自分らしい家に住む「リノベーション」のススメ

古いマンションや団地を購入し、内装をすべて変えることで自分が住みたい部屋を作る「リノベーション」。最近新しいライフスタイルを求める人たちの間で流行しているリノベーションについて、数多くの住宅を手がけた建築家・川上堅次さんにお話をうかがいました。実はcakesを運営するピースオブケイクのオフィスのリノベーションも手がけてくださった川上さん。家を作ることにどんな思いを込めているのでしょうか。
5周年を迎えた扶桑社のリノベーション雑誌『relife+』との合同企画。サンプルモニター募集もありますので最後までぜひお見逃しなく!

なぜ今リノベーションなのか

—先日は弊社オフィスのリノベーションをしていただき、ありがとうございました!

川上堅次(以下、川上) いえいえ、ご満足いただければうれしいです(笑)。

—川上さんは建築家として数々の住宅のリノベーションをされていて、コンペなどでもいくつも賞を取られていますよね。今回弊社のオフィスも手がけていただきましたが、最近よく耳にするリノベーションについて、ぜひ川上さんにお話をおうかがいしたいと思いました。実際、最近はリノベーションが流行っているんでしょうか?

川上 そうですね。値段を抑えて、自分らしいライフスタイルを実現するための手段として、リノベーションに注目が集まっていることは間違いないと思います。

—ああ、なるほど。

川上 今までは自分らしいオリジナルの家を買うというと、土地を買って、建築家にお願いするっていう注文住宅が主流だったんです。でもそれだと総額で億を越えちゃう世界になってくるから、普通の人たちにはどうしてもリアリティが持てない。かといって、新築のマンションを買うにしても、場所と値段が良くても、なかなか自分好みの間取りの部屋を見つけることは難しいですよね。

—確かに、自分が本当に納得できる家を見つけるのは難しいですよね。

川上 そういう流れの中で、リノベーションは金額的にも低く抑えることができて、自分好みの間取りにできるっていうところが、今の人たちに支持されているんじゃないでしょうか。

—そもそもの話なんですが、リノベーションはリフォームとは違うんでしょうか?

川上 日本の定義だとリフォームは部分的な改築のことを指します。それに対してリノベーションというのは、住宅が持っているポテンシャルを見直して、再生させること。たとえばリフォームだと古くなったお風呂を直すという程度なんですが、リノベーションは全体を改装するから、そもそもお風呂の位置をどこにするかみたいな根本的な話なんです。

—家全体を変えてしまうイメージですね。

川上 僕が担当した上板橋の団地のリノベーションは、居室が45平米で団地自体の値段が580万円でした。そこに800万かけてリノベーションしたんですけど、合わせても1500万で自分のライフスタイルを実現することができるんですよね。


(C)koji yamada

(C)koji yamada

—この部屋を都内で1500万で手に入れられるんですか!

川上 もう今やリノベーションは新築と同じぐらい浸透してきているんです。僕の事務所にも、新築とリノベーションどっちがいいんですか? みたいな相談が増えてきています。

典型例のない時代のリノベーション

—川上さんはいつからリノベーションをてがけていらっしゃるんですか?

川上 独立する前から、リノベーションに近いことはやっていたんですけど、本格的に始めたのは10年前ぐらいに兄の家を手がけてからですね。

—川上さんのお兄さんというと、cakesでも「R30::リローデッド」を連載されている川上慎市郎さんですね。

 兄も「家」というものについてすごく勉強していたようです。我々建築家の世界だと当たり前なんですが、家って突き詰めていくと家族論になるんですね。兄は建築についてだけでなく、家族についての本をすごく読んでいて、その要望を聞いてリノベーションしたんです。

—どんな家になったんですか?

川上 色々と特徴のある家なんですが、ひとつ例を挙げると10mくらいのテーブルを置きました。

—10mも!

川上 10mもテーブルがあると、たとえそれぞれがバラバラなことをしていても、強制的に家族が同じテーブルの上にいるっていう状況が生まれるんですよね。

—なるほど、そういう意図があるんですね。いつもリノベーションを手がけるときは、施主からどれくらいお話を聞くんでしょうか?

