第1回】究極の連係プレー

WBCで一躍「時の人」となった中日ドラゴンズの内野手・井端弘和選手。地道な努力を重ねた「いぶし銀」だからこそ、大舞台に動じない理由がある。今連載では、7月18日発売の『勝負強さ』に収録された、「井端弘和vs荒木雅博 アライバ対談」の一部を公開!(取材・本郷陽一)


(写真は時事通信社提供)

—「アライバコンビ」の守備論、1、2番論について、対談という形式でお二人の考え方を聞かせて下さい。テレビの好プレー集で必ず使われるのが、セカンドの荒木さんが、二遊間に飛んだゴロをショートの井端さんにトス、井端さんが一塁へ送球してアウトにするという究極の連係プレーです。これは、打球が飛んだ時点で、お二人の中でイメージできているものですか。

井端 打球が荒木のところに飛んだ時点で「セカンドゴロ、アウト!」というのが、イメージできています。後は、荒木がトスをしてくるか、してこないかだけですから。ああいうプレーに関しての主導権は荒木が握っています。
荒木 二遊間に打球が飛んだときに井端さんは、間違いなく僕の視界の中にいてくれるんです。ボールを追いかけているときに井端さんが見えているんですよ。自分で捕って投げてアウトになると判断すれば自分で行きますが、「ああこれは無理だ」と思えば、井端さんが、そこに絶対にいてくれるんです。僕が捕球したものを井端さんにトスしてアウトにしてもらうというプレーは何度かありましたよね。ああいう機会だけではなく、常に井端さんのフォローがあるのでアウトにするプレーがイメージできるんです。

—スーパープレーが実現するのは、いわゆるゾーン体験のようなものでしょうか?

井端 いえ、それはないですね。守備でのゾーン体験はないような気がします。「この球が行ったら、打者はこう打って、こう飛んでくる」とイメージして、ポジショニングを変え、その通りに飛んできたことはありますが、それがゾーンかどうかは。
荒木 そういう意味では、あの連係プレーはゾーンではないですね。
井端 ただ、バッティングの方では、こういうのがゾーンなのかなというのはあります。あまりよく覚えてないですが(笑)、ボールが止まって見えるとか、ボールがスローモーションに見えるとかの感覚ではなく、自分では理解、分析が後でできないくらいの反応で打ったという打席でしょうか。打った後に「あれ? 今のどうやって打ったんだろう」と、自分でも不思議なほど自然に体が反応してしまうことがあるんです。ここ一番というときや、逆に「集中できていない」と感じているときにも、そういう現象が起きることがあって、ゾーンと言えばゾーンなのかなと振り返るんですが。

—お二人は、そのシーズンで最も守備に優れていた選手に与えられるゴールデン・グラブ賞を2004年から6年連続で受賞されています(井端は2012年にもショート部門で受賞)。そのスペシャリストが考える守備で一番大事なものは何でしょうか。

井端 形がどうであれアウトにすることです。シンプルですが、これは絶対です。バッティングの結果というのは、自分に跳ね返ってきます。でも、守備のミスは、自分ではなく、投げているピッチャーや、チーム全体に関わってくること。当たり前ですが、捕れる範囲に飛んできたゴロは、絶対にアウトにすることが最も大切なことだと思っています。
荒木 僕も井端さんと同じ考えですね。はい。
井端 若い頃は、そういう原点を忘れがちだったのですが、自主トレなどでいろいろとピッチャーと話をする機会が増えてくる中で、確実にアウトと思った打球をエラーされることのダメージが、僕らが想像する以上に大きいとわかったんです。ピッチャーは、ヒットは割り切れるが、アウトになるべき当たりがアウトにならないと、なかなか切り替えられないらしいんです。となるとファインプレーよりも確実性なんです。
荒木 ひとつのミスが試合の流れを変えてしまいます。井端さんの言われる通り確実にアウトにできるところをアウトにすることが大切だと思います。

—二遊間での集中力の高め方というのは、どういうものでしょうか?

