女と男と犬とSM

人畜無害の地味な私が、SMの女王様になるまで

SM女王様の知られざる苦労から、育児で使える「エス技」まで、笑いと共にお届けしてきたこの連載が待望の単行本化!『女王様とわたし、ときどき犬』(光文社)として、3月19日に発売されます。出版を記念して、ダリア女王様のコラムを特別公開します。

私は人畜無害な地味キャラです

 第1話でロングヘアの黒髪をなびかせて登場し、安彦さんに「『女王様』っつーよりも『お嬢様』がやって来た~~!!」と驚かれてしまった私、貴崎ダリア。


「まさかこんな清楚な女性が!?『ダリア女王様、ご登場!』」より

 とても柔和で可愛らしく描いてくださっていますが、実際にはそこらへんを歩いていたら、どんな田舎でも観光客に道を聞かれたりカメラのシャッターを頼まれたりする人畜無害な地味キャラです。

 そんなことを言うと、読者の方に「またまたぁ。でもボンデージを着て女王様をやっていたんでしょ?」と、突っ込みを入れられてしまいそうですが、筋トレで体を搾って派手めのメイクをほどこせば、見た目は誰だって女王に変身することができるのです。もちろんお仕事としてやっていくためにはM男性を従えさせなければなりませんから、喋り方や仕草、プレイ中の立ち振る舞いなどを勉強して身につけていくわけですが……。


「そんな面倒なことを!?『女王様の知られざる苦労』」より

意地悪な人たちの餌食になっていた

 そもそも私は幼少期から大人しく人前に出るのが苦手で、学校でも目立ったことはない静かな子供でした。仲がよい男の子をやり込めてしまうような女王の片鱗を感じさせるエピソードは稀にあったものの、声も小さく、基本的には限られた友人たちと静かに日々過ごすようなタイプでした。顔立ちについても、誰もが口を揃えて「大人しそう」「優しそう」「穏やかそう」「怒らなさそう」というほど。そのイメージは今でもほとんど変わりないと思います。

 しかし、私のような穏やかそうな人に対して嗜虐心が駆られてしまい、ついつい意地悪なことを言ってしまう人は必ずいます。そういう人は相手が反撃しないと踏んで失礼な態度を取ってきます。当然いい気分はしませんが、相手はそもそもこちらが嫌がるということすら想像していない場合が多く、嫌だという雰囲気を醸し出すと途端に「そういうつもりはなかったのに」と困って見せたり、場合によっては怒りだしたりも。

 私は女王になるまでこういう人種の格好の餌食になっていたと思います。当たり前ですが、とても不快でした。相手の無作法に晒されると途端にシャットアウトしたり、明らかな不快感を顔で出したりして対処するようにしていましたが、何度も何度もそういう失礼な人間に出くわすと「おそらく私がそうさせているのだろう」という気分になります。相手だって、想定外の反応をされて困惑することが多々。これはいけないと思い、何か自分を変えるきっかけを探そうと思いだすようになりました。

女王様たちは私の憧れの存在

 だからと言って普通は、SMクラブの女王になろうとは思わないかもしれませんが、もともと私はSMの世界に憧れを持っていました。山本直樹さんの漫画『夕方のおともだち』や、藤森直子さんの自叙伝『ファッキンブルーフィルム』を愛読し、20歳を過ぎてからはSMバーやSM系のハプニングバー、フェティッシュバーに遊びに出かけていました。劇中やリアルの女王様たちはまさに憧れの存在で、自分の創り上げた世界の中で頂点に君臨し、優しくも厳しく性嗜好の迷子となった男性たちに一筋の光を与えていました。いつか私もそんな女性になりたい……という願いが、自分を変えたいときっかけを後押ししたように思います。

 SMクラブに勤務する女王になって自分の中にプロ意識が目覚めた頃、もう誰からも穏やかな見た目ゆえに見くびられるということがほとんどなくなりました。仕事をしていない普段のメイクや服装は多少変わった程度。おそらく知らず知らずのうちについた自信や、女王業で身についた喋り方や立振る舞いが相手にほど良い緊張感を与えるようになったのでしょう。


「まさかこんな清楚な女性が!?『ダリア女王様、ご登場!』」より

 自分という見えない殻に閉じこもっていた私をこういう形で解放できたことは、人生で大きな学びとなりました。もし、他人からの態度を変えたいと思っている方がいたら、思い切って女王様になってみることをおすすめします。

次回「犬を飼ってみたら分かった、M男性の“お口ぺろぺろ”の謎」は3/22(金)公開予定。


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女王様とわたし、ときどき犬

安彦麻理絵feat.貴崎ダリア
光文社
2019-03-19

この連載について

初回を読む
女と男と犬とSM

安彦麻理絵

女の生態や本音を赤裸々に描く人気漫画家・安彦麻理絵さんが、「女王様」の生態に迫ります!女王様の知られざる苦労から、育児で使える「エス技」まで、笑いと共にお届けするコミックエッセイ

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