​ペンと箸の持ち方から人間関係がはじまる

包帯パンツの生みの親・野木志郎が、多くの失敗を経験しながらも、細いつながりを手繰りに手繰り寄せ、世界のセレブを魅了するまでにブランドを育て上げたビジネスのしかけを紹介していく『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)』。今回は人間関係を構築する第一歩目で印象をよくするしかけを紹介!「ほんの些細なことが、人の印象をメチャメチャ左右するんです。ほんまに!」 by野木志郎

「いてもいなくてもいい社員」

私が人生で一番尊敬する師は、まだ包帯パンツを作るずっと前、大阪に本社のある通販会社・千趣会勤務時代の職場の上司である西守進(にしもりすすむ)さんです。
私は西守さんのおかげでまっとうな人格形成ができましたし、西守さんから人間関係のイロハをすべて学びました。

そもそも私は、千趣会に「いてもいなくてもいい人間」として中途入社しました。
これは入社後に聞いた話ですが、本当は私ではない別の人を中途でひとりしか採用しないはずだったそうです。
ところが、私が最終面接で社長とちょっとした言い合いで喧嘩してしまった(笑)ことから、社長の「俺に喧嘩売る根性ある奴ははじめてやから、とりあえずどっか放り込んどけ」の一声で、私も採用となってしまったらしいのです。

採用されたもうひとりの人は千趣会でも花形のカタログ事業部に配属されましたが、私は頒布会事業部という部署に、文字通り〝放り込まれ〞ました。

ここは、こけしの頒布事業からはじまった千趣会の伝統ある事業部で、全国から経験豊富な猛者が集まっている仕入のプロ集団。素人がすぐできるような仕事は何ひとつない。しかも予定のない採用ですから、当然私に仕事なんて用意されていません。

毎日出社してやることと言えば、課長から「君、これ読んで覚えときなさい」と渡された分厚い「商品大事典」をひたすら読むことくらい。

千趣会は扱う商品カテゴリがとにかく多いので、アホみたいに分厚い本。退屈ですぐ眠くなるし、たった5分経つのが本当に長い。一日の半分をうたた寝しているような日々でした。

それを見るに見かねて手を差し伸べてくれたのが、同じ部署の上司・西守さんだったのです。
西守さんはもともと世界文化社が発行する「家庭画報」という雑誌の編集者で、以前は千趣会の東京オフィスで出版を担当する部署にいた方ですが、組合活動を激しくやりすぎて大阪に転勤してきたというツワモノ。
その西守さんが課長に「野木にこんなことさせてたら生殺しだ。俺が育てる」と言ってくれたのでした。

またこの人と食事したい!」と思ってもらうには

西守さんが最初に教えてくれたのは、なんとペンの持ち方でした。ペンの持ち方って……、小学生ちゃうで……ほんまに。

私はそれまで、ペンを握り込むような形で握っていたのですが、西守さんは「そんな持ち方では相手を不快にさせるし、商談中そっちに目が行ってしまう。この人、親にきちんと育てられてないなと思われるから、かっこ悪いだろう。正しい持ち方にしなさい」と私に言いました。

商品知識をつけるとか、交渉術を学ぶとか、企画力をつけるとか、そんなこと以前の話。ほんまに小学1年生並みです。しかし、そういう小さな小さな違和感で、人は相手に心を許さなかったり、距離を置いたり、もう一歩のところで懐に入ってきてくれなかったりするもの。西守さんはそれを知っていたのです。

さらに西守さんは、私の箸の持ち方にもダメ出ししてきました。理由はペンと同じで、商談相手との会食中、相手に少しでも嫌な思いをさせないことと、きちんと最低限の教育を受けているという印象を相手に持たせるため。

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日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由

野木志郎

東京は渋谷で小さな下着メーカーを経営する野木志郎は、「ムレない、ベタつかない、しめつけない」という独特の穿き心地で、世界のセレブを魅了する「包帯パンツ」の生みの親。いまでこそ年間10万枚も売り上げる「包帯パンツ」だが、発売当初は商品力...もっと読む

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asapublishing 「#cakes」様で『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)/#野木志郎 著』の連載2回目が掲載されました。理由とは? https://t.co/hbdIoQV7Ll #包帯パンツ #マナー 1年以上前 replyretweetfavorite