井端 確かに集中力というものは大切ですが、1回から9回までガーッと目を皿のようにして集中して守っていても持たないものです。それが144試合という長いシーズンとなると、なおさら持たなくなるんです。集中し過ぎることが、かえって逆効果となって、大切なところで集中力を欠いてパフォーマンスを落とす結果になることも少なくありません。ここぞという場面と、そうでもない場面の使い分けのマネジメントが、実は重要だと思っています。ここぞという場面でないところでは、「まあ、アウトにすればいい」と比較的リラックスしたメンタルの状態で守っています。100%の力をいつも出す必要はないんです。状況に応じて、そのオンとオフは、しっかりと使い分けないとダメだと思います。
荒木 長い間、井端さんと一緒に二遊間を守っていて、そういうところを勉強させてもらっています。実は僕は、全部が全部、集中して行こうとするタイプなんです(笑)。
井端 (笑)。
荒木 若い頃は、全球、全打席に集中して行こうというのがありました。しかし井端さんを見ていると、どうもそうでもない(笑)。なのに飛んできたボールは全部アウトにする。その凄い確実性は、どこから来るんだろうと見ていると、確実性の中にも井端さんが語られたように集中したものとリラックスしたものがあるんです。あるときから、それに気がつき、僕も、その方法を学ばせてもらっています。
井端 そんなとこを見てたんだ?
荒木 とにかく集中しているときには、「え? なんでそこを守ってんですか?」というポジショニングをされていますよね。忘れられないのが、球界ナンバーワンの足を誇った阪神の赤星憲広さんを封じ込めたプレーです。確かサードの横をすり抜けるくらいに三遊間の深いところへゴロが飛んだんです。赤星さんの足を考えると打った瞬間にセーフだろうなと思うような打球ですよ。ところが井端さんは、前もってそのポジションをケアしていて、本来ならば余裕で内野安打になるはずの打球をアウトにしたんです。ヒットを許すと同点となってしまう大事な場面でのプレーでした(2004年7月16日の阪神戦での7回、4対3で迎えた二死二塁)。こういう場面では、凄い集中力を出しているんだろうなと思いました。
井端 (三遊間か二遊間かの)両方を追ってもしょうがないですし、それを意識してしまうと両方抜かれてしまうものなんです。配球やスイング、状況、それに僕のカンを加えて予測して大胆にポジションを取る。予測した側と逆にボールが飛んで来たら「もうピッチャーの責任だよ」くらいに割り切って守らないといけないバッターがいるんです。例えば、俊足のバッターの場合、三遊間の深いところがたいていセーフになる。それならば、二遊間は本来ならばセンター前へ抜ける打球を捕るつもりでポジションを取るんです。それは特別なケースですけどね。逆に赤星選手のときのように、あえて三遊間を読んで捕りにいく場合もあります。

※次回は7月23日(火)に掲載いたします。

井端選手の魅力が詰まった一冊、7月18日より発売開始です!


勝負強さ
井端弘和
[発行]角川書店[発売]KADOKAWA
発売日:2013/07/18
定価:820円(税5%込)
(帯写真撮影:ホンゴユウジ)

角川新書

この連載について

勝負強さ』—井端弘和vs荒木雅博 アライバ特別対談

荒木雅博 /井端弘和

WBCで一躍「時の人」となった中日ドラゴンズの内野手・井端弘和選手。地道な努力を重ねた「いぶし銀」だからこそ、大舞台に動じない理由がある。今連載では、7月18日発売の『勝負強さ』に収録された、「井端弘和vs荒木雅博 アライバ対談」の一...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

HylowT ほんの一部分ではありますが興味深いです 持ってる本書…読み返してみようかな 4年以上前 replyretweetfavorite

ex1861 https://t.co/GsjmxaEBSa 定番。左側にいる背の高いほうの選手の手の位置にご注目ください 4年以上前 replyretweetfavorite

masamsteen 嗚呼なんて面白いんでしょう。ツボなコンテンツが大杉。→ 5年弱前 replyretweetfavorite

hato @holidaycamp316 肘痛で?スタメン外された大島サヨナラタイムリー。チーム一丸で良く粘ってよく勝ちました。この本、売れてるみたいです。うちの新聞でも大きく広告打ってました。 https://t.co/ZytrmTQuPu https://t.co/EWpgl5f4wi 5年以上前 replyretweetfavorite