8つのオフィスを駆使して創造する新しい社会のかたち

医療分野でのビッグデータ活用を進める慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授、宮田裕章さん。宮田さんが目指すのは、単なる医療の質・効率の改善にとどまりません。21世紀の石油となった”データ”で、世界はどう変わるのか?宮田さんの挑戦を、前中後編に分けてお送りします。前編はこちらからどうぞ。

データが創出する新産業

宮田さんの研究と実践は、産学連携のかたちをとることも多い。人生100年時代と言われる超高齢社会が到来し、少子化も同時に進行する中では健康に対する価値も変えていく必要がある。

「もちろん、病気にならないこと、病気を治すことが必須であることには変わりありません。その一方で、“魅力的な生き方を追求する中で、自然と健康になる”ということや“格差や病気があってもそれを人生の障害と意識しない”という価値を実現することも重要です」

と宮田さんは言う、それでは新しい健康とはなんだろうか。

ポケモンとNianticが提供する「ポケモンGO」では、ポケモンを集める行為を通して、外にでる習慣を身につけることができた利用者が多く報告されている。2社との共同研究では科学的アプローチによってデータを活用する中で、活動量の維持や社会的なつながりの獲得など、楽しさと健康のサポートを両立させるチャレンジを行っているとのこと。

「健康に対する貢献を通じて利益を得るポケモンGOの方針は、データ駆動型社会における新産業を創出する上で重要な要素です。産学連携の価値共創のなかで、手段としての健康を手に入れ、人生をより豊かにしていくという視点が重要になってくると思います」

宮田さんは大阪万博の基本構想委員も務めたが、万博と連動して開発が進められている、大阪駅北口にある梅北(うめきた)のまちづくりにも企業と一緒に取り組んでいる。うめきたは万博の1年前である2024年の開業を目指し、三菱地所や阪急電鉄、大林組の企業連合が取り組むプロジェクトである。その中核コンセプトの1つが先述した新しい健康の価値の創出、“ライフデザインイノベーション”である。

このコンセプトを基に、金沢21世紀美術館を設計した建築家ユニット「SANAA」とランドスケープアーキテクト集団であるGustafson Guthrie Nicholが描いたデザインが、ビル1棟を一つの石に見立てて枯山水を表現するというものだった。

「例えば、京都にある龍安寺の石庭では全ての石の内、どこから見ても必ず1個の石が見えない構図になっています。つまり、どの見方も正解であり正解ではない。何か1つのグランドビューを正解とする都市景観ではなく、多様な価値観が前提とされているのです。人々の多様な生き方があり、自然がもたらす四季の変化があり、その中で様々な価値が生み出されることが意図されています。そうした場を作ろうということが梅北の基本デザインとなっているのです。これからの社会では、ライフスタイルや都市空間、データという新しい資源を連動させながら、新しい価値を共創することが重要になるでしょう」

8つのオフィスを駆使して「新しい価値」を創造する
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
営むひと〜経営者の肖像〜

山内宏泰

よりよい社会を実現するために、人や情報やモノやお金を動かしていく起業家や経営者たち。彼ら彼女たちはどんな世の中を、どうやってつくろうとしているのか。若き起業家や経営者たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

iyakunews_com 【臨床ビッグデータ】 7日前 replyretweetfavorite