ビジネスがひろがる人ほどプライベートと仕事を別にしている

包帯パンツの生みの親・野木志郎が、多くの失敗を経験しながらも、細いつながりを手繰りに手繰り寄せ、世界のセレブを魅了するまでにブランドを育て上げたビジネスのしかけを紹介していく『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)』。今回はユナイテッドアローズの重松会長に学んだプライベートとビジネスのつながりの考え方を紹介!!! 「本気やったら酒の力を借りずシラフで会わんとアカン」by 野木志郎

パンツ屋の社長、太鼓を叩く!

包帯パンツが世にデビューするきっかけとなったのが、ユナイテッドアローズの重松理社長(現・名誉会長)との出会いです。

私が重松社長とはじめてお会いしたのは、原宿にある眼鏡店・オプティシァンロイドの並木豊明社長が主宰したパーティー。当時の私は包帯パンツを開発して売り出そうと、卸先を必死になって探していた時期です。いいモンはできたけど、売る場所がない。正直、焦っていました。

その時ちょうど、当時原宿の商店会でつながりのあった並木社長から、「重松社長が商店会の新年会に来るから、紹介しようか」とのお話をいただいたのです。

もちろん私は飛びつきました。「このチャンスをなんとかせな!」
でも、普通に紹介してもらっても意味はない。何かインパクトを残そうと思っていた時、チャンスが到来しました。

たまたまその新年会での演目となっていたお琴の奏者が急に都合が悪くなり、私が和太鼓を習っているのを知っていた並木社長に、代わりに出てほしいと頼まれたのです。「やった!」

そしてその時、ふとひらめいたのが、和太鼓の師匠である林田ひろゆきさんとのセッション太鼓でした。鼓童と言うとご存知の方も多いかもしれませんが、林田さんは世界を舞台に活躍する和太鼓奏者です。
そんなプロとのセッションをやれば間違いなく目立つ。重松社長の印象に残るのではないか? 
そう思い、その依頼を受けました。

「パンツ屋の社長が和太鼓なんてできるんか?」との突っ込みはごもっとも。でも、ウケ狙いや目立ちたがり根性だけでやるわけではありません。
私は林田さんに 3 年前から稽古をつけてもらっていたので、彼にパフォーマンスをしてもらうとともに、連日の猛特訓も何とか頼み込んで了解してもらいました。

そして、パーティー当日です。
私たちのパフォーマンスは見事に大成功。息を切らし、万雷の拍手に包まれながら楽屋に引っ込みました。そして、汗だくのコスチュームを急いで着替えているまさにその時、並木社長が重松社長を連れてやってくるではありませんか! 

えっ、息ががってるこんな時に! 並木社長、間が悪すぎですよ……。

「この人、面白いパンツを作ってるんですよ」
と並木社長。
「そうなんですか」
と重松社長。
反応は薄い、というかほぼゼロ。会話が続きません。

焦った私は、慌てて「包帯でパンツを作ってます! 今度ご提案に伺わせてください!」と言い、重松社長と名刺を交換するのが精一杯でした。

名刺は集めればいいわけじゃない

後日、正式にアポイントを取り、重松社長と改めてお会いすることができました。
しかし部屋に通された、その時です。重松社長がまるで初対面であるかのように、丁重に名刺を出してきたのです。

あれ? こないだ交換してるよな……。
そこで私は、おずおずと言いました。
「あの〜、一度、原宿商店会の新年会でお名刺を頂戴しておりますが……」
すると重松社長は少し怪訝な顔をして、こう言いました。

「あっ、あれはアフターの名刺で、これはビジネスの名刺です」
なんのこっちゃ??? 私もそんなに記憶力の悪いほうではないので、この間もらった名刺と寸分違わない名刺であることは、わかります。そこではたと気づいたのです。

そうか、同じ名刺でも、どんなシチュエーションで交換したかによって、意味合いが変わってくるということか! 
さすが重松社長と、たいそう感動しました。

確かに、アフターな空気のビジネス交流会などで名刺交換をしても、相手の顔や発言はあまり記憶に残りません。そこで交わした他愛もない会話は、後のビジネスの場でほとんど意味をなさないことも少なくないのです。

名刺は集めればいいというものではない。自分は、集めた名刺の厚さを自分の顔の広さと勘違いしているのではないか……。
重松社長のふるまいで、私はそう気づかされた気がしました。

実は、これには後日談があります。
重松社長はこの時、あれだけの和太鼓パフォーマンスをしたにもかかわらず、私と会ったことを忘れていたらしく、「あ〜、あれはね、君と会ったことをすっかり忘れてたんだよ」と一言。

臨機応変にごまかしたというのが真相でした。深読みした私って……。とはいえ、「アフターの名刺とビジネスの名刺は違う」という考え方自体は間違っていない、ビジネスのつながりを作るうえで大事なことだと思います。

仕事よりもまずは人間同士のつながり

プライベートのつながりをすぐ仕事に結びつけるほど野暮なことはない。
私はそう考えています。

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日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由

野木志郎

東京は渋谷で小さな下着メーカーを経営する野木志郎は、「ムレない、ベタつかない、しめつけない」という独特の穿き心地で、世界のセレブを魅了する「包帯パンツ」の生みの親。いまでこそ年間10万枚も売り上げる「包帯パンツ」だが、発売当初は商品力...もっと読む

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コメント

shigekey "プライベートのつながりをすぐ仕事に結びつけるほど野暮なことはない。"|野木志郎 @samuraigeisha | 1年以上前 replyretweetfavorite

asapublishing 「#cakes」様で『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)/#野木志郎 著』の連載5回目が掲載されました。理由とは? https://t.co/yJlR08YPYf #包帯パンツ #SIDO 1年以上前 replyretweetfavorite