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二月のパリは寒い。
東京に戻った時も寒いと思ったが、やはりヨーロッパは芯から寒いという実感がある。顔にあたる風が骨まで沁みてくるようである。
それでも冬のパリは素敵だった。空の高い寒い日は特に街が綺麗に見える。
鈴木がヴァンドームのウエスティンホテルを予約してくれていた。
チュイルリー公園側の部屋を取ってくれていたので、窓からの景色が素晴らしかった。
夜十時になったら必ず見ろと言われた輝くエッフェル塔も見た。
本当に綺麗だった。
東京タワーも真似すればいいのにと思った。
悔しいけれど、多分、エッフェル塔には敵わない。
「朝食を一緒に食べよう」
と言われていた。ホテルから歩いて五分のカフェで待ち合わせた。
「ホテルを出たら左に行って、二つ目の角をまた左に曲がる。それが、Rue Saint Honoré(ルイ サント ノリー・ サントノーレ通り)。Mandarin Oriental Hotel(マンダリン オリエンタル ホテル)を左に見ながらまっすぐ行って大きな通りをGucci(グッチ)側に渡ってしばらく行くと、Bottega(ボッテガ)の先にHermés(エルメス)がある。その角を右に曲がって数軒目の左側に、Bread & Roses(ブレッド アンド ローゼス・パンとバラ)というCafé(カフェ)がある。そこで八時に待っている」
菜月は小躍りしながら言われた通りにパリの街をカフェに向かって歩いていた。
その時、突然、後ろから誰かが菜月の肩にふれた。
驚いて立ち止まり、振り返ると、背の高い東洋人が歩き去って行く。
その男の右手が、一瞬、光ったように見えた。
その瞬間、猛スピードで飛び出してきた車が目の前を横切った。
びっくりした。
もし、あそこで立ち止まっていなければ、確実に菜月は跳ねられていた。
身震いがした。
前を向いた途端、向かいから歩いてきた男と顔があった。
「高山先生!」
男は、綺麗な日本語で言った。
「ウィーンでは失礼しました。突然で驚かせてしまったようでごめんなさい。でも、あの時探していた人を見つけました。これから会いに行くところです」
菜月は黙ったままその中東系の男から遠ざかると、鈴木の待つカフェに走った。
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