有名女優が逮捕された大学不正入学で考える、子どもの幸せ

アメリカで著名な女優や企業経営者が、我が子を名門大学に入学させるため、賄賂を渡すなどの不正行為を働いていたとして逮捕される事件がありました。公平な大学入学選考システムが作られた一方で、金銭的な力でその抜け道を狙う富裕層がいるアメリカの現状を、アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんが紹介します。

アメリカにおける大学入学選考システム

アメリカで3月12日にショッキングなニュースが流れた。TVドラマ「デスパレートな妻たち」の女優フェリシティ・ハフマンや企業の最高経営責任者など50人に対して、大学の不正入学に関与したとして逮捕令状が出たのだ。


大学入試の仕組みは日米で非常に異なるので、まずはそこから説明しよう。

アメリカではそれぞれの大学に「カレッジ・アドミッション・オフィサー」という専門職が複数勤務しており、入学希望者が提出した書類と面接の結果を審査して合否を決定する。合否の理由は極秘であり、大学には公表する義務はない。

ただし、書類審査で最も重視されるポイントは次のようなものだということはよく知られている。

1. 高校で選択した授業とその成績
アメリカの高校では習熟度別クラス編成があり、その選択と高校4年間の成績の平均「グレード・ポイント・アベレージ(GPA)」は、大学入学後の学生の成績を予測するものとして最も重視される。

2. 標準テストのスコア
高校のレベルが異なるので、学校の成績だけでは比較しにくい。そこで、全国的な標準テストのSATあるいはACTのスコアが参考として使われる。
だが、満点になれば有利というものではなく、アイビーリーグ大学などでは「○○点以下は考慮しない」という単なる「足切り」として使われると言われている。

3. スポーツ、音楽、奉仕活動など学校の授業以外の活動
アメリカの大学ではここが非常に重視されている。芸術やスポーツなどで並外れた才能を発揮していれば、GPAや標準テストの結果にかかわらず合格することがよくある。また、大学が力を入れているスポーツで突出した才能を持つ選手は、大学のコーチがリクルートする形で「特別ルート」で合格できる。大学のスポーツコーチは大きな権限を持っている。

4. 出願エッセイ
学生の人となりや情熱を測るために非常に重視されている。成績が多少他の生徒より劣っていても、大学が内容に個性や才能を感じたら、それだけでも合格する場合があるという。

5. 推薦状
学生の前途を予測させるので、高校の成績と同じほど重視する大学もある。教師からの推薦状は必須で、補足として属しているスポーツクラブのコーチや奉仕活動の責任者などからの推薦状も使われる。

6. レガシー入学
親族がその大学にコネクションがある場合(教授、理事、卒業生、寄贈者、など)優先的に入学を認められる制度。特に、プリンストン大学など、古い伝統がある大学でこの傾向が強いと言われる。

7. 人種/社会経済的背景
黒人、ヒスパニック系アメリカ人、アメリカ先住民(アメリカン・インディアン)、社会経済的にハンディキャップのある学生が対象で、他の学生より成績がやや低くても優先的に合格になる。 潜在的能力を持っていても社会的にハンディキャップがある親に育てられた子供の標準テストの点数が低いことはすでに多くの研究結果で明らかになっており、そういった学生に成功のチャンスを与えるのが目的。

アメリカのトップ大学は20世紀後半まで裕福なアングロサクソン系白人男性を(堂々と)優先的に入学させていたのだが、それを改善し、なるべく公平に、しかも大学にとって良い学生を選ぶために編み出されたのが上記のような入学選考システムだ。


我が子をよい大学に入れるために富裕層が狙う「抜け道」

だが、それでも、裕福なアメリカ人は簡単に「抜け道」を探し出してきた。

たとえば、優秀な公立高校のほうが競争は熾烈で良い成績を取りにくいので裕福な者は最初から有名大学に入りやすい高額の私立高校に入れる。標準テストのスコアを上げるために家庭教師をつける。幼い頃から習い事を沢山させ、高額のレッスンを受けさせる。書類で印象的になる「社会奉仕」の体験をさせるために、何十万円から何百万円も払ってカリブ海の島で「奉仕活動」とは名ばかりのバケーションに行かせる。

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アメリカはいつも夢見ている

渡辺由佳里

「アメリカンドリーム」という言葉、最近聞かなくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。本連載では、アメリカ在住で幅広い分野で活動されている渡辺由佳里さんが、そんなアメリカンドリームが現在どんなかたちで実現しているのか、を始めとした...もっと読む

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コメント

Girion_stray 子供のためなのか自分のためなのか判然としない。子供が不正を知ってたならともかく、知らなかったなら。 8ヶ月前 replyretweetfavorite

consaba 渡辺由佳里「これは、「学業優秀な者だけでなく、多様な人材を受け入れる」という大学のシステムを逆手に取ったものであり、現代 8ヶ月前 replyretweetfavorite

band_ou38b *お金で入学した子どもたちは本当に幸せなのか。。。… https://t.co/Q06yFx7ngj 8ヶ月前 replyretweetfavorite

shoulang 他人は騙せても自分は騙せないですからね @YukariWatanabe | 8ヶ月前 replyretweetfavorite