人の恋バナに過剰に反応してしまう

10年間、山小屋で働いていた小屋ガールの吉玉サキさん。本連載で山小屋の恋愛事情は何度か紹介されていますが、実は吉玉さん、人の恋バナを聞かされるのにはめっぽう弱いそう。今回はそんな吉玉さんが身悶えしてしまった山小屋スタッフ間の恋愛エピソードをご紹介します。

今日はバレンタインだから恋愛の話を書こうと思うのだけど、私は恋バナが苦手だ。

今まで何度か恋愛の話を書いてきたし、他媒体では恋愛コラムの連載までさせてもらった。それなのに今さら何を言うか、という感じだけど、私は身近な人に恋バナを聞かされると「やめてくれ~!」と思う。

決して恋バナが嫌いなわけではなく、むしろ好物なんだけど、どうにも照れてしまう。いい年して過剰に照れていることを周囲に悟られたくない。

私と同じタイプの人にとって、今日は地獄じゃないだろうか。


スタッフの恋バナに動悸と呼吸困難

中学生の頃の私がそうだったのだけど、「恋をすると誰かに言いたくなる人」というのは一定数いる。

大人も例外ではない。山小屋時代、私は何度もほかのスタッフから「○○のこと好きになった」という報告を受けた。

そのたびに、私は「へぇ、そうなんだ」と平静を装う。

しかし、内心では息が苦しいほどキュンキュンしてしまう。動悸と呼吸困難が起こり、顔が赤くなる。我ながら、感受性がバグっているとしか思えない。

だから、あまりにも甘酸っぱい片思いの話を聞かされると身が持たない。

好きな人を打ち明けてもらえるのは、友人として信頼されているようで嬉しいのだけど、同時に「もうやめてー! それ以上言わないでー!!」と叫びたくなるのだ。

また、私は恋バナに過剰反応するわりに鈍感で、ほかの人に「○○って絶対××のこと好きだよね」などと指摘されてはじめて気づくことが多い。

そのたびに、「知ってたらあのとき席をはずしたのに」「どうしよう、空気読めないやつだと思われたかな」などと恥ずかしくなる。

みんな、好きな人ができたらちゃんと表明してくれよ……!

言ってほしかったり、言ってほしくなかったり。我ながら矛盾してるな、と思う。


クールなスタッフの恋がみんなにバレバレな理由

「ジェダイはレイちゃんが好きだと思いますよ」

あるとき、後輩のあっくんが言った。

あっくん・ジェダイ・レイちゃんは、その年の新人スタッフ。当時の私は夫とふたりで小さな山小屋を任されていて、近くにある大きな山小屋からスタッフが交代で手伝いに来ていた。

手伝いに来るたびゴシップを提供してくれるスタッフは多い。あっくんもそのひとりだ。彼は無口なわりに意外と恋バナ好きで、私の頼れる情報提供者だった。

「ジェダイってレイちゃんが好きなんだ」

初耳だった。言い訳するようだけど、私はふだん違う山小屋にいるから、ジェダイとレイちゃんがふたりでいるところを見たことがなかったのだ。

「バレバレですよ。夜、食堂にレイちゃんがいないとキョロキョロしてますもん」

「へぇ……あのジェダイがねぇ」

ジェダイはいつでも冷静沈着なしっかり者だ。みんなに「たまには失敗しろよ~」と言われるくらい、仕事もよくできる。感情の読めないポーカーフェイスだけど、コミュニケーション能力は充分で、同期をイジって笑いを取ることも多い(ちなみに、あだ名の由来はジェダイの騎士っぽいから)。

そんな彼が恋心バレバレだなんて。まったく想像がつかない。

「この前の休暇のとき、ジェダイとレイちゃんをファミレスに置き去りにしたんですよ」

あっくんはニヤニヤしながら話す。

たまたま休暇がかぶったあっくん・ねーさん・ジェダイ・レイちゃんは4人でファミレスに行った。食事が終わったあと、あっくんはねーさんのアイコンタクトに気づき、ふたりで先に帰ったという。

あっくんが「やっぱり、ジェダイってレイちゃん好きですよね」と言うと、ねーさんは「当たり前やろ、見てればわかるわ。空気読まな」と言ったそうだ。

その話を聞いて、背筋がゾクッとした。

もしその場にいたのが私だったら、ねーさんのアイコンタクトに気づけなかったかも……。

心底、その場にいなくて良かったと思った。


ジェダイのカミングアウトに恥ずかしすぎて爆死

その話を聞いて少し経ったある日、あっくんとジェダイが手伝いに来た。

秋の平日で、午後になるとお客様がグッと少なくなる。昼食後、ふたりには休憩に入ってもらった。あっくんは昼寝するため2階に行ってしまい、ジェダイとふたりになる。

私は注文書を作成しながら、ジェダイと雑談していた。すると、最近付き合いはじめたあるカップルの話題になった。

「今年、本当にカップル多いよねぇ」

私が言うと、ジェダイは「何組か知ってますか?」と尋ねる。

「えーと……4組かな」

恋愛に関する話題でも、この程度なら別に恥ずかしくない。

「もう1組いますよ」

「えっ、そうなの?」

「自分、なんですけど……」

唐突なカミングアウトにぎょっとするものの、平静を装って「良かったね、うまくいったんだ」と言う。

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小屋ガール通信

吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

etozudeyoshida 📷 https://t.co/zVvmzS7mEF https://t.co/R3oKR4XhEz 5ヶ月前 replyretweetfavorite

restart20141201 人付き合いが苦手で、疲れて…と始まったはずなのに、べったり「人付き合い」… フォロー解除。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

alchmistonpuku 照れ臭い時代がわたしにもありました(が、一瞬で通り過ぎたらしい、今は遠い日の花火みたいなものになってしまった) 5ヶ月前 replyretweetfavorite