230億の男が一般投資家向けに語ったこと

トレードで230億円の資産を築き「一人の力で日経平均を動かす男」との異名を持つまでに至った個人投資家cisさん。この連載では『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(通称cis本)の12万部突破を記念し2月17日に八重洲ブックセンターで行われた「cisトーク」とその後の取材内容を再構成してお伝えします。最終回となる今回は、主に一般投資家向けに語ったことをまとめています。(構成・平松梨沙)

兼業の強み、専業の強み

会場 ぼくは兼業の投資家なんですが、同じように兼業の人たちは、なかなか場中に市場を見れないと思います。cisさんは会社員をしながらトレードをやるようになって、6000万円貯めたところで会社をやめたわけですよね。当時はデイトレード(1日)とスイングトレード(数日~数週間)、どちらだったんでしょうか?

cis デイトレ…に近い形でやりたかったんですけど、実際には取引先に行っていて見られないときも多くて、強制的にスイングになっていましたね。新興株がチャートどおりに買われる時期だったので、怪しくなったらすぐに全株逃げたかったんですけど……仕事してるとそうもいかなくてつらかったので、やめざるを得なくなった。下がってから反発することもまれにはあるんですけど。やっぱり兼業のときより専業になってからのほうがパフォーマンスは良くなっています。

記者 この本の読者の方も、イベントに来ている方も、なかなか前場だけですら張りつくことができないと思います。そういう方へのアドバイスはありますか?

cis 難しいですよね。夜などに勉強できるのであれば、指数組み入れにあわせて株を持っておいて引けで抜けるとか、上がり過ぎている銘柄があったら引け成りで空売りするとか……。
 でも兼業ということは、仕事の収入があるわけですよね。そのぶんリスクがとれるんだし、何か個別株にぶっこんで、しばらく放置もいいんじゃないでしょうかね。なるべく値動きが荒い株値を買ってもいいし。もちろん、その株が上がるか下がるかは、ぼくは何にも保証できないんですけど。

担当 cisさんの兼業初期もそうしたスタイルだったんでしょうか?

cis ぼくはなるべく割安の株を探してそれに投資しようと考えたんですけど、それはうまくいかなかったですね。10〜20年スパンでは、あるべき価値が認められて価格が上がる可能性が高いと思いますけど、60歳のときに3〜5倍になっていても意味ないなと。
 それでオフ会で勝ってる投資家の話を聞いて「需給のバランスで上がっていく株に乗って、戦って勝つしかないんだ」と気づいて。それでスタイルを変えました。
 でもずっと見ているぼくでも、勝ったり負けたりする世界なので、効率良い方法はないと思いますよ。先にも言ったとおり、関係ない材料で実体より下げている株というのはあるので「◯◯ショック」にあわせて買うのはいいと思いますけどね。

相場のマイルールを設定しない理由

会場 ご自身が相場で「やらない」と決めているマイルールはありますか? あるいは何%下がったら売り、みたいなものは。

cis ルールもないですし、やらないと決めていることはないですね。相場に対して足枷になるようなルールは、作らないほうがいいと思います。カーッとなったり落ち込んだりして思考ができなくなるようなタイプなんだと思っているなら、それをトリガーにしたルールを作るといいのかもしれませんけど。
 普通に考えたら、ないほうがいいですよね。その人の都合と相場の値動きは、別に関係ないわけですから。
 ただ、人生のバブルライン(ポーカーにおいて、賞金がもらえるかゼロになるかの境目)ってあるじゃないですか。ぼくが今200億円持っていて、それが400億円になってもそんなに人生変わらないんですが、200億円負けて1億円を切ったら相当つらい。なのでぼくに関しては、人生において、稼いだときの選択肢の広がりと、失ったときの選択肢の狭まりのバランスを見て、今は昔よりもリスクをとらないようにはなっていますね。
 値動きが大きいやつであれば、自分のリスク許容度までしか買わない、というような投入資金量でのリスク管理をいまはしています。
 まあ、そのラインは人によるんで。たとえばB・N・Fは資産200億円くらいのときに外国株200億円くらい張ってたんで、「こいつには勝てねえな」と思いました。サブプライムローン問題のどまんなかの時期だったし。

担当 リスク判断の問題を抜きにしたら、cisさんは勝てると思ったらなんでもやるということですよね。

cis いやもう勝つか負けるかはギリギリで、あんまり今後勝てるとも思ってないです。ただそれでも、お金でお金を生み出すというのは、あくまでぼくにとっては一番ラクなことではあるんですけど……仕事としては、最高難易度のものの一つだと思います。

一般の人は公募増資が狙い目?

