自分はHSP」と自己診断してしまう前に

HSPとはHighly Sensitive Personの略で、直訳すると「とても敏感な人」。今年に入り、牧村さんのもとには「私はHSPなのですが……」という投稿が複数寄せられるようになりました。牧村さんは、「自分がHSPだと信じることによって、自分が楽になれるなら構わない」と断ったうえで、「一歩立ち止まって考えてみませんか。人に操られないために」と訴えます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。

読者さんのご投稿をお受けし、文筆家の牧村朝子が一緒に考えていくという、2014年から続く連載エッセイ「ハッピーエンドに殺されない」。

毎週読んでくださっている方、ありがとうございます。
「HSP 診断」などで検索しておいでになった方も、ようこそお越しくださいました。

2019年に入り、「私はHSPなのですが……」というご投稿を複数いただきました。

HSPとは、「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略。そのまま、とってもセンシティブ(繊細)な人のことを指す言葉です。

アルファベットの略語ですが、別にDAIGOさんが「KSK。結婚してください」みたいなネタでおっしゃったわけではありません。90年代アメリカ発祥の言葉です。

それで、ね?

ここからが本題なんですけど。

日本語、アメリカ由来の言葉をそのまま信じて取り込んじゃうパターン多すぎる〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ということで今日は、

「自分がHSPだと自分で信じるのは構わない」

「だけど、“インターネットから自分に当てはまるカタカナやアルファベットの言葉を拾ってきて身に着ける”ということについては、一歩立ち止まって考えてみませんか。人に操られないために」

というお話をしたいと思います。過去記事「ゲイに恋する“ニュートロイス”です」にも近いお話ですね。

では、ですね。話を始めます。

ちょっと、これを見ていただけますか?

2019年3月18日閲覧時点でのGoogleの検索キーワードなんですけど。

「HSP 診断書」 「HSP 症状」 といった言葉が並んでいますね。

これね、

「HSPとはなんだろう?自分がそれに当てはまるという証明を誰かからもらえるだろうか」

という調べ方でしょ。


ちょっと発想を変えてみてほしいんです。

それこそ、ご自分がセンシティブ(敏感)であるという良さを生かして、情報を吟味してみてほしいんです。

「誰がなんのためにHSPという言葉を作ったのだろうか」

って。「自分に言葉を当てはめる」んじゃなくて、「言葉について自分で調べる」ってことをやってみてほしいんです。

やってみるとわかるんですけど。
HSPというのは、医学概念ではないです。
ですからそもそも、「診断」してもらうものではないです。
じゃあなんなのかというと、HSPというのは、1996年、心理学博士号を持つアメリカの作家エレイン・アーロン氏が出した本*1に出てくる言葉です。

*1 Elaine N Aron. "The Highly Sensitive Person: How to Thrive when the World Overwhelms You". Kensington Publishing. 1996

その本が爆売れしたがために、日本でも、

・「感受性の強すぎる女性は嫌われる!?あなたもHSPかも!」みたいなアドセンス広告
・HSP診断を受けられる病院を教えてくださいというYahoo!知恵袋の書き込み
・ウィキペディアの編集履歴を表示するに、HSPのページを英語版ウィキペディアから訳するということしかしていないアカウントが、まあ偶然の一致かもしんないけど日本でHSP関連コンテンツが発売された2015年に日本語ウィキペディアでHSPのページを作成、執筆している状況

などが出てきている現在なわけですね。

いや〜、なんかね、

「アメリカの博士が作ったアルファベットの言葉」、

信じちゃう気持ちもわかりますよ。そういうもんよね、人間。

・「なんかテレビで医者が言ってた」健康法
・「なんか地元の名士が言ってた」人生訓
「なんかツイッターで有名タレントが言ってた」政治家叩き

そういうの信じちゃうし、リツイートしちゃうじゃない。信じたいよね。信じられるものが欲しいよね。でもさ、でもだよ。その前にさ、何よりまず、自分自身の可能性を信じておくれよ!!お願いだよ!!!!!って、わたしは言いたいわけ。

繰り返します。自分がHSPだと信じることによって、自分が楽になれるなら構わない。けど、「自分はまさかHSP!?」「誰にいくら払えばHSPの診断書がもらえるの!?」って不安になるようなことがあれば、順番を変えてみて欲しい。

言葉を自分に身につけるんじゃない。
自分が言葉を調べるんです。

自分の感受性がハイパーセンシティブなのかもしれないと思ってお悩みのあなた、ぜひ、それをあなたの良さだと思って、知性もハイパーセンシティブな人になってください。

たとえ勉強が嫌いでも、
周りからバカにされた経験があっても、
浮くのが怖くてバカなふりで調子を合わせた経験があっても、
実際に自分は勉強ができないのだと思い込んでいらっしゃっても、
あなたは、あなただけは、あなたの可能性を諦めないでください。知ろうとし続けてください。

HSPという概念を否定したいのではなく、あなたの可能性を肯定したく、わたしは書いています。

以上、HSPについては、無料公開としたいと思います。

ここから下は、「言葉によって苦しみから逃れる」ということについて、公開初日以外は有料記事にしますが、書きたいと思います。

「HSP!嫌われる?今すぐチェック!」とかいう脅し広告を出していた人も、多分そんなことになるとは想像していなかったのであろう発案者エレイン・アーロン博士も、あなたも、わたしも、みんな、言葉を使う人間です。

そして、言葉により苦しみを整理し、何かを伝えようとする、それを仕事としてやっていくにはやっぱり、お金を稼ごうとするわけよね。それにあたり、「●●で嫌われる!」って脅し広告を出す人と、自分は違う、って思おうとして、そう思いたくて、ずいぶんわたしは苦しみました。

何にも違いやしないのかもしれない。これは言葉を売る仕事の業なのかもしれない。けどそれでも、「わたしは脅して買わせます」みたいな開き直りをせず、「あいつらは脅し広告で読者を囲い込む悪人だ」って正義ヅラもせず、なんとか、言葉と向き合うビジネス全体に、向き合っていきたい。それにあなたがもし読者としてお金を払ってくださるなら、わたしはまだまだ悩むことができます。前向きに、悩むことができます。

この先、

・なぜ人は、自由になるために作られた言葉で自分を不自由にしてしまうのか
・なぜ、おそらく「あなたは一人じゃない」と伝えるために作られたはずのHSPという言葉が、日本では「HSPで嫌われる!」「まさか自分もHSP!?」みたいな伝わり方をしてしまったか

考えていきたいと思います。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

karagi_saeri HSPか定かではないけどなんか違う気もする疑念からこの記事を見つけて、なんとなく救われた 言葉に使われないようにね 8日前 replyretweetfavorite

YuwuFuwa この人のHSPの話しわかりやすい わたしの言いたいことそのままだ https://t.co/OZYFLfYOhE 22日前 replyretweetfavorite

illuminus_ どこで見たんだっけと思ってたけどこれだ。 https://t.co/203E6KnOxU 24日前 replyretweetfavorite

chicobami_2 確かにそうだ…と呟いてしまったので呟く(ダブルミーニング 29日前 replyretweetfavorite