先週に引き続き、センスとは何かを考えていきたいと思います。持って生まれたもの? それとも後天的に作られていくもの? 言葉だけだとわかりにくいのでイラストも描いて説明してみました。
生きながら積み上げていくもの
前回も書いた通り、センスの欠片はきっと誰しもが抱えて生まれてきたはず。DNAのどこかに刷り込まれているのだろう。ただその方向性を決めセンスを膨らませていくのは、私たちが積み上げていく人生に他ならないと考えている。
私たちは日々を暮らしながら毎日少しずつの成長をしていく。20歳くらいまでは紛れも無い身体的な成長をするが、その先が成長なのか老化と捉えるのかは人によって様々だろう。42歳の私としては、今も尚成長していると言い切りたい。人生が80年と考えたとして、20歳までが成長期だとするならば、残りの人生の3/4が老いる人生となる。老いは人としての成長でありたいし、ただ疲弊して退化していくものでないのだ。シワは劣化ではなく年輪であり、人としてどういう人生を歩んだかの軌跡だと信じたい。
私たちの歩いてきた道を振り返ると、歳を重ねながら様々な経験を積み、たくさんの知識や経験を山積していく。読んだ本、旅をして見た景色、人との会話、リサーチ、買った物、使った物、勉強、行った場所…。私たちは毎日何かを積み上げて生きている。その中で何かを抽出して、自己表現に至る。それこそがセンスの正体なのではないかと最近よく考えている。
センスの正体
例えば、24歳の女性が二人いる。二人は自然素材を好み、ナチュラルテイストな服が好きなことが共通事項である。仮にAさんとBさんとしよう。Aさんは、インスタグラムでファッション系アカウントをフォローして、欲しい服があるとメルカリで探して買う。Bさんはファッション雑誌やインターネットで様々な着こなしを見て、気に入った服があるとブランドWEBサイトでコンセプトを読み込み、その店に通って試着して服を買うことにしている。
AさんとBさんは、外部から見るとナチュラルテイストな着こなしをしていて、見た目の印象はそこまで変わらない。二人とも友人にセンスがよいと言われたり、お洒落だねという評価を外部から受けている。二人はおしゃれに関しての情報や経験を下の図のように積み上げていく。到達するファッションは似たようなものだとしてもそれまでの軌跡が異なることが図からわかるだろう。
二人はやがて歳をとる。二人の違いはどうやってできていくのだろうか。Aさんは見た目を整える「お洒落をする」ということが主目的で、安く買うことや、同じような服装を好む人と他ブランドの情報交換をして、よりお洒落に見える方向へ舵を切っていった。
片やBさんは当初こそ「お洒落をする」ということが目的だったが、リサーチを重ねた結果、好きなブランドが環境保護をコンセプトにしていることを知り共感した。お店に実際に来店してブランドを応援する気持ちで投資行動として衣服を購入し、店員と懇意になっていく。結果的にそのブランドに集まる人のコミュニティを紹介され、様々な人と出会うことになり、対話を重ね自身の生活を見つめなおした。買い物をする時は、商品を販売する会社のコンセプトを調べて購買行動をとり、よい消費を心がけた。
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