230億の男、直近のトレードを振り返る

トレードで230億円の資産を築き「一人の力で日経平均を動かす男」との異名を持つと言われるまでに至った個人投資家cis(しす)さん。この連載では初の書籍『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(通称cis本)の刊行を記念し、2月17日に八重洲ブックセンターで行われた「cisトーク」の内容を再構成してお伝えします。今回の記事では直近のトレードについての話題をご紹介します。(構成・平松梨沙)

子会社のIPOにあわせて、親会社で勝負した理由

担当 すでに資産230億円を達成しているcisさんですが、現在も日々のトレードをツイートされ投資クラスタをわかせています。まずは最近のトレードのお話を聞かせてください。印象に残っているところですと、今回の本の発売の直前、2019年の12月19日ソフトバンクグループの通信子会社・ソフトバンク(銘柄コード:9434)のIPO(新規公開株)に関連した売買がありました。

cis はい、上場日に公募割れして終わったアレですね。

担当 cisさんは2018年12月……子会社のIPO直後に、親会社であるソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)を420万株購入されましたよね。結果6000万円の損切りとなりましたが、あの買いの意図はなんだったんでしょうか?

cis あれは、親会社が連れ安してたので、その戻りを狙ったんですよね。子会社が無事上場できてその株価も上がったほうがグループにとって良いのは確かなんですが、もう資金調達した額自体は変わらないし、公募割れも事前の予想であれこれ言われていたので、8~9割の市場参加者は予見して、織り込んでいたと考えたんです。実際にはあんなに弱いと思わずにちょっとパニック気味になっていた結果で親会社も下げていたと思ったので、だから「おいしいかな?」と思って参加しました。

担当 ピンチとチャンスは紙一重っていう話もありましたけれども、なかでも恐怖心による下げについては、勝負に行くと。

cis ぼくは基本的に市場の値動きには順張りで動くんですけど、材料での上げ下げには、逆張りすることが多いんです。今回は、子会社下がっても親会社に入る収益には関係ないはずなのに、安くなっているからすぐに戻るんじゃないか、そういう感覚ですね。結局、一瞬プラスになったけどすぐ含み損になってしまい、損切りしましたけど。……ところで、このかぶりもの、もう脱いでもいいですか?

担当 わかりました(笑)。こちらがcisさんです。(一同拍手)

cis これ高かったんですか? すぐ脱いじゃってすみません。

福地 ちょっといいですか。本の構成を務めた麻雀ライターの福地誠といいます。今回の『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』のなかで、ビットコインについての話題もあるんですが、そこでもcisさんは「実体は変わらないのにイメージによって値段がものすごく下がっているからチャンスだと思った」って話をされているんですよね。今のソフトバンクの話とまさに同じ発想だなと思って、興味深く聞きました。

会場 どの悪材料だったら逆張りで、どの悪材料だったらエントリーしないのか、その見極めはどのような感じでしているんでしょうか。

cis 企業の価値と直接関係ない理由で暴落している銘柄を買うのは結構好きですね。ぼく自体が一番逆張りするのは、海外要因。直近で言うと、「トランプさんが何か言った」みたいなので下げた株はすごくいいですね。あと……不謹慎な話なんですけど、北朝鮮の「ミサイル下げ」。朝飛んできて先物暴落しているな、でもこれミサイル下げだから買うか、みたいなのはよくあります。企業価値には本来ほとんど関係ない下げですから。
 ここ数年はイギリスのEUからの独立、「ブレグジット」による日本市場の混乱もありましたけど、正直イギリスが独立してもしなくても、ほとんどの日本企業の価値は変わらないと思います。あれで日経平均が1000円も落ちたのは本当に不思議でしたね。週末に海外要因の何かがあったときは狙います。月曜に大きい市場のなかで最初の開くのが日本なんですが、だいたい日本がパニックになって、それがアメリカで落ち着くことが多いんで。

担当 個別株の材料に関してはいかがですか?

cis ちょっと前だと東レで、子会社の小規模な不適切会計によって親会社が大きく下げていたのは買いで勝負しました。本体の企業規模に対し、本来数パーセントの影響もない範囲のことなのに、株価を下げている場合には戻りを狙うことがあります。
 逆に、悪材料で逆張りしないパターンは、アメリカでの売上が高い企業の不祥事ですね。たとえば、神戸製鋼のデータ改ざん。アメリカの裁判所が本気出すとすごい賠償金がくるので、素直に買わないようにしています。
 なので「関係ないのに雰囲気で下がっている」みたいなもので勝負することが多いですね。何とかショックが起こったとして、何とかショックが関係ないだろう株を買う、というような。たとえばソフトバンクのIPO不調による下げでほとんど関係ないはずのコンビニの株が大きく下がっていたとしたら、それを狙ったり、という形です。材料といっても証券会社のレポートは有象無象なのでほぼ無視しています。

誰もが呆然とする暴落に巻き込まれなかった守備

担当 次にサンバイオの取引についてです。再生細胞医薬品を開発するバイオベンチャーですが、この会社が新薬の承認を得られるのではないかということで、しばらくバブルにあったんですよね。しかし臨床試験が不調に終わったということで、株価がたったの5日間で1万2000円台から2400円台まで下落した。cisさんはサンバイオが暴落しているこの2月に38万株買い、その後戻したところで売却されています。

cis 朝一で36万株買って、寄り付いてから、株価がさらに上がり始めたので2万株買い足しました。それまで数日ストップ安が続いていたんですが、信用取引で買っていた個人投資家たちがもう投げざるを得ないというタイミングだったんですよね。