会場 cisさんは2019年現在の相場をどう考えていますか?

cis 本当にどうなってんの?って感じですよね。アメリカは最強で、日本はグダグダで、すごく難しい踊り場だと思います。ダウだけ見ると上昇トレンド復活のようにも見えますけど、ドル円と日経はあれだけ下げといてそんなに簡単に復活するかなと、ちょっと疑ってます。とはいえ下げたら倍返しするので、これはインフレ来るんじゃないかな…とも思ったりするし。本当にわからないです。
 ただこれからは、「経済力×暴力=時価総額」みたいに考えたほうがいいのかなと、思ったりもします。つまり、アメリカ企業はなかなか外国からカツアゲされないですけど、日本企業はカツアゲされるようなことがあるので、それで弱くなっていくというのもあるかもしれない。いま仮想通貨が暴落してグラフィックボードの在庫がだぶつき過ぎてるんで、直近の決算は半導体系は悪く出るんじゃないかな…とぼくは思ってますが、それを乗りこえてバブルが来ることもあるだろうし。もう全部わからないですね。

担当 cisさんはすっぱり「わかんない」と言うところが本物ですよね。

cis 直近で注目しているのは、メガバンクですね。特に何もないのにメガバンクの株価が下がっているところを見ると、これから良くないことが起きるのかなと。もしかしたらトランプさんにやられたり、マネーロンダリングで国際業務停止しろと言われたりするようなことも起きるのかなと。そしてそれらを外国人投資家が警戒して、日本の銀行のポジションを減らしている気がします。ただの推測ですけど。

担当 相場について日々考え、変化していく環境に適応して、いろいろなことを瞬時に判断できるというのは、誰にでもある適性じゃないですよね。期待値について考える発想もそうですけど、長時間モニターを見て打ち込むこと一つとっても、かなりの才能だと思うんですが。

cis 実は「目が疲れないように画面を見る力」というのは、結構大事なのかなと思っています。小学生ぐらいの頃はぼくも、ファミコンを5時間ぐらいやると頭痛くなってきたんですけど、今は24時間ゲームやっていても全然大丈夫なんです。何だろう……見ているんだけど見てない、みたいな。プロゲーマーの梅原大吾さんと話したときも「今は疲れないっす」と言ってました。先天的に持ってるものなのか後天的に鍛えられるかはわからないんですが。

記者 cisさんの才能ありきの手法だというのはその通りで、一般の人が真似するのは難しいとは思うんですが、それでも「これは」という手法があったら教えていただけますか。

cis うーん。超大型株の公募増資(PO)……数千億円規模の公募増資があったら、とりあえず目をつぶって申し込んでみて、それで売れるようになったその日の引けで売るのはありだと思います。数千億規模の募集だったら、多少は当たるはずなので。期間も短くて済むし、そうそう損はしないはずです。

記者 増資があった次の日は上がるってことですか?

cis 公募増資というのは値決めのあとに入金・株券受け渡しがあって、それを市場で売っていい「還流日」があるんですね。還流日の引けには、増加した投資口に関する浮動株指数の組み入れが行われるので、その関係でなかなか株価が下がらないんです。利回りはたぶん平均すれば2%くらいでしょうけど、この低金利時代には悪くない話だと思いますね。ショボい話ではあるんですけど、確実性は85%くらいかな。

15億円を越えてからは生活の実感に変化はない

記者 こうやってお話してても、期待値とか利回りとかがすらすら出てくるのが、さすがだなと思います。勝負ごと以外でも、裏側のロジックをあれこれ考えてるんですか?

