『伝わるしくみ』山本高史
マガジンハウス
アウトプットへの道
「伝える」とは、「受け手を自分の望む方向に動かす」ことだ。 しかし、受け手は「ベネフィット」を感じなければ動かない。 そのためには「脳内データベース」が充実していないと話にならない。 その拡充には「脳内経験」が有効だ。 そういう流れで、ここまで展開してきた。
ここまでは、言うならば「伝える」ための「基礎体力づくり」である。「脳内デー タベース」を考えると「インプット」である。 ここから一気に、「伝える」現場にまで到達したい。「アウトプット」するのである。
「基礎体力づくりインプット」で重要なものが「蓄積」だとすると、伝える「アウトプット」で必要なものは「発想」である。
受け手を想像することも、「受け手の言って欲しいこと」を推定することも、受け 手が興味を持つようなアイディアを思いつくことも、そのすべてが「発想」である。
もちろんその質と量は「脳内データベース」に負うのだが、「脳内データベース」 は言ってみれば知的な倉庫。そこにいかに大量のデータが保有されていても、その切り出し方、使い方が適切でなければ、効果的な「発想」にはつながらない。
「脳内データベース」は、必要条件ではあるが十分条件ではないのである。
それならばぜひ手に入れたいのは、スムーズに「発想」する方法である。
「脳内データベース」を十分に適切に活用し、受け手の状況を把握し、受け手にとっ てのベネフィットを見極める。そんな発想のための準備をしておきたい。
その方法論として「アングル」と「ツリー」を提案する。
その前に、恒例の「できなかった」話から。
コピー100本ノック
1985年の職場環境は牧歌的だったが、仕事自体は、なかなかついていけないという意味で、部活の一年生の夏合宿を思い出させるようなものだった。 例えば「キャッチフレーズ100本ノック」。
(ノックでもなんでもないが、語感がいいのかそう呼ばれていた)
新人はどこかのチームに入って、キャッチフレーズやボディコピーを書かせてもらう。当然先輩コピーライターはいるし、例によって、作業的にはぼくはいてもいなくてもいいという配置だ。
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