同じ女性のいくつもの顔
—— 相澤さんの写真には、公園でニコニコしている普通の場面と、ラブホテルで裸になっているような場面がありますよね。相澤さんの中では区別はないんでしょうか?
相澤 基本的にはないですね。実際、外で撮っただけで、終わることもたくさんあります。前日まで室内で撮ろうという話になっていても待ち合わせの時間になったら「なんとなく 今日は肌見せたい感じじゃない」ってなったら、「じゃ散歩しよう」という感じで。
女性を撮るという枠はあってもシチュエーションはなんでもいいです。
—— 同じ女性を何度も撮る中で、関係性が変わっていく。
相澤 よく見てもらえれば、わかると思うんですが、段々変わっていくんです。たとえばこの子とか、確か10回くらい撮ってますけど、ホテルで撮るってことはない。
—— え、この女性って、同じ人ですか。
相澤 たとえばこれと、これも同じ子ですよ。
—— え……? あ、髪を切ってるんですね。
相澤 これ北尾さん(担当編集者)もわかってなかったんですよ(笑)。この子も何度も撮らせてもらってますね。
—— よくよく見てみれば……。人の顔って、目が大きくて綺麗な人だとか、なんとなく記憶していたりしますけど、一人の中にこれだけ表情やモードがあるのを、実は見逃してるんですね。
相澤 それは僕もそうなんですよ。だからあまり意図せずに、パッパッパッパッ撮っていくと、思っても見なかった「いい」と思う写真が、僕も撮られた女性もそれぞれあるんですよね。
—— 何度も撮る過程で、なにか目指しているイメージがあるのですか。
相澤 目指してるものは、特にないんですよね。10回会ってマンネリになってくることもあると思うんすけど、マンネリ化したらどんな顔になるだろうとか、見つけようとする行為が大事かなと。
僕より、女の子の方が発想が豊かで、表現がすごいんで、僕なんかがいろいろ撮り尽くしたと思っても、まだこんな顔があるんだ、みたいな表情が何かしら出てくるんじゃないかなと思ってやってます。
—— なるほど。
相澤 で、10回撮って、11回目に1枚しかいいのがなかったとしても、それは11回目のうちの1枚なんですごい価値があるというか、意味があるんですよ。毎回違うテーマを設定したりとか、僕の意図で作ろうとしちゃうと11回も撮れないんです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。