不登校、ひきこもりのきっかけになりやすい
起立性調節障害は、最近になってよく知られるようになった疾患です。
以前から思春期にこうした症状が出る人はいましたが、それは〝なまけグセ〟のように思われがちでした。
それは、起立性調節障害の特徴として、「午前中はものすごく調子が悪いけれども、午後になると回復してくる」ことがあるからです。
朝、体調が悪くて学校を休むことになっても、午後には元気になります。それで、ゲームをしたり、好きなテレビ番組を見てゲラゲラ笑ったりできるのです。
ところが、次の日の朝になると、また調子が悪くて起きられない。
そのため、家族から「仮病じゃないの?」「学校をサボりたいだけでしょ」なんて言われてしまいます。
本当に「具合がよくなったから、明日は行こう」と思っているのです。ところが、前の夜にはすっかりよくなっていたはずの体調が、朝になるとまた絶不調になって、「行こうと思っているのに行けない」という状態になります。自分でも、どうしてなのかわからない。
学校に行くことを「かったるい」と感じるのはよくあることですが、「不登校になりたい」なんて思っている人はいません。だれも、なりたくて不登校になるわけではないのです。
行けなくなっていることにいちばん不安や焦りを感じているのは、当の本人です。でも、行けないのです。
どうしたらいいかわからなくて困っているところに、さらに親がうるさいことをいろいろ言ってくる。
ムカッとしてやり合ってしまう。なにしろ思春期の脳は、ブレーキが利きにくいですから、感情が爆発しやすい。
家族関係が険悪になってしまいます。それだって、望んでいることではありません。
自分の気持ちと裏腹な反応をする身体にイライラし、不安が募っているのです。
かつては、病院に行っても、「検査では問題は見当たらない」「思春期の生理的変化のなかで起きることで、そのうちに治る」「精神的なもの」などと言われて、あまり真剣にとらえられていませんでした。「自律神経失調症ですね」とか「心身症の一種です」と言われていたのです。
ところが、不登校になる人が増加している近年、起立性調節障害に見られる症状の悪化が、不登校、さらにひきこもりへとつながりやすいということが知られるようになり、これは早期改善をすべき「疾患」だ、と考えられるようになってきたのです。
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