自由でいられるなら、会社は辞めないほうが得

広告会社でモノづくりをするという異色のプロジェクトを実現した博報堂・小野直紀さんの著書『会社を使い倒せ!』。発売を記念して銀座 蔦屋書店にて行われたトークイベントの模様をcakesにて公開します。
ゲストにお迎えしたのは、会社員でありながら、オンラインサロン運営、メディア出演など会社の枠に収まりきらない活躍をされている幻冬舎編集者の箕輪厚介さん。小野さんと箕輪さん、それぞれの「会社の使い倒し方」について縦横無尽に語っていただきました。cakesにて公開中の本編とあわせてどうぞ!
(司会:ブックライター 上阪徹)

会社には圧倒的なインフラがある

—今回『会社を使い倒せ!』というタイトルの本を小野さんが出されたんですが、実は箕輪さんも、文字通り会社を使い倒されているように思います。しかも、外で大きく稼いでいても会社を辞めない、お金を払ってでも会社にいたいという話を著書でもされていて。会社を使い倒せというメッセージについて、どう思われますか。


当日、YouTubeの番組収録、デビュー曲(!)のレコーディング等を終えて会場入りした箕輪厚介さん

箕輪厚介(以下、箕輪) 今日も民放キー局の2年目かなんかの人から、作りたい番組が作れないから辞めたいって相談をされたんですけど、それはやっぱバカでしょって言ったんです。博報堂もそうですけど、幻冬舎もテレビ局も、圧倒的なインフラなんです。個人がポツンっていたときには、絶対持てないくらいの、社会に対する影響力がある。変にかっこつけて、個人でやるぜっていうより、自分の実力があるのならば、ある意味でそこを利用してしまったほうが、絶対いいと思っていて。
僕の場合、半年くらい前はやっぱり本出すのが好きで……好き、でもないかな?(笑)

会場 (笑)

箕輪 本作るのが仕事で、自分の能力としては一番活かせると思ってたんで。でも僕が編集したら売れるというのが事実だったとしても、やっぱり会社にいるからこそだと思うんですよ。僕が幻冬舎辞めて、幻冬舎に持ち込んだり、集英社に持ち込んだり、講談社に持ち込んだりしてやっても、なんか出入り業者みたいになっちゃう。優秀な人と組んでも、やっぱり他社の人は他社の人っていうかんじなんですよ。
データもこと細かに見れないし、幻冬舎の中で会議とかに出るわけでもない。やっぱり社員でおんなじ船に乗ってるからっていうので、営業部も宣伝部も全部協力してくれるっていうのがあるから。自由になれないなら悩みどころですけど、僕の場合みたいに自由にさせてもらえるなら、幻冬舎いながら自由にやるっていうのがベストな塩梅じゃないかな、と。


実は、博報堂は副業禁止

小野直紀(以下、小野) おっしゃる通りだなと思います。ただ箕輪さんの場合はそれが極端すぎるかんじもするというか(笑)。だから今日はそのあたりを詳しく聞きたいなと。
僕は博報堂社員として、博報堂の仕事をやることがやっぱり多いんですね。自分の好きなことはやってるけど、それは博報堂の仕事だったりします。個人でYOY(ヨイ)というデザインスタジオをやっていて、ミラノで発表して世界で評価されて、海外のブランドから依頼されてデザインをして売れていく、みたいなこともあるんですが、実はそれ、かなりグレーで。ウチ、副業禁止なんで。


「実は博報堂は副業禁止」と語る『会社を使い倒せ!』の著者・小野直紀さん

箕輪 ええっ!

—禁止なんですよ。

小野 そう。僕の口座にはお金が入ってないことになってるんですよ。それを使って僕の生活に何かはせずに、開発費にひたすら回して、ひたすら新しいデザインを作る。それってどうかなって思いつつも、かといって個人でやってるほうでお金を儲けるということは主眼に置いていなくて。どちらかというと自分が作りたいものを、世の中との関係を無視して作るっていうのをやりたいなと思ったんですよね。

箕輪 なるほど。

小野 自主プロジェクトから始まったみたいなところもあるので、まあいっかな、とは思ってて。そこが割合でいうと3割とか、そのぐらいです。ただ会社の広告の仕事はまったくしてないんです。いわゆる広告……コピーライターなんで広告作って、CM作って、コピー書いて、みたいなことが本来の仕事なんですけど、僕はモノづくりをやりたいから、プロダクト開発のチームをつくって、モノづくりをやっている。そこで入ってくるお金は当然会社に入るし、博報堂という名前でやる。
あとは雑誌『広告』の編集長になったんで……あれ、僕けっこう博報堂に使い倒されてますね(笑)。博報堂のために雑誌を作って出すみたいなことなんで。

箕輪 素晴らしい!


