ひとりになるために、泣き場所を探した日

寝食を共にする山小屋の生活。スタッフ同士が仲良くなりやすい反面、プライバシーが確保しづらい難点も。辛いことがあって泣きたくなっても、ひとりになれる場所がなかなか見つからない。10年間山小屋で働いていた小屋ガールの吉玉サキさんが、泣き場所を求めてさまよった日のエピソードをお届けします。

どんなにコミュニケーションが得意な人だって、きっと、ひとりになりたいときがあると思う。

山小屋は共同生活だ。一応、「部屋のようなもの」は個々に与えられるけど、プライバシーが完全に守られているとは言えない。

私は人恋しいタイプで、共同生活はさほど苦にならなかった。そんな私でも、「ひとりになりたいな」と感じたことはある。

今回は、山小屋の住環境とパーソナルスペースの話。


スタッフはひとり一部屋!? だけどその広さは……

山小屋スタッフの住環境についてはあまり知られていない。

だから、「山小屋って雑魚寝なんでしょ? 無理!」と言われたこともあれば、「ひとり一部屋与えられるの? 家具・家電つき?」と言われたこともある。

そのどちらも実情とは違う。たしかに山小屋によっては雑魚寝のところもあるらしいけど、私がいた小屋は、基本的にひとりずつプライベート空間があった。スタッフの部屋を「従部屋」と呼ぶ。

とはいえ、アレを部屋と言ってしまっていいのだろうか……?

なぜならそれは、1.5畳~2畳くらいのベニヤとカーテンで区切られたスペースだから。かろうじて足を伸ばして眠れるネットカフェをイメージすればわかりやすい。

だから、「ひとり一部屋」というよりは「ひとり一区画」といった感じ。それが廊下の両側にずらりと並ぶ。

こういう話を下界(山小屋用語で街のこと)の友人にすると、みんな必ずビックリした顔で「その狭さで私物はどこに置くの?」と訊いてくる。

私物はもちろん、自分の部屋に置く。

ちなみに、私物は最初にヘリで運べるのだけど、山小屋から送られてくる書類には「ダンボール2箱まで可」と書かれている。

ダンボール箱のサイズは……?

この話をすると「私もそう思った!」というスタッフは多いのに、一向に改善されない。山小屋のアバウトさがよく現れている。

2畳程度のスペースにダンボール2箱(サイズは任意)と背負ってきたザックを置き、布団を敷く。言うまでもなく狭い。

だけど、人によってはインテリアを楽しんだりもしている。ポストカードや綺麗な布を飾ったりして、自分の部屋を居心地のよい空間に整える子もいた。

なぜ、そんなゆとりがあるのだろう。私の部屋はいつも服が散乱していて、雑然としていた。


音漏れ問題は深刻。寝言も聞こえてしまう

従部屋は、視覚的にはプライバシーが守られている。しかし、うっすい板の壁とカーテンでは守りきれない部分もある。

そう、音だ。

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小屋ガール通信

吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

paultaskart 雑魚寝の所に2泊したけど疲れた…いびきかくから気を使っちゃうんだよなあ… 支配人の願望ダダ漏れの寝言で大爆笑した笑 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

POTAKA3k190M 朝から晩まで忙しく、心が荒んできたときのやりたいことナンバーワンが 「ひとりになりたい…」 だった。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

alchmistonpuku 大変なこともやっぱりあったんですねえ(逃げられないしな) 約1ヶ月前 replyretweetfavorite