表現とセクシュアリティーズ

GMPD=ガチ・ムチ・ぽちゃ・デブが王道モテの、めくるめく世界

華奢な美人に細マッチョ……悲しいかな、男女の恋愛において「王道モテ」は存在します。そして、ゲイの世界においても然り。しかしながら、それはヘテロの基準とはまったく違って、ヒゲ・短髪・マッチョに「GMPD」!?
田亀源五郎さんと溝口彰子さんの対談、第5回となる今回は、「ノーパンスウェットナイト」などゲイイベントの知られざる世界をのぞき見しつつ、ドラァグ・クイーンのお仕事についてエスムラルダさんに教わりながら、BLとゲイ・エロティック・アートにおける美の基準について議論します。

GMPDって知ってる?

エスムラルダ(以下、エスム) ケースバイケースではありますが、「ゲイが好きな男のタイプ」について語られる際、“ヒゲ・短髪・マッチョ”の3つが、不可欠な要素とされることは多いですよね。それらはすべて男性性を象徴するものです。

溝口彰子(以下、溝口) 筋肉も、“すごくマッチョ”よりも、ちょっと脂肪があるくらいの体型のほうが人気じゃないですか?

エスム そこはまた細分化されていて(笑)。

田亀源五郎(以下、田亀) ガチムチという言葉の誤用が世界で広まってしまって、そのたびに指摘しているんですが(笑)、世の中、筋肉があればみんなガチムチみたいに言われていますけど、そうじゃなくて、ガチムチというのは“ガッチリしててムッチリしてる”ということで、筋肉プラス脂肪がないといけないんです。だから、ガチムチが好きな人と、体脂肪0のアスリートみたいなのが好きな人は、同じ筋肉好きでも違いますよね。


左から、溝口彰子さん、田亀源五郎さん、エスムラルダさん。

溝口 どっちがマジョリティとかあるんですか?

エスム ……ここだけの話ですけど、最近「GMPD」という言葉がありまして。

田亀 ああ、「ガチ(G)ムチ(M)ぽちゃ(P)デブ(D)」だっけ?

エスム はい(笑)。ゲイの世界では、「大柄な人」が、その4つにさらに分類されているんです。で、なんとなくですが、脂肪のないガッチリタイプよりも、脂肪の多めなムチ・ぽちゃ・デブを好む人の方が多い気がします。

田亀 でもね、最近筋肉のトレーニング方法も発達してきていて、筋肉自体を太くするというのも可能になってきているんですよね。いわゆる“筋肉デブ”ですね。まあデブではないんだけど(笑)。そういうのが今一番マジョリティじゃないかなあ。「Badi」(※1)でよく載っているようなブリーフの広告とか宣伝グラビアや、ゴーゴーさんを見ていても、ガチムチというよりはただのマッチョですよね。そういう体型のゴーゴーさんが一番多いのを見ると、人気も一番目にくるのではと。
※1「Badi」:2019年1月発売の3月号をもって休刊したゲイ雑誌。

エスム ゴーゴーさんというのは、クラブイベントなどで、露出の多い格好で踊り、会場を盛り上げる男性たちのことです(笑)。

死ぬまでに一度は行きたい、ノーパンスウェットナイト

エスム ドラァグ・クイーンとゴーゴーボーイって、クラブイベントではだいたいセットでキャスティングされることが多いんですが、これもいろんな変遷があって。もう、本当にどうでもいい豆知識なんだけど(笑)、『プリシラ』(※2)が上映されてからしばらく経った2000年前後には、ドラァグ・クイーンがクラブイベントでフィーチャーされることが多かったんです。ところが、最近はゲイのクラブイベントでも、音楽系のイベントよりエロ系のイベントが人気を博すようになっていて、そこでは、ドラァグ・クイーンはキャスティングされないことが多いんです。
※2『プリシラ』:1994年公開のオーストラリア映画。3人のドラァグ・クイーンが遠方のホテルでのショーに出演するためにバス「プリシラ号」で旅をする途中、さまざまなトラブルや出会いを経験するロードムービー。ステファン・エリオット監督作品で、テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアースが出演。ドラァグ・クイーンの存在を世界的に知らしめた映画である。

田亀 ノーパンスウェットナイト(二丁目で開催されている男性限定のイベントで、ドレスコードは“下着を履かずにスウェット着用”)とかね。

エスム そうです(笑)。出会いを求める人が行くような、ちょっといやらしい系のイベントですね。

溝口 それは、先程のゲイ雑誌の話と同じで、女性性を一切排除したいということですか?

田亀 男性ファンタジーを満喫する空間ということですよね。

エスム はい、おそらく、女性性をまとっているものを極力混ぜ込まないようにしているのではないかな、と。出会いを求めて来る人のなかには、あまりドラァグ・クイーン的なものが好きじゃないという人も一定数いたりするので。まあ、時々は司会として呼ばれたりすることもあるんですが。それから、男女の出会いの場であるハプニング・バーに、時々ドラァグ・クイーンが呼ばれ、ショーや、イベントの司会をすることもあります。

溝口 それは、ドラァグのショーは楽しい見世物だし、場の空気をあたためる、みたいな役割なんですか?

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表現とセクシュアリティーズ

エスムラルダ /田亀源五郎 /溝口彰子

『BL進化論』シリーズの著者でレズビアンの溝口彰子さんが「いつか絶対、きちんとお話ししたい」と願っていたのは、ゲイ・エロティック・アーティストの田亀源五郎さん。田亀さんは、青年誌で連載されたマンガ『弟の夫』が大反響を呼び、数々の賞を受...もっと読む

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gaku_cscvroff 「表現とセクシュアリティーズ」の連載記事、第4回から6回も公開されております。 https://t.co/NwewSFgx1s https://t.co/QfR1PkBtmB https://t.co/QrCNgU3EPt 2ヶ月前 replyretweetfavorite

yopec もう第5回。しつこくシェアし続けます!今回はまた貴重な話題。 3ヶ月前 replyretweetfavorite