手をつなぎ、ハグもしたのに……
SNSで知り合った男性に片想い中です。きっかけはフィード購読です。趣味のページからたどっていき、おもしろい投稿が多かったのでフォローしました。そこから、「いいね!」やコメントのやり取りがはじまり、メッセンジャーで連絡を取り合って、会うことになりました。
これまで2回ほど会いまして、普通に食事をして、手をつないで歩いたり、軽くハグをしたりしました。そして、またこれまで通り連絡を取り合って、会おうとしても、「都合がついたら連絡するよ」と言われてそのままです。それから早1か月が過ぎましたが、連絡はなしのつぶてです。
私は恋愛経験が豊富ではなく、彼の本心がよくわからず困惑しています。せめて会って話をして、ダメならダメと確かめたいです。どうしたらいいでしょうか。そして、ネットからはじまる恋についてどう思いますか?
(34歳・ゆりあ)
便利だけど〝取扱注意〟なネット経由の出会い
ゆりあさんと彼の状況は、2回目のデートを境に急変しています。前半は、「SNSで交流が生まれる→リアルで会う→手をつなぐ&軽いハグ」と、いい感じです。共通の趣味があり、投稿のセンスにも惹かれている。そんな相手と順調に関係が進展したわけで、気持ちが高まるのも無理はありません。
しかし2回目のデート以降、突然彼の反応が鈍くなってしまいます。誘ってもはぐらかされ、そこから1か月以上も音信不通になっている。この急変の理由がわからず、ゆりあさんは混乱しているのだと思われます。最初は好感触だっただけに、「自分に何か問題があったのでは!?」といった不安に苛まれている部分もあるかもしれません。なぜ、ゆりあさんはこのような苦しい状況に陥ってしまったのでしょうか。
出会いという観点で見れば、例えばSNSは相手の情報(外見・プロフィール・趣味・交流関係など)を簡単に入手できる便利なツールです。またマッチングアプリにしても、物件やグルメ情報のように条件を絞り込んで検索をかけることができ、希望に当てはまる相手を簡単に探せるため、出会いのツールとして極めて便利です。さらに、SNSにしてもマッチングアプリにしても、アカウント同士がつながれば相手と直接やり取りできるため、多くの場合、アポが成立するといきなり一対一で会うことになります。
つまり、こういったツールを使えば、あらかじめ希望のラインをクリアしている相手といきなりデートすることが可能になるわけです。このように、ムダなく手っ取り早く希望の相手と出会えるのが、SNSやマッチングアプリの特長です。
しかし、これらのツールには〝取扱注意〟の部分もあります。よく考えると、いきなり一対一で会うというのはかなり特異な状況です。友だち未満からはじまる一般的な出会いと比較してみると、その特異さが際立ちます。
例えば会社や学校で気になる人ができた場合、まずは同僚やクラスメートといった枠組みの中で関係を深める努力をすることになります。相手は自分をどう思っているか、相手に恋人はいないか、自然な誘い方はないものか……など、いろんなことを慎重に探りながら距離を詰め、どこかのタイミングで勇気を出してデートに誘ってみる。それでOKをもらえてようやく一対一の関係(以後〝デート関係〟と呼びます)がはじまるわけです。
ネット経由の出会いは、こういったプロセスをすっ飛ばし、いきなりデート関係からはじまります。前述したように、この圧倒的な速度が特長なのですが、それによってある種の〝錯覚〟が起こりやすくなり、かえって恋愛を難しくする側面もあります。
「すでにデート関係〝まで〟進展している」という錯覚
ネット経由の出会いがショートカットするプロセスを簡単にまとめると、以下の(1)~(5)のようになります。
(1)出会う
(2)相手を知り、自分を知ってもらう
(3)相手に恋愛する意思があるか推し測る
(4)リスクを冒して誘ってみる
(5)OKが出る
↓
(6)デート関係になる
これが一般的な出会いだったら、(6)に進む頃にはふたりの仲もそれなりに縮まっているはずです。時間と労力をかけて各ステージをクリアしてきたわけで、「ようやくデート関係までたどり着いた!」という手応えも感じられるかもしれません。
一方、ネット経由の出会いはいきなり(6)からはじまります。もちろんオンライン上で(1)から(5)のステップを踏んでいるわけですが、そこはかなり簡略化されています (特にマッチングアプリでは(3)の恋愛する意思がある前提での出会いなので、フィーリングさえ合えば話が極めて早く進みます) 。先に〝錯覚〟と書いたのは、このようなネット経由の出会いと一般的な出会いとのギャップによって生まれる錯覚のことです。つまり、ネット経由の出会いは単にデート関係〝から〟はじまるというだけに過ぎないのに、認識としては一般的な出会いのモデルで捉えてしまい、すでにデート関係〝まで〟進展していると錯覚してしまう──。これが取扱注意の理由です。
話をゆりあさんの一件に戻すと、今回の相談文だけでは、彼との間にどのようなコミュニケーションがあったかは読み取れません。手をつなぎ、ハグもされたのですから、親密な雰囲気は出ていたのだと思います。しかし、実態としては「ネットで知り合い、食事に2回行った関係」です。これを「2回も会った」と捉えるか「2回しか会ってない」と捉えるかは人それぞれの感覚に依るところも大きいかと思いますが、我々の考えは後者寄りです。
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