担当 証券会社からお金を借りて株を買う信用取引の場合、株の返済期限があるので、損しているタイミングでも株を売らないとならず、「投げ」が発生してしまう。そのタイミングだったと。

cis それが少なく見積もっても300万株ぐらいはあるだろうと言われていて。
 サンバイオの場合は売られている株がその時の株価で計算して、何百億円とあって、投機資金だけではまあまあなところで寄り付くのは難しく、下にオーバーシュートする(行き過ぎた変動をする)可能性が高いかな、ということで狙っていました。時価総額が中途半端に高いものには、デイトレ軍団たちの投機マネーが群がってくるんですが、すごいチャンスの状況でもだいたい80億円ぐらいで、なかなか100億までは行かなくて。
 需給の状態と時価総額がちょうどよくなったと思ったタイミングで買ったんですが、その後大きく上がった後また下がって、売るタイミングが遅れて、利益はだいぶ減らしてしまいましたね。

担当 cisさんは、サンバイオのバブルの最中にもエントリーされて、その後抜けていたんですよね?

cis 株価が6000円くらいのときに買っていました。そのときは治験が成功して、ストップ高が数日続いてから、寄りついたんです。そこを天井として5000円台まで下がっていったんですけど、利食い売りをこなしてまた上がっていくのを見て、これは相当上値があるんじゃないかな? と思って買っていました。ただ、治験が成功する可能性とか、未来の売上とかバイオ関連については詳しく調べている人がたくさんいるじゃないですか。ぼくが彼らを出し抜くのは難しいかなと思い、1万円いってからの9000円台で売ってしまいましたね。9800円とかでも買い増ししていたので、平均単価で考えると、そんなに利益は出ていません。
 あと、バイオ株って決算にあわせて増資をすることが多くて。

担当 増資すると、1株の価値が希薄化して、株価が下がりやすい傾向にありますね。

cis なので、決算またぎはしたくないと思って警戒していて、より早く逃げられたのはあるかもしれません。暴落の影響を受けなかったのはたまたまなんですけど、暴落を食らう可能性があったかというと、ぼくの守備寄りのスタイルではやっぱり低かったんじゃないかと思います。

担当 サンバイオについては、cisさんの周りでも損した人たちが多かったと聞いたんですが…。

cis けっこうやられていましたね。友人にも、1億2000万円の資産が4980万円の借金になったという人はいます。「こんなことあるのか」と呆然としていたので、彼が持っていた冷凍餃子を買ってあげたり、ご飯をおごってあげたりはしていますけど……。友人だからといって相場で使うお金を渡したりは絶対にしないですね。本当にキリがないんで。

「TOBされるかも」という仮説を持った理由

担当 最後に聞きたいのが、カブドットコム証券。TOBを狙って買い込み、大株主になっていたら、この1月にKDDIによるTOBが決定し、決定直後からは200円ほど株価が上がったと。これは相当前から仕込んでいたわけですよね?

cis 1年近くは持ってましたね。でも、自分では3~5年くらいはかかる勝負だと思ってたんです。しかもぼくが予想していたのは、親会社の三菱UFJファイナンシャルグループによるTOBですから。それが結局KDDIだったので、正直運が良かっただけというか。

担当 ぼくはこの本を編集しながら、cisさんは「仮説で勝負」で利益を出してきた人、人の何手も先を読んで勝ってきた人だと強く思ったんですが(第2章「相場は仮説を生み出した人が勝つ」)、なぜ三菱がTOBするという仮説を立てたんですか。

cis まずある程度、安定的に黒字が出ていてキャッシュがいっぱいある親企業だったということがあります。あとは、子会社の社長や経営陣と親会社があんまり仲良くないとTOBされる傾向にあるんです。カブドットコムの社長は、三菱系列じゃないネット証券系から来た社長なんて、三菱グループとはそんなに仲が良くないんじゃないかなと考えていました。それが買った理由の一つ。
 もう一つ、TOBとは別で、2018年前半は、マネックス証券が仮想通貨事業に参入するというので、時価総額をすごく上げていたんですね。カブドットコムも経営体力はあるので、参入するんじゃないかなと予想してました。今となってはもう仮想通貨事業はお荷物なんですけど、当時に関してはこの2つのどちらかの狙いが当たればいいなと思って、購入しました。

担当 今回の発表が出なかったら、どうしていましたか?

cis 大きく下げないかぎりは持ち続けていようと思っていました。大株主が株を売ると売却コストが数パーセントかかるのでそれだけで損をしますし。また、カブドットコムは社員持株会による継続買があるみたいで、そうそう大きく下がることはないだろうと思っていました。なのでリスクはそれほどなくて、うまくいけばオイシイという感じの勝負でしたね。

トレードの難しさは関連指標の多さで決まる

担当 cisさんは最近FXについてもツイートされてますよね。

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230億円稼いだ投資家があの日語ったこと

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投資で230億円の資産を築き、「一人の力で日経平均を動かす男」との異名を持つと言われるまでに至った男——それが・cis(しす)さんです。彼の投資哲学が綴られた書籍『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA)は、発売...もっと読む

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コメント

arayashiki_b …なかなか勉強になる。 9ヶ月前 replyretweetfavorite

kadokawa_nf 「値動きは順張り、材料は逆張り」が多いというcisさんは、どんな材料では逆張りを狙うのか。また、サンバイオやカブドットコムではどのような仮説があったのかという、直近のトレードの話はこちらです→ 9ヶ月前 replyretweetfavorite

noatake1127 |230億円稼いだ投資家があの日語ったこと|cis|cakes(ケイクス) 3/16に公開されてるやつ https://t.co/RkMfo3ZHgr 9ヶ月前 replyretweetfavorite

marble145 これ、面白いなあ。株が生き物である事がよく分かる。あらゆる要素が社会を動かす動機になってるんだなあと。 9ヶ月前 replyretweetfavorite