2020年 単身の高齢女性が「ジジ活」を始める

「セクサロイドは誕生するのか」「VRでのセックス体験はどこまでリアルか」。人口減少とテクノロジーをキーワードに日本人の性の未来予想図を描き出す! パパ活が話題となった2019年だったが、2020年にはいったいなにが起きるのか?3月6日発売の『未来のセックス年表』を特別公開!

40歳の壁が突破された世界

「社長と話し合って『3カ月だけ』という約束で始めたのですが、気がついたら、15年以上もこの仕事をしていました・・・」

そう語る小島多恵さん(仮名)は、地方都市のデリヘルで働いている45歳。結婚後、生活費を賄うためにパートを始めたものの、思うようには稼げなかった。高時給に引かれて宴会コンパニオンの派遣会社でバイトを始めたが、そこでも十分な収入は得られなかった。

そんな時、コンパニオン派遣会社の社長から「系列のデリヘルで働かないか」と誘われ、迷いながらも引き受けた。夫には「派遣の事務の仕事をしている」と説明することにした。

それから15年。更年期障害に伴う身体の火照りや体型の崩れに悩まされてはいるものの、今のところ指名はそれほど減っていない。「デリヘルで働いていることは、実は夫にも同居している義父母にも、未だにバレていないんです」と多恵さんは微笑む。

かつて風俗の世界には「40歳の壁」という言葉があった。40歳を過ぎると容姿の衰えと共に指名が減り、収入も低下するため、仕事を辞めざるを得なくなる・・・というわけだ。

しかし、現在はこの「40歳の壁」が良くも悪くも突破できるようになりつつある。40代、50代の女性を採用する店舗も増えており、特に地方都市では指名が減って収入が下がっても他に代わりの仕事が無いために、風俗で働き続けざるをえない女性も多い。

「いつまでこの仕事ができるかは分からないのですが、子どもが大学に入るまでは頑張ろうと思います」と多恵さんは語った。

「閉経女子」がマジョリティになる

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の女性人口の将来推計によれば、2020年には50歳以上の人口(3248万8000人)が、0~49歳の人口(3193万7000人)を追い抜く。つまり、女性の2人に1人が出産可能年齢を超えることになり、閉経を迎えた女性が過半数を占める社会になる。

2015年の国勢調査では1087万人であった出産可能年齢(25歳~39歳)の女性は、2040年には814万人、そして2065年には612万人と大幅に減っていくと予想されている。

厚生労働白書(平成27年版)によると、2020年には男性の生涯未婚率は26.6%、女性は17.8%に達する。そして1975年には25.7歳だった第1子出生時の母親の平均年齢は、2015年には30.7歳まで上昇している。

これまでは35歳以上の出産が「高齢出産」とされてきたが、このまま晩産化が進めば、35歳以上で初産を迎える女性が多数派になり、「高齢出産」という言葉自体が消えるだろう。

かつて保守系の男性政治家から「生産性が無い」と揶揄・差別されてきた閉経女子が女性のマジョリティになる日がいよいよ訪れるわけだ。そう考えると、風俗で働く40~50代の女性の増加は、ごく自然なことだと言える。

未婚者の割合が高い団塊ジュニア世代が高齢化

40歳半ばを過ぎても、生活と学費のために夫に隠れて風俗で働き続けなければならない多恵さんの経済状況は、一見すると非常に辛く苦しいものに思えるかもしれない。

しかし、より深刻な経済的リスクに直面するのは、夫や子どもがいない=未婚・非婚のまま50代に突入した非正規雇用の単身女性だ。 2021年、団塊世代(1947~49年生まれ)やバブル世代(1965~70年生まれ)と比べて、未婚者の割合が高い団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)が50代になり始める。

非正規雇用のまま50代を迎えた単身女性は、老後の経済面で大きな不安を抱え込まざるを得ない。親から受け継いだ持ち家をリバース・モーゲージ(住んでいる自宅を担保にして、老後の資金を借り、死後に自宅を売却して一括返済する仕組み)で利用しようとしても、空き家が増え続けている時代に買い手がつく保証はない。厚生年金の平均受給額(2016年度)を見ても、男性の月額約16万6千円に比べて、女性は約10万2千円と大きな差がある。