今でも圧倒的に幻冬舎の仕事が多い

小野 だから割合で言うとほんとにもう僕は、気持ちの9割は博報堂にあるんですけど、箕輪さんはそれが逆だなっていうのがすごい面白いと思って。

箕輪 いや、世の中のイメージがそうなだけです。(幻冬舎とオンラインサロンなど外の仕事で)得られるお金は1対9ぐらいですけど、時間とかコミットメントで言うと、7対3でやっぱり幻冬舎の仕事ですよ。毎月、本を1冊出してるので。普通に毎月1冊出してる人はなかなかいないですし、毎月ほぼ5万部とか売れてる人もいない。圧倒的に幻冬舎の仕事が多いんですよ。でも(会社には)行ってないですけどね。

—ちなみに幻冬舎は副業規定ってあったんですか?

箕輪 いや、ないっていうか、そこはやっぱ博報堂との大きな違いで、幻冬舎って会社というより「組」のようなものなので(笑)。

会場 (笑)


「幻冬舎は会社じゃなくて組」と語る箕輪さん。左は司会の上阪徹さん

箕輪 「見城組」なんですよ。幻冬舎の舎が、会社の社じゃなくて舎弟の舎なのは、単なる組だからです(笑)。だから副業規定どころか、規定自体がない。組長がいいって言えばいい。

小野 それすごいですね。博報堂は副業はダメなんですけど、個人活動はOKなんです。釣りとか趣味でやってるとかはもちろんOKじゃないですか。そしたら釣りの趣味が高じて、コメンテーターとして呼ばれて収入を得るっていうのはOKなんです。

箕輪 その収入はOKなの?

小野 それは、博報堂と競合しないじゃないですか。要するに広告制作みたいなことをやったらアウトなんです。で、僕はプロダクトデザインだったから、競合しなかったんですよ。だから、ギリ、グレーで許されたんです。

箕輪 なるほど。あ、でもそれは幻冬舎もおんなじかな。さすがに俺が編集で金とり始めたら、ナンですよね。それこそ、なんかうさんくさい社長から、数千万出すから編集してくれとか言われることもありますけど、やっぱりそういうのは受けてないですね。


「小野君はずるいねー」と言われる

—ちなみに小野さん、広告を作らず、モノづくりのプロジェクトをやってて、今度は本も出されて、社内的にはぶっちゃけどんなかんじなんですか。

小野 うーん、なんか、好きなことやってんな、という印象はあるんでしょうね。だから今回こういう本書きませんかって話が来たんだと思いますし。
YOY自体はデザインスタジオなんですけど、デザインスタジオってフリーではなかなか食えないんです。特に僕らがやっているのは、ある種アート性のあるものだったりするので、日本だとたくさん買ってもらえる土壌もないし、そこに価値をもらえることが少ない。だからグローバルでやってるんですけど、一方で会社員で博報堂から給料をもらっていますから、他のデザインスタジオの人からは「小野君はずるいねー」と(笑)。

箕輪 全然ずるくないでしょ!

小野 そう! 「え、ずるいのかな?」と思ってるんですけど、外からも言われるし、中からも、なんかうまいことやってんね、と。両方、全力でやってるんですけど。

箕輪 『会社を使い倒せ!』って素晴らしいタイトルだと思うんだけど、やっぱり会社が都合いいですよね、聞いてると。お互いにプラスはあると思うんだけど。まあ、会社の事情もわかるけどなー。


この生活ってなんなんだ

—箕輪さんの場合、見城さんはオーナー社長じゃないですか。実際、箕輪さんも見城さんの本作って、それがきっかけで幻冬舎に入った。でも、今みたいな状況を入った時にイメージしてたわけじゃないでしょ?

箕輪 まったくイメージしてない。

—結果的にこうなってるわけですけど、なんでこうなったんですか。

箕輪 著書にも書いたんですけど、子どもが二人いるんですね。会社員だと普通、どんな活躍しようが、ボーナスでは反映されても、基本は年齢給じゃないですか。僕で言うと、手取りで30数万円とかだと思うんですけど。で、子ども二人いると、奥さん働いてないと郊外にしか住めないですよね。家賃10万超すと結構きついんで、11万とかのところだとかなり奥に行かないといけない。それで、僕は小手指に住んでて、ずっと西武池袋線で通ってたんです。3年前まで。
これが『闇金ウシジマくん』の世界に出てくるような風景だったんですよ! あのストレスは、思い出すだけでも、たまんない。毎回ぎゅうぎゅう詰めのなか会社行って、帰りも終電とかで帰ってぎゅうぎゅう詰め。で、いつも池袋駅のキオスクで、ストロングゼロのロング缶買って、ぎゅうぎゅう詰めの中で飲んで。で、揺れたりすると、おじさんとかのスーツにかかったりして、「てめえ!」とか言われて。「は? なんだよ」とか言って。俺が悪いんですけどね(笑)。

会場 (笑)

