知らなければ損をする! 選ばれし文房具の驚くべきアイデアと高機能

『文房具屋さん大賞2019』(扶桑社)は、この1年に話題を集めた新商品の中から現場のプロである文房具屋さんが最高の逸品を選ぶ賞だ。今年で7年目を迎え、『文房具屋さん大賞』をまとめた本を制作するのが編集ユニット「choudo」の木庭將さんと上原玲子さん。文房具本の制作を多く手掛け、文房具イベントのプロデュースも行っている。今回は歴代の大賞受賞作から2019年の大賞作を紹介し、文房具のトレンドを解説する。

パラダイムシフトを起こした歴代の「大賞」文房具とは?

木庭將(以下、木庭) のりや修正テープを買うとき、ずらりと並んだ商品の中から「これだ!」って選ぶ人は少ないですよね。多くの人は、なんとなく買ってなんとなく使っている。でも、こんなふうに普段なにげなく使っている文房具ですが、それぞれに特長があって意外なほど違いがあるんです。

上原玲子(以下、上原) のりでいえば、速乾性や粘着性などさまざまなタイプが販売されています。塗った瞬間にしっかり貼りつく強粘着のものから、繰り返しはがせる特殊なもの、塗ったところがわかるように色がついてあとで消えるものなど、用途に合わせて使い分けられるように幅広いラインナップがそろっています。修正テープも切れ具合から、貼ったテープの上に文字を書くときの書き心地まで、メーカーや商品によってかなりの違いがあります。『文房具屋さん大賞2019』を通して、こんなそれぞれの魅力をわかりやすく伝え、自分に合った文房具を選ぶヒントになってほしいと思います。

木庭 文房具の多くは消耗品なので、安価なものが多い。ただ、100円台のボールペン1本にもメーカーの思いと技術が詰まっていて、とことん滑らかなに書き続けられるインクを開発したり、常に今よりもいいものを世に出そうと頑張っているんです。その年でいちばん影響力があって、文房具屋さんが自腹でも買いたいと思う文房具が「大賞」に選ばれるのですが、過去7回の大賞アイテムを見れば、いずれも文房具の常識を打ち破ったものばかりだとわかります。

上原 2013年に大賞を獲ったパイロットの「フリクションボール スリム」は、まさにそういう商品ですね。消えないボールペンが当たり前だった時代から、今や消えるボールペンが普通な時代に変わりました。原稿に赤字を入れる私たち編集者にとっては、もう手放せない商品ですね。間違ってもすぐに消せるというのは、仕事の効率化にもつながっています。

木庭 2014年に大賞を受賞した針で綴じないコクヨのステープラ―「ハリナックス」や、2015年の大賞に選ばれた芯が折れないシャープペンシルをスタンダードにしたゼブラの「デルガード」も同じことがいえます。これらの商品によって、まさしく文房具のパラダイムシフトが起きたといっても過言ではないでしょう。



2013年から2018年の歴代「大賞」アイテム。いずれも文房具の歴史に名を残す逸品だ

脚光を浴びた文房具をみれば、どんな時代だったかがひも解ける

上原 2016年に大賞を獲った短い鉛筆をつなげて使う中島重久堂の「TSUNAGO」は、制作サイドの我々からしても異色の商品でした。短くなった鉛筆を捨てずに再利用するというエコ的な概念と、鉛筆同士をつなげて使うというギミックがウケたのだと思います。2017年のコクヨの「大人キャンパス」はアイデアの勝利ですね。学生に絶大な人気を誇るキャンパスノートは、低価格でとても紙質がいい。ただ、キャンパスという名前なので、大人になると使いづらいところがあった。これをビジネスシーンにも合うラインナップとシックなデザインにしたことで、社会人になっても愛用のノートを使い続けられるようになったんです。

