写真で話そう

盗撮」という言葉を使わないで

世界中を飛び回ってポートレートを撮り続けている写真家・ワタナベアニさん。アニさんが写真を撮るのに苦戦する国というのが、日本とアメリカ。それはいったいなぜなのでしょうか?

ワタナベアニです。前回に引き続き、旅先での写真を。

世界中でポートレートを撮っていると、どの街の人が外国人である自分に優しいかがわかります。誰もが目が合うとニッコリ微笑んでくれる場所では、だいたいこころよく撮らせてくれます。

写真を撮るのに一番苦戦するのはどこかと言うと、日本とアメリカです。日本人はシャイなうえに、ニュースなどで飛び交う「盗撮」という居心地の悪い言葉が、写真を取り巻く環境について回ります。これは写真を撮る人にとってはとてもマイナスで、自分がいかに怪しい者ではないかを説明するのに苦労することになります。

さらに一般の人からも、「それはどんな媒体に載るのか」などと聞かれます。道ばたで綺麗な花を見かけたから撮る、人間に対してもそう感じているだけなのですが、理解はされにくいですね。花は撮っても掲載される媒体なんて聞いてきませんけど。

アメリカは言わずと知れた権利社会です。以前、ニューヨークに着いてホテルに鞄を置き、すぐセントラルパークに行きました。一枚シャッターを切ると、たまたまそこに通りかかった子連れの女性に激怒されました。「あなた、今、私たちを撮ったでしょ。すぐデータを消しなさい!」と怒鳴られたのです。日本語ではマイルドにこう書いていますが、テレビでは放送できない言葉の連発でした。

その黒人女性は、たぶん他人の子供を預かって散歩させているのだと思います。だから預かった子供の写真を勝手に撮られては、職業上困るのでしょう。「ここを撮ったのであなたたちは写っていない」とモニタを見せたのですが、いっこうに怒りは収まりません。到着してから30分もしないうちに写真を撮る意欲が失せました。

日本以外のアジアに行くと子供たちがたくさん集まってきたりして、国によって写真に対する意識は様々です。俺は写真を「平和の道具」だと思っているので、好きな人を撮って、撮られたことに喜んでもらいたい。それがアジアではストレートに通じるのでうれしい。なぜか日本だけ違うのが残念です。

よく冗談で友人同士が「盗撮された」などと言いますが、写真を仕事にしている人にとってこれほどイヤな言葉はありません。できれば冗談であろうと使わないで欲しいと思っています。それは包丁を持ったシェフに対して「通り魔ですか」というような冗談に似ています。言われた方は職業を侮辱されたと感じるでしょう。

写真は楽しく。それだけです。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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コメント

okazu_dm https://t.co/jtsvAIwSb5 僕自身写真を撮ることが趣味なので悪気はないのでそこまで怒らないでという気持ちはわからなくはないが、やっぱり許可を撮らずに人を撮らないようにしてるし、こういう居直り方をするとただただ溝を深めるだけな気がする 2ヶ月前 replyretweetfavorite

mkt66gsn ん????? 3ヶ月前 replyretweetfavorite

ikaremix まあ、撮られたくないわなあ。「花は撮っても掲載される媒体なんて聞いてきませんけど」てのもどうかしてる。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

goodbyehoneyboy 「使わないで」じゃねーよ他人の写真を無断で撮るな 楽しいのは撮る側だけだろうが https://t.co/1jHjcFRkB3 3ヶ月前 replyretweetfavorite