箕輪 俺、荒れてたんですよ。すごい荒れてた。なんなんだよこれって。別に給料に不満とか会社に不満ってわけじゃなくて、この生活ってなんなんだとか。要は、「通勤時間が無駄」とか作った本の中でさんざん言ってるわけです。なのに、俺が一番通勤してる。

会場 (笑)

箕輪 理論では、ホリエモンの言うこととかわかってるけど、実態がもう「THEサラリーマン」でした。ある有名社長と仕事してた時は、夜中の2時とかに呼び出しがかかるわけですよ。「行きます!」って言っても、タクシーで2時間くらいかかる。「おせーよ!」って怒られるんですけど、「いや、最速で来て2時間すから」って。で、もうこれは無理だと思ったんです。そのときに、雑誌に出たら謝礼で2万円もらえるとかいう話があって、これ、本気で外に出始めたら、積み上げれば10万ぐらいは稼げるかなと思ったんですよ。


このままだと半年で破産。そこからいろいろ考え始めた

—それは幻冬舎入って何年目くらい?

箕輪 1年目とかですよ。それで、もういいや、引っ越しちゃえって引っ越して。都内で子ども二人とか住めるぐらいだと、家賃は20万円ぐらいする。で、このままじゃ半年で破産すんなって思って、そっから一気にいろいろ考え始めたってかんじですね。「この雑誌でコラム書けないですか」って売り込んだり、それこそオンラインサロン始めてみたり。そしたら、あれよあれよと。需要がもともとあったみたいで、バーッて広がって今、ってかんじです。

—それは社長の見城徹さんにはどんなふうに話したんですか。

箕輪 見城さんって、もともと出ていけってかんじなんですよ。「名を売れ」「伝説を作れ」みたいな人。だから、昔っから雑誌に出ると、「お前いいな。どんどん名を売れ」って言っていました。「人も金もブランドについてくるんだから、ブランドを作れ」と。だから、それでお金をもらっても、なんか言う人じゃないという空気はわかってたんです。でもオンラインサロン始めちゃったら、急に300人とか集まっちゃって。そうすると、150万円とかになるんですよ。
で、やばい、これは見城さんに一応言わなきゃって思って、それで話をしたんです。「今は変化の時代で、出版社にも黒船みたいなのがやってきたらやばい。で、その新しい黒船ってオンラインサロン的なものだったりすると思うんですよ。だから僕が最初にやっときます」と。「黒船が来た時、その黒船、僕が乗ってたら最高じゃないですか?」って言ったら。「うん、そうだな」って(笑)。

会場 (笑)

箕輪 見城さんは今も、お前どんどん稼げどんどん稼げって言ってます。

—でも、これは幻冬舎だからできる、とか、箕輪さんだからとか、みんなに言われたと書籍にありましたね。

箕輪 みなさん幻冬舎のことを知らないんですよ。業界の人は知ってますけど、のびのび自由な雰囲気なんかないんです。

会場 (笑)

—殺人事件でも起きたのかと思うくらい、シーンとしてたとか(笑)。

箕輪 最初ほんと思いました! 「これ、コント?」って! 「殺伐としてる会社」っていうモノマネをしてる人たちかと思った(笑)。


(司会・構成 上阪徹/撮影 宇賀神善之/場所 銀座 蔦屋書店)

※次回「面白いことをしたいなら戦略を考えろ!」は3月26日(火)更新予定です。

全国書店にて好評発売中! 注目の博報堂クリエイティブディレクターによる、会社を辞めずに「やりたい」を仕事にする方法!

会社を使い倒せ! (ShoPro Books)

小野 直紀
小学館集英社プロダクション
2018-12-20

この連載について

使われる」から「使う」会社へ—小野直紀×箕輪厚介対談

箕輪厚介 /小野直紀

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enjoymaru0625 俺も自衛官をやめて 東京の魅力に感じて即行動して 見城徹 さんに狂って 箕輪厚介 さんにも狂っていて 無職で箕輪編集室に入会し、 ミノトゥク運転手のチャンスを得ている。 飢えたオオカミ フルスイング。 #NewsPicks https://t.co/YHcsekR09i 8ヶ月前 replyretweetfavorite

_btcfx5_ リーマン=社畜とか決めつけるんじゃなくて、こんな生き方・考え方があるんだぁと知ってほしい。 リーマンという立場や企業を上手く使って、自分も企業も成長させられる人材になりましよう! https://t.co/FDA4mAI2N9 8ヶ月前 replyretweetfavorite

marunouchiol_ ここまで自由にやれたら絶対辞めないんだけど、弊社は全面的NGだからなぁ… 就活するときにこういう論点もチェックしておいたら、副業やパラレルワークなど可能性が広げやすいでしょうね https://t.co/QArzv3ZuJb 8ヶ月前 replyretweetfavorite

atsushiwatarai 小野さんの企画のはずなのに、どうしても箕輪厚介のエピソードの方がずっと面白いんだよな 8ヶ月前 replyretweetfavorite