cis ゲームと相場以外については不得意なんで、考えるのをあきらめています。もう、お金を払ってサービスを受けるだけ。資産が増えて、買い物をするときに高いか安いかとかをあまり考えずに済むようになったのは、かなり気楽です。

記者 「お金を持ってるな」という実感が生まれてきたのはいつ頃ですか?

cis 生活面にしても精神的なものにしても、15億円過ぎてからは、そこからの実感はあんまり変わっていないですね。2億後半ぐらいから28億まで増えたのが1年くらいで、それからは十年以上かけて増えてきたので。
 数字と安定度が増していってるなと感じますけど、それで人生で何ができるとか、これができるようになったなという感覚はあんまりないです。毎日相場をやって、明日や来週どうしようかというのを考えるのに精一杯で、そういう面では正直あんまり余裕がないです。

記者 cisさんくらいの方になると、投資以外のうまい話を持ってくる人も多いんじゃないですか?

cis 「つぶやいてくれたら100万円」とか、詐欺の片棒を担がされるんだろうな……という話はものすごく多いですね。
 でもぼくは、相場以外で利益を上げることを完全に放棄しているので、すべて「勘弁してください」で断ってます。おいしい話があっても、どこかでだまされると思うので。今回の本の刊行にあたっても、「印税はいらないです」と言ってますし。そこで儲けたいと思わないですし、税金の計算も面倒くさいし。

記者 トレードに取り組む仲間同士でも、順調に資産を増やしてる人と、退場してしまった人と、いろいろいるわけですよね。cisさん自身はここまでずっと自分の平常心を保ち続けているように思いますが、お金と人間関係の上で気をつけていることはありますか?

cis たまに新しい友だちも増えますけど、大半の人とは10〜20年レベルの付き合いなので、変わらないように思います。あんまり羽振りのいい人に近づきすぎないというのはあるかな。
 そしてぼくは相場とゲーム以外は人よりてんでダメなので、どんな人に対しても素で敬意の念が生まれてしまう。そのおかげか、人間関係がすごく悪くなるということはないです。
 たとえば証券会社の人が家に来るときは、たいがいぼくから手数料とろうとするんですけど「ぼくが就活していたころ、この証券会社には超いい大学のやつしか入れなかったよな、そんな優秀な人だなんてほんとすごいな」と思ってしまうというか。

福地 優秀な人があくせく働いているのを見て「いじめてやろう」とは思いませんか?

cis その発想、全然なかったですね。こっちのほうが生物的に劣っているのに稼いじゃっててむしろすみません、くらいの気持ちです。

担当 そう言える人、普通いないですよ。cisさんと接していて本当にすごいと思うのは人間の器の大きさですね。お金を持っていること以上に。

cis まあ時代が良かったと。歴史をふりかえっても、2000年以降のこの時期だから、これだけ稼げてるんだと思います。この先、どんどんお金の分野で技術介入できるところが少なくなってきたら、こんなには稼げないでしょうね。生まれるのが50年遅かったら、同じ能力を持っていても、こうはいかなかったです。

資産2000万~3000万までが一番楽しかった

記者 cisさんがこんなに資産を築かれているのは本当にすごいことだと思うのですが、cisさん自身は、ご自身のどこが優れていると考えていますか?

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230億円稼いだ投資家があの日語ったこと

cis

投資で230億円の資産を築き、「一人の力で日経平均を動かす男」との異名を持つと言われるまでに至った男——それが・cis(しす)さんです。彼の投資哲学が綴られた書籍『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA)は、発売...もっと読む

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コメント

1_rexol83 本も読ませてもらいましたが、すごく信用できる内容。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

noatake1127 |cis|cakes(ケイクス) 5回ぐらい連載されたけど、今回が自分的には一番面白く思えたかなあ https://t.co/Sx4vCYTDKj 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

fukuchinko 読み直してみると、cisさんがすごくサービス精神があって、面白く話してくれてることに気づく。だから内容が面白い。  約2ヶ月前 replyretweetfavorite

mrmrjimmy 最終回なんか面白いですね。仕事中に一気に読んでしまったw 約2ヶ月前 replyretweetfavorite