマズの頭と尾を押さえる一対の「要石」があります。私はそれぞれの地震、災難除けの「要石お守り」をいただきました。二つの神宮の祭神は、武甕槌大神と経津主大神。日本神話の大国主の国譲りの際に活躍した神様で、武芸の神様としても有名です。当時、蝦夷が支配していた東北地方を関東でにらみつける役割を担っていたのだと思います。
 三重県伊賀市の大村神社にも要石があります。ここではかわいいナマズのお守りがいただけます。鹿島神宮と香取神宮の神様が春日大社(三笠山)に行く途中、大村神社に立ち寄って要石を授けたとの由緒で、地震との縁ができたようです。静岡県浜松市の細江神社は1498年の明応地震で津波に流された御神体を祀っていると言われています。ここでも地震除けのお守りをいただきました。
 こんな感じで常に持ち歩いているお守りは10個ぐらい。もちろん、交通安全や家内安全のお守りも一緒ですが。
 他には現金入り封筒。震災直後は被害調査に行くことがありますが、お金が下ろせないかもしれないので、当面必要になるお金を入れています。非常食として携帯栄養食と羊かん、ウェットティッシュにマスク、万能ナイフ、裁縫セットなどの小物。ビニール袋はエレベーターに閉じ込められたとき、小用を足すなどいろいろな用途が考えられます。携帯トイレもありますし、冬用のアルミ製携帯毛布や使い捨てカイロも持っています。
 スマホも携帯ラジオも電源が切れたら使えません。乾電池は必需品。三つ口のタップは誰かと電源の奪い合いにならないために。紙の地図は大きな紙だと扱いづらいので「ミウラ折り」のコンパクトなものを用意。宇宙工学者の三浦公亮・東京大学名誉教授が考案した折り畳み方で、一瞬で開けたり畳めたりできるスグレモノです。


 常備薬やばんそうこうはもちろん、人工呼吸用の携帯マスクも入れています。誰かを助けるとき、感染症にならないようにしたいからです。
 ホイッスルもかなり重要。万人に持っていてほしいものです。がれきに埋もれると、中はほこりだらけ。胸を圧迫されて助けを求める声を出せなくなることが多い。そんなとき、少ない空気で大きな音が出せるホイッスルが役立ちます。100円ぐらいのものからありますが、壊れやすいので500円ぐらいのものがよいでしょう。
 ホイッスルの中には名前や家族の連絡先、そして血液型を書いた紙が入っています。災害時には血液検査なんてしている暇はありません。血液型が分かっている人から輸血します。建物の下敷きになると、救出された後に細胞の壊死が原因で、急性腎不全や心不全になることが多い。クラッシュ症候群です。早く血液透析を受ければ救命率も上がります。仮に死んでしまっても、連絡先が書いてあるから身元不明にならないので、家族は早めに死亡保険金をもらえるでしょう。
「トリアージタッグ」も自分で持っています。タッグをちぎって、黒や赤などの色にして首から下げれば、優先的に治療してもらえるかもしれない……という目的ではなく、これは講演で見せるためのものです。
 大規模災害時には全員が助かることは難しいのです。備えている人が助かるのが現実です。頑張っておけば、自分が生き残る確率は高まります。もちろん、周辺の人を助けるのにも役立ちます。家族や友人に迷惑をかけない一番の方法は、私が災害後も元気でいることだと思っています。面倒くさいなどと思わずに、ぜひ皆さんもやってみてください。

耐震、自立型住宅

 移動の多い私ですが、家の備えも怠らないようにしています。
 私は名古屋近郊の人口約9万人の市に住んでいます。里山のすそ野にある田舎の集落で、400〜500年前からある敷地に自宅があります。普段の生活はとても不便ですが、防災的にはプラスの面もあります。集落には昔ながらの地域コミュニティーが残っていて、周辺には田畑も広がっています。消防団活動も比較的活発です。
 まずは自助、自分で備えることが第一。私は阪神・淡路大震災の調査で古い家屋の倒壊に衝撃を受け、幼子を抱えていたこともあり、震災5年後に築45年の田舎家を建て直しました。もともとは愛知に多い「田」の字型プランの昔ながらの日本家屋で、屋根は重くて壁がほとんどなく、柱梁の接合部に釘を使わず金物補強もしていない、耐震的には問題の多い家でした。大学で耐震工学を教えているので、耐震性だけは通常の倍を確保しました。家具の固定はもちろん、最近では庭に井戸を掘り、小さな畑もつくって、太陽光発電に加えて燃料電池と蓄電池も備えました。お金はかかりましたが、余剰電気を売電すれば15年ぐらいでもとはとれます。


 普段、家族の中で私が一番危険な場所に出掛けていますので、何かがあったら自分が入る予定の仏壇はしっかり耐震固定しました。今は、成人した子どもたちが災害危険度の高い場所に行ってしまわないかどうかだけが心配です。
 家族同士は、災害用伝言ダイヤル「171」の練習を何度もしてきました。家族旅行では、被災地見学や活断層の見学に連れて行くことが多く、家族にはいやがられました。食材は少し多めに買って、普段から新鮮な備蓄分を残しておく「ローリングストック」法も実践しています。井戸も掘りましたが、お金が足りなくて浅い井戸のため井戸水には大腸菌があり、断水時にトイレの水を流すなどの雑用水がメインのつもり。飲み水には水割り用の水を大量に用意しています。カセットコンロのボンベもたくさん持っているので、ガスがこなくても大丈夫です。どうしようもなくなったら、備蓄してある木質ペレットや庭木を燃やします。ちょっとやりすぎの感は否めませんが、楽しみながら対策をしています。田舎で庭もありますから、排便なども何とかなると思っています。

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次の震災について本当のことを話してみよう。

福和伸夫

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コメント

rosebourbon 参考になるかと思ったしなりはしたが、想定していた以上に持ち物が多くなりすぎるので取捨選択が必要だな。 9ヶ月前 replyretweetfavorite

r28 人工呼吸用の携帯マスクまで持ち歩いているのか... 9ヶ月前 replyretweetfavorite