謝られたのにモヤモヤする……カレシの謝罪が腑に落ちない!
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
清田 桃山商事の恋バナ連載、今月は「恋愛と謝罪」について語っていきます。
ワッコ やや重めのテーマですよね。
森田 確かに。謝るということは、その前に何かトラブルやケンカが起こってるわけだしね。
清田 たとえば「謝られたのになぜかモヤモヤが残った」とか、「何かあるとすぐ謝るカレシにイラっとする」とか、そういう話が出てくるのかなと。
ワッコ そういえば、女友達から「絶対に謝らない夫」の話を最近聞きましたね。
清田 謎に謝らない男ってたまにいるもんね……。そんなわけで、ここから謝罪にまつわるいろいろな恋バナを紹介していきたいと思います。
森田 まずは「カレシに謝られたのになぜかモヤモヤが残った」というエピソードから紹介します。これは俺の女友達の話で、彼女の誕生日の夜に起きた出来事です。
ワッコ 一年の中でいちばん謝られたくない日ですね。
森田 だよねえ……。その日は平日だったから、カレと仕事の後にゴハンへ行く約束をして、お店で待ち合わせしたそうです。そしたらカレが1時間以上遅刻してきた。
清田 お店でひとりぼっちかあ。想像しただけで切なくなる。
森田 遅れてきたカレは、開口一番「会議が長引いちゃってどうしても抜けられなくて!」と言い、それから「ほんとうにごめん」と謝ってきた。その後、会議がいかに大変だったかを、話の長い上司への愚痴も交えてとうとうと説明してきたんだって。
ワッコ はあ。
森田 彼女はカレのその説明を聞きながら、待たされてるときより悲しい気持ちになったそうです。仕事の事情もわかっているから怒りの感情はそれほどなかったみたいなんだけど、説明をされればされるほどみじめな気分に落ちていったみたい。
清田 怒りより悲しみだったんだね。
森田 その場ではカレに「仕方ないから大丈夫だよ」と言ったけど、自分のなかでは納得できなくて、その後ずっとモヤモヤしてしまったとのことでした。
ワッコ すごいわかります。
清田 カレは「ほんとうにごめん」と謝罪もしているんだけどね……。
森田 うん。でも彼女の気持ちはまったくおさまってないから、謝罪としては失敗だよね。
清田 どこが失敗だったんだろうか。ワッコはどう思う?
ワッコ カレの話のなかで、「ごめん」の比率が少なすぎたのかなって思いますね。言い訳の尺のほうが圧倒的に長かったのが問題なのではないかと。あと、そもそも最初に「ごめん」をもってきてほしいですよね。
清田 確かに。「ごめん」をメインにしてほしいよね。バランスを間違えてる感じはする。ただ、想像するにカレもきつかったんじゃないかと思うんだよね。おそらく会議の間も「ぐだぐだ話しやがって……」みたいにイライラしていて、終わったらマックス早く到着するよう急いだんだろうから。
ワッコ そのつらさも、わかるっちゃわかる。
清田 悪意があったわけじゃないからね。本当のところ、誰が悪かったかはわからない。そのなかでカレの謝罪がなぜ失敗してしまったのかを考えるのは、なかなか奥深いのではないかなと。
そもそも謝罪とは?−−−モヤモヤの正体に迫る
森田 より整理して考えるために、今日は一冊の本を紹介したいと思います。『失敗しない謝り方』(CCCメディアハウス刊)という、社会心理学者の大渕憲一さんが書かれた本です。謝罪という行為の意味や効果についてわかりやすく解説されている、すごく役に立つ本。
清田 名著!だよね。
森田 まずはこの本に出てくる次の表を見てもらいたいなと。この本によると、人が何かトラブルを起こしたときに行う説明のことを「釈明」といって、釈明は表にあるように4つのタイプに分けられるのだそうです。謝罪も、その中の1タイプになります。
清田 謝罪って、実はこういう判断のフローに沿ってする行為なんだね。もちろん謝るときにそんなことを考えてる人はほとんどいないと思うけど……。
森田 表にある「負事象」というのは、失敗や規則違反、他者への危害などのトラブルのことです。さっきの例でいうと、「誕生日のディナーに遅れてきたこと」が負事象になる。
清田 そこでいきなり「俺は遅れてない!」と主張するのが、表の右下にある否認だよね。