他人に序章を語ってもらう
私の周りには私の代わりに包帯パンツのことを語ってくれる〝語り部〞が、たくさんいます。
もちろん、私から語り部になってくださいと頼んだわけではありません。
2007年 11 月に包帯パンツを発売してから 10 年以上、私はその間、いろいろな人に包帯パンツを勧め、包帯パンツが生み出されるまでの苦労話やストーリーを語ってきました。
それを聞き、包帯パンツを気に入ってくれた人たちの一部が、進んで語り部になってくれているのです。
ただ、語り部たちは包帯パンツを一から十まで解説するわけではありません。
彼らが語ってくれるのは、壮大な包帯パンツ物語の〝序章〞です。
「 1 回穿いたらやみつきになるよ」
「すごい技術で作っているらしいよ」
「ロバート・デ・ニーロも穿いているらしいよ」
それを聞いた人たちはがぜん興味が湧き、今度は直接私に聞いてきます。
「なんで包帯にしたんですか?」
「どうやって開発したんですか?」
「そんな有名人と、どうしてつながったんですか?」
私が動かなくても、私の知らないところで、誰かが「包帯パンツ物語」の序章を語ってくれる。
続きが気になる人は、さらに包帯パンツのことを知りたくなる。そんな好循環が、うれしいことにできています。
これは他人に語ってもらうから効果があるのです。
もし私が、誰にも聞かれていないのに「包帯パンツ物語」を突然語りだしても、ただの自慢話に聞こえてしまう可能性が高い。
だからこそ、自分以外の人に語ってもらうのが大事なのです。
5年続けて「尖る」べし
ビジネスの世界ではよく「名刺代わりになるようなものを持て」と言われます。
その人のことを強烈に印象づける、それ自体が独り歩きするような実績やエピソードのことですが、私に言わせれば、それは名刺というより「ネタ」。
包帯パンツというコンテンツは、私にとって大きな「ネタ」であり、「ネタ」の完成度が高いほど、その〝序章〞は当事者のいないところで独り歩きしていくものです。
「『いとしのエリー』って曲知ってる?」
「あー、知ってる知ってる」
という会話がいざはじまれば、(当たり前ですが)サザン・オールスターズに面識のない人や、そもそもサザン・オールスターズのことをよく知らない人も盛り上がれる。
「独り歩きしてくれるもの=『いとしのエリー』というヒット曲(コンテンツ)」をいかに作り上げていくか。それはビジネスをひろげるうえで、とても大切なことです。
私が幸せだったのは、包帯パンツという唯一無二の強力なコンテンツを持つことができ、そこに独り歩きするに足るネタがいっぱいあったことでしょう。
読者の皆さんの中には「俺は普通のサラリーマンだから、独り歩きさせるほどのネタなんか持ってないよ」という方もいらっしゃるかもしれません。
でも、ネタはいくらでもあります。
ちょっと興味があること、仕事とはまったく関係のないことで、ちょっとだけ得意なことを、まずは 5 年続けてみてください。
たとえば私はドラムが好きで、毎日自宅や会社でパッドを叩いていますし、土日はスタジオで最低でも 4 時間は叩きます。
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