川上 できる限りですね。だから変わった人だとそういう変わった家になる(笑)。僕たちは最初に、意見を聞ける人全員から、例えば夫婦だったら両方からヒアリングシートを取るんです。ただしルールがあって、書き終わるまでお互いに見せ合わない。それと、書けない部分は無理に書いてもらわなくてもいいと思っています。

—家族の意見を合わせてもらうのではなく、ばらばらに意見を聞くんですか。

川上 やっぱり家は家族みんなの場所があったほうがいいと思っているからなんです。たとえば顔を合わせた打ち合わせでも、奥さんが実権を握っていると、ご主人の意見をうまく聞き出すことができない。だから1枚のヒアリングシートだけでは誰かの意見が尊重されないことがある。別々に意見を聞くことで、みんなにとって居心地の良い家にしたいんです。

—確かに意見を言えない人もいますよね。それと無理に書かなくていいというのは?

川上 僕は書かないことも、一つの意思表示だと思っているんです。ご主人なんかだと、キッチンの欄が空欄になっている人も少なくないんですが、それも「あ、この人はキッチンに立たない人なんだな」って、その人となりがわかる。

—なるほど。表に出にくい意見を聞こうと思ったら、別々にするのがベストだったということですね。

川上 というよりも、大学のときに今の時代ってもう家族の典型例ってないなって思ったんです。今はかつてのようにご主人が働いて奥さんが専業主婦という家族の方が少ないですよね。共働きだったり、実はご主人が主夫されていたり、他にも多種多様な家族があって、言ってみればレアケースの方が多い世界。そこで行き着いたのが、しょせん家族だって他人でしょ、ってことなんです。僕だって自分の父と二人きりで同じ空間に放り込まれたら嫌ですから。

—ああ、確かに(笑)。そういう意味では他人ですね。

川上 究極的には、全く見ず知らずの他人がある空間の中で共存するために、どういう形態の空間が良いのかってことを考えています。そんな前提の上で、みんながハッピーに過ごせるよう、ヒアリングシートを別々に取るっていうプロセスを踏むわけです。

住宅から東京を変える

—そうやってお客様の欲しいものを引き出していくわけですね。それにしても、川上さんが手がけられた家は、個性が際立っているものが多いですよね。

川上 いや、建築家ってアーティスティックに捉えられることが多いですが、僕は自分が手がけた家を自分の作品と考えたことはなくて、全てお客様の作品だと思っています。お客様の要望を最大限取り入れると、そういう家になるだけなんです。僕が自分一人で家を作れるかというと、作れない。お客様が僕の想像もしない要望を言ってくれるから、僕の想像を越える家を作れているんです。




クライミングが趣味のお客様のために川上さんが手がけた家。
3階建ての吹き抜けで、壁がクライミングウォールになっている。

—まさにお客様と一緒に家を作っていくイメージですね。

川上 それと住宅設計の面白いところは、ひたすらいろんな家族の疑似体験ができて、いろんな解決策を考えることができるところなんです。時には理解できないような要望もあるけど、それも含めていろんな人になれる。

—家族全員になりきるんですか?

川上 子どもにも、ペットにもなりきります。

—ペットにも!?

川上 僕が担当させていただいたお客様で、猫を飼っている方がいたんですよ。それで僕が猫だったらテンション上がるものってなんだろうって考えて、天井を高くしてキャットウォークを作ったんです。




猫好きのお客様のために作ったキャットウォークのある家。
一番上の写真、真ん中の棚が通路になっていて、猫が登れるようになっている。

—たしかにこれは猫にとってもうれしい家ですね(笑)。

川上 ええ(笑)。そうやってお客様の要望を形にするのが僕の仕事だと思っているんですが、究極的には僕たちみたいな職種の人がいなくなっても良いと思っているんです。

—え、どういうことですか?