中高年女性たちが「ジジ活」に乗り出す

20~30代の単身女性が学費や生活費を「パパ活」で稼ぐことと同様に、老後の生活設計に行き詰った50~60代の単身女性の中にも、売春や性風俗に乗り出す人が増えるだろう。

そうしたニーズの受け皿として、中高年を対象にした出会い系サイトやマッチングアプリも増えていくはずだ。現在は大都市圏を中心に展開している交際クラブや、50~60代の女性を中心に採用している熟女風俗店も、今後は地方都市に積極的に進出していくだろう。

40~50代の男性が「パパ」の大半を占めている現行の「パパ活」市場では、10~20代の女性の需要が高く、40代以上の女性が参入する余地はほとんどない。

結果的に50~60代の女性は、より上の世代=60~70代の男性に接近し、デートや身体の関係に加えて、90~100歳を超えた老親の介護や、男性自身の介護や終末期の看取りを条件に交際をもちかけるケースが増えるはずだ。「パパ活」ならぬ「ジジ活」である。

妻に先立たれた高齢男性にとって、年下の女性が日々の話し相手になってくれたり、身の回りの世話をしてくれることは、孤独な晩年の中で何物にも代えがたい喜びになるだろう。「ジジ活」は、女性側の経済的メリットだけでなく「ジジ」側の身体的・精神的なメリットもあるため、需要と供給はそれなりに一致すると思われる。

中には、財産目当てで資産家の高齢男性をターゲットにして、入籍あるいは内縁関係になったあとに遺産を根こそぎ奪うことを生業とする「後妻業」の女性も入ってくるだろう。財産目当てで近寄ってきた後妻業の女性を「最後の恋人」だと固く信じたまま、幸せに死んでゆく男性も増えるのかもしれない。

自宅売春を行う高齢女性の出現

「ジジ活」にせよ「後妻業」にせよ、人生の終盤になっても男に媚び続けなければいけない人生なんてまっぴらだ、と思う女性もいるかもしれない。

しかし、運よく特定の「ジジ」を見つけられる女性はまだ幸運だと言える。特定の「ジジ」を見つけられなければ、不特定多数の「ジジ」を相手に売春をするしかなくなる。

ホテル代や交通費の負担を減らすため、自宅や近所の空き家で売春を行う高齢女性も確実に出てくるだろう。高齢の売春女性が集うシャッター街や裏通り、老朽化した団地やマンションが、近隣住民から「妖怪団地」と揶揄されることになるかもしれない。

単身高齢女性の貧困、そこから派生する自宅売春や空き家売春の発生は、未来の社会における奈落の一つだと言える。

人生の晩年で、「終活」よりも「ジジ活」を優先せざるを得なくなる単身高齢女性を増やさないために、私たちは何をすべきか。

結婚に関する価値観が多様化していく中、そして人口減少に伴う税収減で社会保障制度が疲弊していく中で、この問いに対して明快な答えを出すことは容易ではないだろう。

2050年 セクサロイドは誕生するか?

この連載について

未来のセックス年表

坂爪真吾

新しい「性の公共」をつくるNPOという立場から、障害者・高齢者の性・不倫・性教育・性風俗・売買春・JKビジネス・パパ活など性にまつわるあらゆる社会課題の現場に足を踏み入れ、問題解決に取り組んできた著者のこれまでの知見をいかした集大成。...もっと読む

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コメント

skillog2019 パパ活の次は、ジジ活か。 https://t.co/nODthlkw29 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

tsubakist メモ:坂爪真吾氏の記事、「 2ヶ月前 replyretweetfavorite

moxcha 著者を見てこの内容であることに納得。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

_kouko ”非正規雇用の高齢単身女性が”って、非正規雇用の高齢単身者には男性もいることを忘れてない? https://t.co/Esv1DefiH7 2ヶ月前 replyretweetfavorite