木庭 「TSUNAGO」が出てきたあたりから、作業をするための道具だった文房具に、自分の趣向や暮らしに合うライフスタイルアクセサリーといった付加価値がつくようになった気がします。その流れで、文房具の高級化も進みました。その象徴が2018年の大賞に輝いたサクラクレパスの「SAKURA craft_lab 001」です。安いペンを何本も持つのではなく、少々高くても自分のライフスタイルに合ったお気に入りの1本を持つというニーズにピタリとハマった商品だったと思います。


2019年の大賞アイテムは、日常の文房具の常識を覆すスティックのり

木庭 そして2019年の大賞に選ばれたのは、コクヨの「GLOO スティックのり」でした。Sサイズは130円で販売されています。先ほど文房具の高級化が進んでいるという話をしましたが、130円という価格でこのハイデザインは驚きです。こののりを見せて「130円」と答える人は、恐らくいないのではないでしょうか。

上原 このスティックのりはデザイン性の高さだけではなく、今までどこも成し遂げられなかった四角い形のスティックのりを完成させたことも受賞の理由です。「えっ? 四角いのりってなかったの?」と思われた方がいるかもしれませんが、何度か他のメーカーから商品化されているんです。ただ、四角いボディに四角いキャップをかぶせていたため、中にすき間ができて気密性に欠け、定番商品として定着することはなかった。これを、「GLOO スティックのり」は、キャップを丸くすることで解決してしまった!


GLOO スティックのり〈しっかり貼る〉



GLOOスティックのり〈色が消える〉


木庭 僕たちが話していると簡単に聞こえてしまうかもしれませんが、今回、本の中で取材させていただいた、スティックのりの開発担当者の話を聞くと涙なくしては聞けません。冒頭からいきなり「気温が普通に40度を超えるインドで、ぐつぐつ煮えたぎるのりの試作を繰り返して体調を崩しました」ですから(苦笑)。

上原 デザインは、プロダクトデザイナーである佐藤オオキ氏率いるデザインオフィス「nendo」が担当されていますが、品質を保つことを優先したい開発チームと、この美しいフォルムを死守したい佐藤氏との戦いも相当すごかったそうです(笑)。


「神は細部に宿る」とはまさにこのアイテムのこと。見事「大賞」受賞!

木庭 この「GLOO スティックのり」の登場は、文房具界にまた新たな流れを生む気がしています。「ライフスタイルアクセサリー=高級化」という認識が広まっているなかで、低価格なのにライフスタイルアクセサリーとしての要素も満たした。それも事務用品の代表である「のり」というのがポイントですね。事務用品は消耗品であるがゆえに低価格で勝負をしなければいけないため、デザイン性よりも機能や使いやすさが重視されてきた世界ですから。

上原 日本の文房具は本当に奥深い。メーカーのたゆまぬ努力があってこそですが、この『文房具屋さん大賞2019』の結果を読んで気になった文房具があれば、実際に買って試してみてほしいですね。いま使っているものとの違いや、自分に合っているかなど、いろいろな角度から文房具を楽しむことができると思います。使いやすい文房具を手にすると、ルーティーンの作業もスムーズになり、仕事の効率もアップするので、ぜひ!

この連載について

発表!「文房具屋さん大賞2019」 

choudo

『文房具屋さん大賞2019』(扶桑社)は、この1年に話題を集めた新商品の中から現場のプロである文房具屋さんが最高の逸品を選ぶ賞だ。今年で7年目を迎え、『文房具屋さん大賞』をまとめた本の制作を担当するのが「choudo」という編集ユニッ...もっと読む

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PapersAndLabo 文房具を使う機会はめっきり減ったけど文房具は好きだ。2019年の文房具屋さん大賞はコクヨのGLOOスティックのり。馴染みがあるんだけど未来的で不思議なフォルムだなと思ったらnendoがデザインしたということでなるほど良いわけだ。 https://t.co/Nl5Gdfiuzi 9ヶ月前 replyretweetfavorite