川上 そうですね、たとえば、一般的には工事費を抑えるために家族が自分でペンキを塗ったりするんです。うちが手がけた家でもそういうことをやるんですが、全く違う意図があって勧めています。今までは自分の家の壁の向こう側が何でできているかすらわからなかった。だから釘を打っていいかもわかんないし、クロスも張り替えられない。体験することでそれが少しでもわかってもらえればいいと思って、参加してもらうことにしています。

—一世一代の買い物なのに、家のことが意外とわからないんですね。

川上 そうすると、ペンキ塗るのってこんな簡単なんだって思ってもらえるでしょう。もしうまく塗れなくても、自分が塗った壁なら愛せると思うんですね。子どもが汚しても、上から塗ればいいやって思える。自分の家を自分で作ることほど正しいことはないと思っていますから。

—なるほど、建築家がいなくても自分たちで作れるようになってほしいということなんですね。

川上 僕たちはデザインを売っているとは考えてなくて、家作りのサービスを売っていると思ってるんです。リノベーションは最初の一歩にすぎなくて、そこからお客様自身がどんどん改造していけるようになることが理想ですね。

—面白いですねえ。川上さんはこれからもリノベーションを中心にやっていかれるんですか?

川上 そうなると思います。僕は神戸生まれなんですが、東京に出てきて仕事をしている意味を考えるんですね。

—東京で仕事する意味、ですか?

川上 僕は山の上の方で育ったので、やっぱり初めは東京という都会に馴染めなかった。でも、そういう子供の頃に学校帰りに川で遊んだこととか、山の向こうに日が沈んだときのちょっと寂しい雰囲気とか、木々を揺らす風が肌に当たる感じとか、そういう原風景を自分が手がけた家に再現することができたら、僕が東京で仕事をしている意味があると思ったんです。

—川上さんの手がけた住宅はひとつひとつ違う個性がありますが、そういう共通性があるんですね。

川上 もちろん表に出るようなものではなく、マンションの一部屋をリノベーションするだけでも、風の抜けをちゃんと作ってあげるとか、窓からの風景を切り取るような操作をするとか。僕と同じように東京に馴染めなかったような人でも、意外と東京気持ちいいなあと思ってもらえるような家にしたいんです。

—ああ、そんな家に住みたいです。

川上 偉大な建築家たちが東京を変える、日本を変えるといって、東京中に巨大な建物を建ててきました。でもなにも変わらなかったんじゃないかと思うんです。だからこそ、僕たちのような建築家が、草の根運動でひとつひとつの家を変えることで東京を変えていけると思っているんです。

—じゃあ壁の塗替えをやってもらっているのも、その一環なんですね。

川上 まさにその通りです。住宅ってこんな楽しいものなんだよ、っていうのを知ってもらいたいんです。自分の家は自分で作れば住宅がもっと楽しくなるし、住宅が楽しくなれば生活が楽しくなりますよね。そうやって意識が変わっていけば次に建つ建築も変わっていくだろうし、東京という街がもっともっと楽しく変わっていけばいいなと思っています。

 

cakesとリノベーション雑誌『relife+』の合同企画!


relief+ vol.12 (扶桑社)

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「WOODMAN」のダイニングセットとリビングボード。
ぬくもりあるオークの質感とヨーロッパの洗練されたデザインが魅力。
テーブルは伸長式なのでゲストが多い時などに重宝する。

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モデルルーム来場者全員にディノスで使える2000円割引クーポン(税込1万円以上のお買い物で使えます)をプレゼント。最新カタログもお持ち帰りいただけます。また、マンション入居予定者には5%割引クーポン(3回まで利用可)の特典も。クーポンの有効期限などについてはモデルルームに設置されたチラシで。

 

『relife+』創刊5周年企画
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ケイクス

この連載について

建築家・川上堅次さんインタビュー

cakes編集部

古いマンションや団地を購入し、内装をすべて変えることで自分が住みたい部屋を作る「リノベーション」。最近新しいライフスタイルを求める人たちの間で流行しているリノベーションについて、数多くの住宅を手がけた建築家・川上堅次さんにお話をうかが...もっと読む

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コメント

kanekoarchi 確かにその通りだと思います。「そこで行き着いたのが、しょせん家族だって他人でしょ、ってことなんです。」https://t.co/yx5gC6czZP 約3年前 replyretweetfavorite

tfgt1 https://t.co/IdKAN5GdU8 3年以上前 replyretweetfavorite

sonicdaw ボルダリングできる家はすごい 3年以上前 replyretweetfavorite

iwyouu この許せる感じ! "もしうまく塗れなくても、自分が塗った壁なら愛せると思うんですね。子どもが汚しても、上から塗ればいいやって思える。" 3年以上前 replyretweetfavorite